年 (平成年)

7月歌舞伎鑑賞教室 国立劇場大劇場

7月3日(火)〜7月24日(火)

配役
11:00開演(13:05終演予定)/14:30開演(16:35終演予定)
※18日(水)、20日(金)は14:30開演のみ
「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」は、18日(水)・20日(金)の19:00開演(21:05終演予定)

解説 歌舞伎のみかた
三代目 澤村宗之助

歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
小野春道館の場

監修:市川團十郎

粂寺弾正:六代目 片岡愛之助
小野春道:八代目 大谷友右衛門
秦秀太郎:十一代目 市川高麗蔵
八剣玄蕃:三代目 松本錦吾
八剣数馬:三代目 大谷廣太郎
錦の前:二代目 大谷廣松
小野春風:三代目 澤村宗之助
小原万兵衛:六代目 片岡市蔵
秦民部:五代目 坂東秀調
腰元巻絹:二代目 片岡秀太郎

筋書
愛之助丈関連
表紙:扮装写真(カラー)
6ページ:出演者インタビュー(1/4ページ、素顔写真あり、モノクロ)
料金
学生(全席):1,300円
一般 1等席:3,800円
一般 2等席:1,500円
筋書:無料
イベント
よみうりカルチャー 観劇入門講座
7月 国立劇場・歌舞伎鑑賞教室公演
演目:解説「歌舞伎のみかた」、歌舞伎十八番の内「毛抜」
日時:7月5日(木) 開演11:00
講師:歌舞伎俳優 片岡愛之助
受講料:一般4,500円、会員4,000円(1等席代含む)
会場:国立劇場(東京・三宅坂)
その頃、他の劇場では…
新橋演舞場
松竹座

雑誌
『演劇界』2012年9月号→演劇界 2012年 09月号 [雑誌]
愛之助丈関連
46ページ:舞台写真「毛抜」粂寺弾正(カラーグラビア)
74〜75ページ:舞台写真「毛抜」粂寺弾正(モノクロ 6枚)
95ページ:7月歌舞伎鑑賞教室の劇評
117ページ:八月花形歌舞伎の紹介
120ページ下段:「伝統芸能の今2012」の紹介(1/4ページ)

感想
20日に後方中央より観劇。
後ろから数えた方が早いような列だったが、とても見やすかった。さすがは国立劇場。
筋書と上演台本をもらえるのが嬉しい。
アンケートに答えて、ウエットティッシュももらった。

解説 歌舞伎のみかた
附け打ちの音と共に、宗之助丈が花道から登場し、見得をする。辛子色を薄くしたような紋付と、深緑の袴を着用。
定式幕や花道、上手下手、大向こう、見得、黒御簾など、一通り説明をしていると、国立劇場のマスコットキャラクター・くろごちゃんが登場。
裃後見の愛一郎丈も登場し、差し金についた蝶々をぱたぱたと動かしてみせる。
くろごちゃんに差し金を渡すが、くろごちゃんは「見習いだから上手く出来ない」と言う。
「くろごちゃん! お稽古しよう!」と愛一郎丈がくろごちゃんの手を引いて、2人は上手側より退場。

宗之助が客席に「今日、初めて歌舞伎をご覧になる方」と質問すると、ちらほらと手が挙がっていた。
そこで、「初めての方もそうでない方も、普段あまり見られない」女形さんの化粧を見せてもらえるということで、りき彌丈が登場。濃い色の浴衣で、首までは白粉が塗られており、顔はノーメーク。
りき彌丈が化粧をする様子がカメラでスクリーンに大きく映し出され、客席は「ほーう」と見守る。
びん付け油、白粉、目張り、眉毛、口紅…と だんだんと女形の顔になっていく。
あれだけおしとやかな女形さんでも、口紅を塗るときの顔はやはりあまり綺麗に見えない。あれを見たら、電車の中で化粧する気はなくなるはずだ。
衣装の着付け方も見ることができて、非常に貴重だった。帯はセパレート式なのね。

衣装をつけて、スイッチが入ったりき彌丈、もとい、腰元若菜が御家の騒動について語り出す。
やがて、宗之助丈の手を引いて、2人で上手側から退場。宗之助丈は小野春風役で出演するので、こしらえをしないと舞台に間に合わないんだな。
その後、スクリーンで、物語のあらすじ紹介と宗之助丈のご挨拶。
途中からスクリーン映像のみになったのは味気なかったけど、女形さんの生化粧が見られたから、まあいいか。

毛抜
幕が開くと、上手側に「歌舞伎十八番 毛抜」、下手側に「片岡愛之助 相勤め申し候」の看板が掛かっていて、愛之助丈ファンとしては「おぉーっ!」と思った。
舞台では、秦秀太郎(高麗蔵丈)と八剣数馬(廣太郎丈)がちゃんちゃんばらばらやっており、若菜(りき彌丈)が止めに入る。
秀太郎は前髪の若衆姿、数馬は赤っ面。
数馬、ちょっと声が苦しそう。演じる廣太郎丈が平成四年生まれと知って、愕然。若い役者さんが次々出てくるなぁ。
そこへ秦民部(秀調丈)と八剣玄蕃(錦吾丈)がやってくる。玄蕃と数馬は御家の重宝を紛失した責任を取って腹を切れ」と民部に迫る。
舘の主・小野春道(友右衛門丈)と小野春風(宗之助丈)が現れて、騒ぎを鎮める。

ここで、ようやく今回の主役、文屋豊秀の家来・粂寺弾正(愛之助丈)が使者として花道からやってくる。
衣装はとても立派で、重たそう。(実際に重くて辛いらしい。)
團十郎丈に習ったそうで、台詞を話しているときに、「あ、團十郎丈っぽい」と思う場面がしばしばあった。
文屋豊秀の婚約者・錦の前(廣松丈)が病気を理由になかなかお輿入れをしないため、弾正が使いにきたという。
錦の前は髪の毛が逆立つ奇病で、頭にかぶせている薄衣を外すと、ドロドロドロ…という音と共に髪の毛が逆立つ。
錦の前もちょっと声が苦しそう。演じる廣松丈は平成五年生まれだった…

弾正が部屋で待っていると、秀太郎が煙草盆を持ってやってくる。弾正の表情がハッと変わる。この時の顔がとてもいやらしい(笑)。
早速、馬の稽古をつけてあげる、とセクハラ開始。
しかし、怒った秀太郎に逃げられ、弾正は「面目次第もございません」と客席に向かって頭を下げる。
秀太郎が去った後、毛抜を使って髭を抜き始める。この毛抜、わかりやすく大きくなっている。
毛抜を床に置くと、かたかたと踊り始める。(この時、毛抜は上記よりもさらに大きくなっている。)

今度は巻絹(秀太郎丈)がお茶を持ってやってくる。
筋書の秀太郎丈のコメントによると、この役は色気があって、いやらしい役だそうだ。そのせいか、背中まで見えるくらい豪快な衣紋の抜きっぷり。(若菜の倍くらい抜いてないか…?)
歌舞伎で登場人物の語尾が「です」(←「でえす」と発音)だと、なぜか妙な感じがする。
巻絹は弾正にセクハラされるも、それをかわして「ビビビビビー!」と言って去っていく。登場時間は短いけど、強烈な印象。
ここでまた、弾正が「面目次第もございません」と客席に向かって頭を下げる。
ただのエロ親父かと思いきや、煙管(銀色のすごく立派な物)は踊らず、毛抜と小柄が踊ることに気付き、何やら考え込んでいる。

小原万兵衛(市蔵丈)と名乗るガラの悪い男が屋敷へやってきて、妹の小磯を返せとわめき始める。
腰元奉公した小磯は春風の子を身ごもって、お産で死んでしまったらしい。
民部が万兵衛にお金を渡して解決しようとすると、玄蕃が扇子でトントンと合図をするので、万兵衛と玄蕃はグルなのだと分かる。 後ろ向きでじっと様子を聞いていた弾正は、何やら手紙を書き始める。
それは閻魔大王への手紙で、万兵衛に「俺と閻魔大王は兄弟同然、地獄へこの手紙を持って行け」という。

そそくさと帰ろうとする万兵衛を弾正が手裏剣で倒す。弾正は万兵衛がニセモノだと知っており、その懐から小野家の重宝の短冊を取り出し、御家の問題が1つ解決する。
さらに、弾正は錦の前の髪飾りが鉄製であることを見抜き、髪飾りを外すと、髪の毛が逆立つ奇病も治った。
この髪飾りのことを「ちょうはながた」と呼んでおり、「超花形?」と不思議に思って上演台本を見たら、「蝶花形」だった。(恥ずかしい…)

弾正は天井に磁石(でっかい方位磁針)を持って隠れていた忍を引きずり出し、黒幕の名を聞こうとする。
忍はちらちらと玄蕃を見るので、やっぱり黒幕は玄蕃だということがわかる。玄蕃は口封じに忍を殺してしまう。
弾正は春道から婿引き出に刀を預かり、それで玄蕃を討ち、めでたしめでたし。
幕が引かれた後、弾正が「ご見物のいずれも様のお陰にて…」と観客に礼を言い、花道を堂々と去っていく。
いろいろと「そんなん、アリ!?」と思うが、おおらかで楽しいお芝居だ。
愛之助丈の『毛抜』はそうそうかからないと思うので(と、『鳴神』の時も思ったけどな)、見に行けてよかった。