年 (平成年)

新春浅草歌舞伎 浅草公会堂

1月2日(水)〜1月27日(日)

配役
第1部(11:00開演)
お年玉〈年始ご挨拶〉

一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
工藤祐経:十一代目 市川海老蔵
曽我五郎:二代目 尾上松也
曽我十郎:初代 中村壱太郎
近江小藤太:初代 中村種之助
八幡三郎:初代 中村隼人
化粧坂少将:初代 中村梅丸
大磯の虎:五代目 中村米吉
小林妹舞鶴:初代 坂東新悟
鬼王新左衛門:二代目 中村亀鶴

二、極付 幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
  「公平法問諍」(きんぴらほうもんあらそい)

幡随院長兵衛:十一代目 市川海老蔵
水野十郎左衛門:六代目 片岡愛之助
唐犬権兵衛:二代目 中村亀鶴
出尻清兵衛:二代目 尾上松也
極楽十三:初代 中村壱太郎
雷重五郎:初代 中村種之助
神田弥吉:五代目 中村米吉
小仏小平:初代 中村隼人
御台柏の前:初代 坂東新悟
伊予守頼義:六代目 上村吉弥
坂田公平:六代目 片岡市蔵
女房お時:初代 片岡孝太郎

第2部(15:00開演)
一、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
  毛谷村(けやむら)

毛谷村六助:六代目 片岡愛之助
お園:初代 中村壱太郎
お幸:六代目 上村吉弥
微塵弾正 実は京極内匠:二代目 中村亀鶴
杣斧右衛門:十一代目 市川海老蔵

二、寿初春 口上(こうじょう)
口上:十一代目 市川海老蔵

三、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
武蔵坊弁慶:十一代目 市川海老蔵
富樫左衛門:六代目 片岡愛之助
亀井六郎:二代目 尾上松也
片岡八郎:初代 中村壱太郎
駿河次郎:初代 中村種之助
常陸坊海尊:六代目 片岡市蔵
源義経:初代 片岡孝太郎


お年玉<年始ご挨拶> 昼の部のみ
2日(水) 愛之助
3日(木) 孝太郎
4日(金) 愛之助
5日(土) 孝太郎
6日(日) 亀 鶴
7日(月) 愛之助
8日(火) 孝太郎
9日(水) 愛之助
10日(木) 孝太郎
11日(金) 亀 鶴
12日(土) 愛之助
13日(日) 孝太郎
14日(月・祝) −
15日(火) 亀 鶴
16日(水) 愛之助
17日(木) 孝太郎
18日(金) 壱太郎
19日(土) 松 也
20日(日) 亀 鶴
21日(月) 愛之助
22日(火) 孝太郎
23日(水) 壱太郎
24日(木) 松 也
25日(金) 亀 鶴
26日(土) 愛之助
27日(日) 孝太郎

筋書
愛之助丈関連
32ページ:素顔写真(チラシと同じ)
33ページ:インタビュー
舞台写真、グッズなど
愛之助丈は、
「幡随長兵衛」水野十郎左衛門が5種類
「毛谷村」毛谷村六助が8種類
「勧進帳」富樫左衛門が10種類

グッズ
「豆半纏」、ガーゼ手ぬぐい、ガーゼはんかちがあった。

料金
1等席:11,000円
2等席:6,000円
3等席:2,500円
筋書:1,500円
その頃、他の劇場では…
新橋演舞場
松竹座

雑誌
『花道』第32号
愛之助丈関連
表紙:素顔写真(チラシと同じ)
表紙裏:チラシ
4〜5ページ:「最近の新春浅草歌舞伎出演記録 片岡愛之助」
 「元禄忠臣蔵」徳川綱豊卿の舞台写真あり(モノクロ)
24〜25ページ:「昨年の舞台より」2012年浅草歌舞伎の舞台写真(モノクロ)
 「南総里見八犬伝」犬飼現八 1枚
 「廓文章」東間三郎右衛門 1枚
 「敵討天下茶屋聚」藤屋伊左衛門 1枚
今年はアンケート企画がないのが残念。

『演劇界』2013年3月号→演劇界 2012年 03月号 [雑誌]
愛之助丈関連
29ページ:舞台写真「毛谷村」毛谷村六助(カラーグラビア)
57ページ:二月花形歌舞伎(松竹座)のちらし
68ページ:舞台写真「お年玉 年始ご挨拶」(モノクロ 1枚)
70〜71ページ:舞台写真「幡随長兵衛」水野十郎左衛門(モノクロ 3枚)
72〜73ページ:舞台写真「毛谷村」毛谷村六助(モノクロ 7枚)
74〜75ページ:舞台写真「勧進帳」富樫左衛門(モノクロ 7枚)
84〜85ページ:新春浅草歌舞伎の劇評
93〜99ページ:「守破離 芸をつなぐ 六代目片岡愛之助」
・舞台写真「木村長門守」小姓(モノクロ)
・スーツ姿の素顔写真(スーツもネクタイもブラウン系)×4枚(カラー)
・舞台写真「源氏物語」夕顔(カラー)
・舞台写真「女殺油地獄」与兵衛(カラー)
・舞台写真「新八犬伝」扇谷定正(カラー)
・舞台写真「夏祭浪花鑑」団七(カラー)
・舞台写真「吉田屋」藤屋伊左衛門(カラー)
・舞台写真「GOEMON 石川五右衛門」石川五右衛門(カラー)
119ページ上段:二月花形歌舞伎の紹介(1/3ページ)、舞台写真「新八犬伝」扇谷定正(モノクロ)あり
123ページ上段:3月三越劇場の紹介(1/4ページ)

感想
昼の部
19日に前方中央で観劇。

今年の浅草歌舞伎は、チラシや筋書はごく普通だし、『花道』のアンケート企画はないし、ポストカードやブロマイド(←舞台写真のことではない)販売もないし、ちょっと寂しい。

お年玉〈年始ご挨拶)
今回の担当は松也丈。
出番が近いためか、白塗りに裃姿(口上の時の格好)で、真面目に演目の説明をしてくれる。
もう少しくだけてもいいかな、と思うが、礼儀正しい感じで好感度↑。
突然、幕の中から「音羽屋!」の掛け声が… それも何回も。
松也丈「誰でしょうね。身内だと思うんですけど」
しばらく経ってから、もう一度「音羽屋!」とかかる。
松也丈「今のは愛之助さんでしたね」
ファンなのに、声で気付かなかった…

寿曽我対面
良くも悪くも、若手の勉強会のような舞台だった。(浅草歌舞伎は頑張る若手を応援するための舞台だと思ってるから、それでいいけどね。)
なんと言うか、「いつもは七段飾りのお雛様を見てるけど、今回はミニチュアのお雛様だった。でも、これはこれで可愛いから、まあいいか」という感じ。
いつもは華やかな舞台をまったりと見ているが、今回は心の中で「頑張れー!」と念じて(←近所のおばちゃん状態)、見るのにも変な力が入ってしまった。

十郎(壱太郎丈)と舞鶴(新悟丈)は役に合っていると思う。
五郎(松也丈)にどことなく優しそうな雰囲気がにじみ出るのは、普段女形が多いせいだろうか?
近江小藤太(種之助丈)と八幡三郎(隼人丈)は「若いな〜」と思ったが、工藤祐経(海老蔵丈)の左右でバランスは取れているかな。
大磯の虎(米吉丈)と化粧坂少将(梅丸丈)は太夫と言うより舞妓さんみたいで、可愛らしかった。衣装は、以前南座で対面を見た時と同じ。(いつも同じなのかも。)
鬼王新左衛門(亀鶴丈)が登場して、ようやく勉強会から花形歌舞伎になったかな。(←偉そうに。)

さて、海老蔵丈初役の祐経さん。
なんというか、こんなギラギラした祐経さんは、他にいないのではなかろうか?
敵討ちに来た兄弟を返り討ちにして、そのまま『絵本合法衢』に突入しそうなド迫力。
客席に海老様ビーム飛ばしまくり、眉毛を動かし過ぎ。
しかし、10年後に同じ配役で上演された時に「あらぁ、あのギラギラした祐経さんが、すっかり枯れたいい男になって…」と思うこともあるかもしれないので、これはこれでよしとする。

極付 幡随長兵衛
幕が開くと、劇中劇が上演されている。
坂田公平(市蔵丈)の衣装がごつくて重たそう。(筋書の市蔵丈のインタビューによると、42キロもあるそうだ。)
そこへ酔っ払い(仁三郎丈)が花道からやってきて、舞台が中断する。
舞台番が酔っ払いを追い払ったと思ったら、今度は坂田金時の子孫と言う侍(松之助丈)がやってきて、花道に居座る。松之助丈のこういうお役、好きだわ〜。

そこへ颯爽と登場するのが、幡随院長兵衛(海老蔵丈)。
舞台から客席に階段が掛けられていることには気付いていたが、海老蔵丈が客席を歩いてくるのには気付かなかった。
侍をあっさりいなして、客席にも声をかけ、かっこよく去ろうとする。ここでも海老様ビーム飛びまくり。
すると、桟敷の御簾が上がり、観劇していた水野十郎左衛門(愛之助丈)が長兵衛に声をかける。
水野は爽やかな風貌だが、悪そうな表情。

長兵衛の子分の極楽十三(壱太郎丈)、雷重五郎(種之助丈)、神田弥吉(米吉丈)がかっ飛んできて、水野に食って掛かろうとする。(子分達は客席から舞台に上がってくるのだが、客席を通ってるのに気付かなかった。)
長兵衛が子分達を羽交い絞めにして止めるのだが、親分子分というより、親子というか、大人と子供で、見るからに格が違うなぁという感じだった。
若手花形が演じる子分達は、見た目も幼くて行儀がよさそうで、切った張ったをするようには見えない。
しかし、10年後に同じ配役で上演された時に「あらぁ、あの可愛かった子分たちが、すっかりチンピラになって…」と思うこともあるかもしれないので、これはこれでよしとする。

場面は変わって、長兵衛の長屋。
お時(孝太郎丈)はいかにも“姐さん”という感じで、長兵衛の息子・長松は、小さいながらも父親の背中を見て育ってるのがわかる。
出尻清兵衛(松也丈)は、情けないんだけどほんわかしていて、愛嬌がある。
子分達が噂をしているところに、水野の使いの保昌武者之助(蝶十郎丈)がやってくる。
ここでも子分達がいきり立つのを長兵衛が抑えるのだが、やっぱり大人と子供みたい。
誘いに乗れば殺されるとわかっていながらも、長兵衛は裃に着替え、お時に「長松は俺と同じ仕事に就かせるな」と言い残し、唐犬権兵衛(亀鶴丈)に後を頼み、早桶の準備をさせ、水野の屋敷へ赴く。

水野の屋敷では、水野と朋輩の近藤登之助(右之助丈)が長兵衛を迎える。
手合わせで、長兵衛の剣術の腕が凄いことがわかると、わざと酒を零して風呂を勧める。
そして、風呂場で丸腰の長兵衛を2人がかりで、それも騙まし討ちで斬りつける。
いやもう、水野、きれいな顔してやること汚いなぁ… と、登場時の河井さんを思い出した。(←わかる方、いるかしら?)
水野が長兵衛に止めを刺そうとした時、子分が早桶を持って迎えにくる。
水野は「殺すに惜しい…」と呟きつつも、長兵衛に止めを刺す。

うーん…
私はこういう男の矜持とか美学とかは好きだけど、この終わりは後味が悪いなぁ。
弱きを助け強きを挫く正義の味方が、悪いヤツに卑怯な手で殺されて終わりというのは…
しかも、お正月に。
「昼の部はこれぎり〜」で終わるわけにはいかなかったのかな。(それもまた微妙かなぁ。)

夜の部
19日に前方上手側で観劇。

彦山権現誓助剱 毛谷村
幕が開くと、六助(愛之助丈)と微塵弾正(亀鶴丈)が試合をしている。
六助は弾正から「母親に孝行するために仕官したい」と言われており、わざと負けてやる。(この辺りの事情は台詞で喋っている。) 額を割られる場面はない。
筋書によると、「六助ほどの達人ならそんな隙は見せないだろう」という我當丈の解釈らしい。
確かにその通りだけど、額を割られて尚、「あんなに偉そうに歩いて… 嬉しいんだろうなぁ。親孝行さっしゃれよ〜」という底抜けにお人よしの六助も捨てがたいと思う。

上演時間の都合なのか、前見たときより場面が短縮されて台詞での説明になっていた気がするが、一度しか見たことがないので、どこがどう違うのかまでははっきりわからない。
初めてこの演目を見た人にはわかりづらかったんじゃなかろうか。(私は、仁左衛門丈の六助、愛之助丈の京極内匠で通しを見ていて、あらすじがわかっているから何とか理解できたけど。)

そんなこんなで、お園(壱太郎丈)がやってきて2人が許婚とわかったり、先に来ていたお幸(吉弥丈)が出てきて夫(=六助の師匠)の敵討ちを頼まれたり、物語はさくさく進む。
この場面は役者さんが皆魅力的で、六助は本当にいい人で、見ているとほわーっとした気持ちになれる。優しくて強くて、まさに理想の男性像。

そうこうしていると、杣(←「そま」と読むと初めて知った。てっきり「きこり」と読むと思ってた)仲間に連れられて、斧右衛門(海老蔵丈)が登場。
いやもう、ビックリ!
汚い格好でもさーっとしていて、喋り方に脱力感があって、ビームも飛ばなくて、海老蔵丈に見えなかった。
斧右衛門は六助に「母を殺されたから敵を討ってほしい」と言う。
六助が母親の死骸を見ると、弾正が母親だと言ってつれてきた老婆だった。
騙されたと知った六助は、優しそうな表情を一変させ、「よくも深いところにはめおったな!」と怒る。

さらに、微塵弾正が師匠の敵・京極内匠ということが判明。
六助は裃を着て、敵討ちの支度をする。(今回の浅草歌舞伎で、役者さんが舞台の上で裃を着けるのを見るのは、長兵衛、弾正、六助と3回目。) 子役さんがにこにこしていて可愛かった。
やっぱり、最後にほっとして終わるお芝居はいいな。
この場面だけでなく、通しで上演してほしい。せめて本懐を遂げるところは見たかった。

寿初春 口上
海老蔵丈が裃つけて一人で口上。
市川家代々について、すらすらと語っていた。
「浅草で初めて弁慶を演じた時は、緊張しないタイプなのに、脚が震えるほど緊張した」というようなことも話していた。
意外に(と言っては超絶失礼だが)、感じが良かった。
雑誌やテレビのインタビューも口上形式でやったら、好感度上がるんじゃなかろうか?(←おい)
お正月の三が日だけかと思ったら、“にらみ”もあった。
後見さんが小道具(不勉強なため、正式名称は知らない)を持ってきて、海老蔵丈が準備を始めると、場内に緊張した空気が流れる。 いや〜、すごい眼力だった。
無病息災と言われるのも、納得。

歌舞伎十八番の内 勧進帳
歌舞伎を見始めて7年近く経つが、今回のが私の初勧進帳。(いかに普段見に行く舞台が偏っているか、ってことですな。)
まずは富樫左衛門(愛之助丈)が従者を連れて登場。すっきり爽やかな出で立ちに、声も良い。
花道から、源義経(孝太郎丈)、常陸坊海尊(市蔵丈)、亀井六郎(松也丈)、片岡八郎(壱太郎丈)、駿河次郎(種之助丈)、武蔵坊弁慶(海老蔵丈)が現れる。

さすがにお家芸だけあって、弁慶はすごい熱気と迫力と目力。富樫も負けじと応戦する。
初心に戻った弁慶と初役の富樫の真剣勝負で、引き込まれる。
これが初めての『勧進帳』でよかったかも。(次は、大御所の『勧進帳』も見たいなぁ。)
義経はじっと後ろを向いていることが多く、背中に悲哀が浮かんでいた。

とってもお堅い演目だと思っていたので、弁慶が酒を欲しがってグビグビ飲み干す場面に少し驚いた。この時の番卒(松之助丈)の表情がなんとも言えず、よかった。
最後、弁慶は六方を踏んで花道を去っていく。

さて、今回の浅草歌舞伎。
愛之助丈ファンとしては非常に満足したのだが、毎年やってる企画がなかったこともあり、物足りないことも多かった。
何より、亀鶴丈の出番、少な過ぎない…?
素敵な役者さんなんだから、もっとたくさん見たいなぁ。

おまけ

↑1週間前の大雪が残っていた。
 おみくじを引いたら、末吉だった。


↑仲見世通りのまねき。


↑第一部の幕間に食べたエビカツサンド。
 毎年、絶対にコレを食べる。


↑愛之助丈に来ていたお花。


↑愛之助丈に来ていたお花。


↑愛之助丈に来ていたお花。


↑チャリティ羽子板の見本写真。


↑お土産は「舟和」の芋羊羹セット。