「もしものことがあったとき 娘を頼むよ 縁起でもないけどな」
などという軽口を残して、9つ離れた兄は逝った。
異国の地で落ちたのだ。
あっと言う間もない程に。

側にいてもいいですか
一緒にいてもいいですかと
泣いてすがるこの少女に
妹のように、実の娘のように可愛がっていた
この少女に、「これが愛だ」とうそぶいて
歪んだ熱を注ぎ込む

かつての自分と同じよう
もはや2人きりなのだ
たった2人の血縁なのだ
もう そんな事実ですら
かなしさも やるせなさも いとしさも何もかも
この肉の柔らかさの前では
何もかも霞んで
何もかもがどうでもいい

何もかも

back