煙突から昇る煙。
天に向かってのびゆく梯子に君は
君は今、足をかけた。
ヤコヴの梯子
Jacob's ladder
黒い塊が所狭しと並んで、あいつの眠っている箱を前にうなだれている。
黒黒黒、見渡す限りの黒い色に、俺のほうが真っ黒になって。
開けているはずの目玉にも、光なんて、差さなくなった。
「魂がぬけたよう」なんて言うけれど、あながち嘘じゃないかもね。だってほら。
もう、指一本動かす気力さえないし。
虚ろになった頭の中で、あいつの事を考えた。
あいつの透き通った声も。
赤くなってうつむくその顔も。
何もかも、思い出せるのに、本物のアンタだけ、居なくなっちゃったね。
いつもならものの数秒で眠りに落ちるだろう独特のリズムは、低く、ひどくゆっくりと紡がれてゆく。
読経が耳を通り抜けるだけで、何も考えられない。
泣き腫らした目で、一気に老け込んだように見える顧問。
もう、涙すら枯れ果ててしまいそうなほど泣いているあいつの親友。
眼鏡の奥の瞳は前を向いているが、どこか暗い光でいる部長。
いつも見慣れている部活仲間の顔にも、同じような色が浮かんでいる。
なかには、泣いている人もいて。
俺はただ、何も映っていない瞳で見渡した。
滞りなく、アイツを送るための儀式は消化されていく。
その一連の流れももうすぐ終りを迎えようとしていた。
極近しい人たちに、大輪の花が渡されながら司会進行を勤めているだろう男の、妙になれたアナウンスが頭に響いた。
白木の箱に閉じ込められていたあいつは、何も変わらないように見えて。
長く結われた三つ編みも、色んな色に染まったその白い肌も、何もかも。
花に埋もれたアイツは本当に綺麗で。
俺は体温を失ったその肌に手を伸ばし、ゆっくりと口付けた。
数え切れないほど唇を重ねた日々が頭の中で蘇る。
ベットの上で、こうやって口付けたら、赤くなって目を開いたアンタは何処にいったの?
何度も何度も、その冷たい唇に肌を合わした。
そうしたら、いつものように照れたような声で名前を呼んでくれる気がしたんだ…。
「…桜乃…」
「ねえ、俺を、置いていかないで…?」
ああ、ここで。
俺たちの周りを取り囲む彼らのように。
何もかも捨てて泣き叫べたら、どんなに楽か。
俺は制服のポケットに隠しもっていた鋏を、結われた三つ編みへと伸ばして。
ひと房、そっとつかんで切りいれた。
俺の異常な行動に、参列していた人たちがざわついたのをどこか遠くの事のように思いながら、
そのまま左腕の内側を切り裂いてゆく。
女の悲鳴が聞こえたけど、俺は構わず何度も何度も腕に鋏を突き刺した。
腕から流れる毒々しい赤が、血の通わなくなった彼女に落ちる。
皮膚を破いて溢れ出る、狂った俺の一部分。
俺の行動を後ろから羽交い絞めのように取り押さえたのは、目を真っ赤に腫らして泣いている桃城先輩だった。
眉をつりあげているのに、悲痛そうなその表情が、目の端に流れては消えた。
どうして先輩が泣くの?俺が出せない涙を、どうして。
霞みがかった頭でぼんやりと視線を彷徨わせたら、赤く光る水溜りに映った俺が嘲笑っていた。
握りしめたアイツの長い髪の毛を、ノロノロとした動作で口元へと導いてやる。
微かに香る懐かしい匂いに、これ以上ないほど愛しそうに口付けた。
続き書けなくなった…!!(汗)
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