Eternal triangle

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 フレグレデ国は比較的平和な国で、隣国とは長くに渡って良い関係を築いている。
 時折魔物が出没することがあったが、人が手を出さなければ襲ってこないことも数百年前に立証され、禁止区域として立ち入りを禁止している。魔物が危険ではなく、魔物に手を出してはいけない、それがこの国の方針であり法律だ。
 だがどの時代にも馬鹿な人間はいて、魔物を角や牙、皮などを手に入れようとする者がいる。高額で取引され、魔物を狩る人物は皆腕がたつ。現在ではそれが大問題となり、騎士一同は王家を守ると共に、国中の警備を任されていた。
 騎士たちは日々鍛錬を欠かさず、全二十騎士団に別れて国を守り続けているのだ。



 堂々と告白をしている男たちの姿を見て、羨ましいとは思ったけれど、行動を起こすことはなかった。
 彼女は上司で、女性としては男らしく、頼りがいのある人物であり――美しいという言葉が当てはまる
 特注のレイピアを愛用して、戦う姿に感嘆の息を吐く者は少なくない。
 あの第二師団に所属するアル=ラージャに並ぶ美貌を具え、求婚してくる男の数は数知れず。
 上司が求婚を断るために、仮の恋人を演じさせられたこともあった。
 同時に、第五騎士団の師団長である上司のオフの姿に、次第に惹かれていった。
 だが所詮高嶺の花、身分も高く、実力だけで出世した自分には合わないし、何よりも異性として好きだと問われれば、少し違うと思った。
 人として上司が好きなのだ。
 そんな上司に真正面からキザなセリフで求婚するのは、第三騎士団の副師団長の男だった。
 この国で力のある貴族の一人息子らしい、一つのステータスとして騎士になるケースは多い。
 ただ身分を利用しのし上がったのではなく、実際実力がある。
 しかしこういった男を上司は嫌うので、結婚することはないだろうと思う。
 それでもいつか、上司は結婚するときがくる、そう――身分の高い男と。



 何が起こったのだろう。
 頭を抱えて起き上がり、隣で寝転ぶ女の姿に叫びそうになったが、まだ眠っているようなので、起こすわけにもいかず、このアパートに住んでいるナハル=グルーグは静かに隣室に向った。一人で住むには多すぎる三つの部屋とダイニングとリビング、だが第五騎士団の副師団長である以上、オンボロの安アパートに住むわけにもいかなかった。
 深緑の髪をかき上げて、静かに嘆息する。
 パジャマは着ているが、なぜかボタンが取れていて、上半身は裸に等しかった。
 そして隣には、上司――第五騎士団師団長の上司が、あろうことか裸で眠っている。
 驚いて叫びたかったが、その前になぜか冷静に現状を確認できた。
 酔っ払って上司を寝かせつけたのまでは覚えている。師団長の家は遠いので、突然家に押しかけられて、仕方なく泊めたにすぎない。
 その後、ナハルは着替えて隣室で眠ろうとしたが、まだ酔っ払っている上司に呼ばれて――。
「……首を絞められたんだ」
 思い出して、がくっと肩から力が抜ける。酒の勢いで首を絞められ、そのまま意識を失って何をされたかはわからない。第三者が見れば確実に勘違いされるだろうが、何も起こらないのは毎度のことだった。一瞬焦りはするが、度々起こる状況だ。
 今日は師団長はオフ日、ナハルは午後から騎士団寮へ向わなければいけない。
 簡単な料理とメモを残せばいい。
「ナハル、おはよう……」
「おはようございます、チャルス様」
 服を中途半端に着て起きてきたのは、ナハルの上司であり第五師団長であるアリーシャ=チャルスだった。ブラウンの美しい髪は、見事な寝癖で乱れている。普段はさらりと風に溶けるような、美しい髪だというのに勿体ない。ナハルより頭ひとつ背が低いが、剣と魔法の腕は一流だ。
「飲みすぎに気をつけてください」
「そうなんだけど、やめられないのよね……」
 二日酔いではなさそうだが、まだ眠いらしい。奇麗な緑玉の瞳が良く見えない。
「私は騎士団寮に向かいますので、お休みになってください」
「ありがとう」
 笑顔で礼を述べてから、アリーシャはベッドルームに引き返していった。
 二十八という若さの師団長の姿とは思えなかった。威厳はあるのだが、この場合は皆無に等しい。
 単なる一人の女性の姿に過ぎないからだ。
 かくいうナハルも二十八の男で、上司に忠実で、悪い意味で言えば堅物だといわれる。それに対してナハルは気にはしていなかったし、間違ってもいないので反論することもなかった。部下のいる身としては、そう思われていたほうが好都合でもある。
 食事の準備を終えて、ナハルは騎士の服へと身を包む。青銅色の鎧が似合っていた。






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