王の道

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 暖かい日差し、包み込むような優しい風、座っている草の香り。
 眼前に広がる町並み。
「平和っていいよね……」
 そう言うには、まだ歳若い男だった。銀髪の髪が風に流れる。願掛けとして伸ばしていた髪は最近切ったばかりで、背中が少し寂しい。
「年寄り臭いかもしれないけれど……」
 今生まれた者にはわからない、そしてここ数年に生まれた者にはわかりはしないだろう。
 二十五歳になった自分、そろそろ身を固めないといけないと感じつつも、今はこの平穏を味わっていたかった。
 住む星は荒れ狂っていた、生まれた頃から、物心ついたときから……。
 苦労も、死の恐怖も味わい尽くした。尽くしたくもないものだが……そのぐらい荒れていたのだ。
 だからこそ彼は、戦争のないこの時が嬉しくて、安心できる時なのだ。
 国民たちは平和を満喫し、復興に向けて日々声をあわせて未来へ道を切り開いている。
 戦争に終止符を打った王様は苦労しているようだけど、民が平和ならばある程度安心しているんじゃないだろうか?

 なぜか知られていない王のことを、何となく知っていた、知らされていた。
 正確には教えてくれる。
 星には四つの精霊がいる、強い力を持つ精霊を呼ぶことができるのは、限られたものしかいない。
 誰でも呼べるような力の精霊は総称して「魔法」と呼ばれている。
 男が使っているのは精霊術である。世間一般で言われるのならば。
 魔法も精霊術から生まれ出たものである。
「王様が苦労なされているようだね。でも頑張っていらっしゃる」
 風は精霊を運んでくれる、情報を声を伝えてくれる。
 平和に向かって頑張っている。若き同い年の王様。姿は知られていないがよき王様なのだろう。
 慕うものが多いからこそ、信じられるのかもしれない。
「また盗み聞きか?」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいね。風が教えてくれる」
 あらわれた人物は、笑みを浮かべていた。
「お勤めは終わったのかな?」
「ああ。暇じゃないと遊びにこれないだろ? ファグリーア」
 男、ファグリーアはそうだね、と納得して微笑する。
「そんなに暇があるわけじゃないだろうにね、カイ」
「そんなこともないさ。安定し始めているよ」
 黒髪が首にまとわりついて気持ち悪いらしくて、手で払いのける。切ればいいのに、なかなか切れないのだ。
 もったいないという単なる貧乏性なのだけど。
「平和っていいよね、本当に」
 繰り返し何度言ったかわからない言葉。
「いいな。飢え死にもしないし、無益に人が死ぬわけじゃないし……ファグリーア、領主様のところに行かないのか?」
「今日は私も休みだよ。ウル様は政務に勤しんであられるけど、森の守りがウル様の本当のお仕事。今日はその仕事をなさっているようだよ」
「聖なる森の守護か。実をつけはじめて収穫も多そうだとか。平和であればあるほどつける聖なる実。
 ほんとーに平和だと実感させられるなぁ」
「そうだね」
 平和になったのは去年のことだった。たった一年でここまで復旧できたのは、奇跡とそれに王の采配とさえ言われているが、カイは違うと言い張った。






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