視線を 感じて、振り返った。
僕を見てるのではない。
ゆっくりと視線の先を手繰るとウェラー卿と渋谷がいた。
何かを指差して笑う渋谷と横で優しい微笑みを浮かべるウェラー卿。
渋谷もやっと自分の手をとり帰ってきてくれたのが嬉しいのだろう。
胸に下げている魔石の色もちょっと和らいだ。黒い服の下からでも温かみを感じる。
「何を見てるんだい? ヨザック」
「え?」
不意に声をかけたからなのか、幾つもの修羅場をくぐってきたはずの彼の間の抜けた返事が返ってきた。
だが、すぐにいつもの彼に戻って、腰をくねらせながら唇に指をあててみせる。
「あそこの小鳥さんがカワイイから見とれていたの〜グリ江、乙女だから」
豪快なウィンクつきで。
「かわいい小鳥さんは黒いのかな? 茶色いのかな?」
「こわいな、猊下。なんでもお見通しってわけですか?」
ヨザックの目の奥が光った気がして、苦笑いを浮かべる。
なんでもマルッとお見通しだ! 一挙解決!、だといいんですけどね。
「渋谷はダメだよ。僕のお気にいりだからね。手出しはさせない」
「魔王陛下に手を出すほど命知らずじゃないですよ。もっとも、あの鈍感さは何かしたくなりますけどね」
渋谷たちの方に目を向けると、渋谷の髪の毛についていた葉っぱをウェラー卿がつまんで取ってやっているところだった。
『かわいい髪飾りをつけていますね』と唇が動いている。
からかわれてほんのり赤くなっている渋谷の前にフォンビーレフェルト卿がエメラルドグリーンの瞳を吊り上げて割り込む。
最後の禁忌の箱『鏡の水底』を探しに旅に出て、数日。
周辺の警戒と情報収集、眞魔国への伝達のためにフォンヴォルテール卿たちは隊を離れ、僕たち5人はこの森に身を潜めていたのだ。
にしても、木漏れ陽の中で戯れてる3人を見てると平和なものだ。
渋谷、君が魔王として果たそうとしてる使命は確実に進んでいるんだね。
「こっちの世界では渋谷はモテるんだね」
ちょっと悔しくなって瞼を伏せるとそばにあった大木に背中を預けた。
「そりゃまぁ、あの容姿ですし。なんたって魔王陛下様ですから」
パキンっと小枝の踏む音がして、目を開けると目の前にはヨザックがいた。
口元は笑っているけど目が笑ってない。
苦手だなこの表情は。逃げられない。
「なんだい?」
頭ひとつ位背の高いヨザックの鍛えられた両手が僕の顔の両脇に置かれた。
「猊下だって…、なかなか素敵ですよ? 憂いを含んだ横顔なんか」
「そりゃどうも」
短く返答して微笑む。
ゆっくりとヨザックの顔が瞬きもせずに近づいてきた。
吐息が頬にかかるくらいの距離でささやく。
「逃げないんですか、猊下?」
「なんで?」
「ナニするかわかっているでしょう? 双黒の大賢者さま」
「わかってるから逃げないんだよ」
首に両腕を回し、僕の方から口付ける。
そっと唇を離すと、彼の方から唇を割ってきた。
欲望に任せた唇をぶつけ合う、メガネが邪魔だなと頭の片隅で冷静に考えながら、強引に口内をかき回す舌を押し返し、からめて引き戻す。
僕が、渋谷にしたいように。
いや、きっと渋谷はこんなキスはしない。
それでも、お互いに、目の前にいた人間を相手に選んだだけ。
吐き出せない思いを、ぶつけられない欲望を。
似たもの同士がであってしまったから。
「……んふ」
吸い取られる舌を引き抜きながら、体を離した。
自分の唇の端に零れた唾液を拭ってから、彼の唇を拭う。
その指を、彼の瞳を見つめながら見せ付けるように舐めて見せた。
「誘ってるんですか? 俺のこと」
「さぁ?」
「悪い大賢者さまだ」
困ったように眉間にしわを寄せてみせる。
「最高の褒め言葉をありがとう」
大木の陰から離れると、渋谷たちの方へ駆け寄っていく、背中にさっきと同じ視線を感じながら。
「しーぶやー! この近くに街があるからそこで今日は泊まろう。お腹と背中がくっつくぞ!」
渋谷の背中から抱きついて首に腕を回す。
「おれも腹ペコ〜、なぁーコンラッド、そろそろ屋根の有るとこでご飯食べようよ」
重い〜といわれながらプロレス技みたいな掛け合いをする。
同級生の特権、だろ? 横目でフォンビーレフェルト卿の苛ついた視線を感じながら優越感に浸る。
僕は生まれる前から渋谷を知ってるんだ。ずっと前から。
「では、グウェンダルたちには白鳩便を飛ばして、宿を取ってそこで待つことにしましょう」
ウェラー卿と目が合う。にっこりさわやかな笑顔で返された。余裕ってこと?
100歳やそこらの若造には負けませんよ。
小さな宿屋の部屋を借りた、親切な夫婦の温かな食事で久々に満足した食卓だった。
すぐに眠気が襲ってきて寝床に潜り込む事にした。
用意できた部屋は2つ。
「ダメだ! ユーリは婚約者なんだから当然同じ部屋だろう!」
「だー! やだよ、城でも一緒なんだからたまには静かに寝かせてくれよ!」
「僕も、フォンビーレフェルト卿とは嫌だな。」
「俺は坊ちゃんと一緒でも」
部屋割り揉める。修学旅行の学生か僕たちは。
「じゃ! コンラッドと一緒に!」
「ユーリ! やっぱり尻軽だなおまえは!」
「俺は白鳩便の手配とかあるので、陛下の警護はヴォルフに任せたいんだけど。
ヨザック、俺が留守の間、外で見張りを頼めるか?」
「わかりました隊長」
「なんでそうなるんだよ〜!!」
結局、僕一人がベットを占領することになったが、薄い壁一枚の仕切りだけで、かわいい天使のような姿からは想像できないいびきが聞こえてくる。
「渋谷……、毎晩大変だな。同情するよ」
灯りが消えてからしばらく、渋谷のうめきが聞こえてきたがすぐに寝息に変わる。
まったく慣れとは恐ろしい。
こんな風に渋谷の気配を感じたことはなかったな。
久しぶりの寝床だというのに、月明かりがまぶしいせいかさっきから寝付けないでいた。
「だいぶ…月が傾いたな」
ウェラー卿が帰ってきた気配はない。ドアの向こうのヨザックは毛布一枚持って出たが慣れてるとはいえ大丈夫だろうか。
「バカだな、僕は…」
一人つぶやいた声が部屋の隅の闇に吸い込まれる。
キィー…
控えめな音と共にドアが少し開いた。
メガネをはずしているせいで顔が見えない。敵ではないだろうが、寝たふりをする。
「……眠れないんですか?」
昼間と同じ声でささやかれ、少し太陽と砂埃の匂いがした。
その声に答えず、顔を背ける。
ベッドが軋む音がして、唇が僕の首筋に触れた。
黙ってるのをいいことに剣を握る肉刺ができた手のひらがシャツをめくり上げ、胸の突起をつまむ。
「ちょ…、ダメだ。渋谷が起きちゃう」
吐息と一緒に声を絞り出す。
「大丈夫…坊ちゃんはぐっすりお休みだ…」
「ん…」
「声出したら…起きちゃうでしょう?」
出させてんのは誰だよ。
「……ぅ」
唇をふさがれ、指先が耳をなぞり、呼吸も吸い取る勢いで深く舌をねじ込んでくる。
自分はシャツの前も開けて臨戦態勢って訳ね。
いまさら抵抗する理由もない、足を開き腰を浮かせる。
腰を抱え込まれて、下から潜り込んだ舌先が胸を這い回る。
がむしゃらに探るような動きなのに息が乱れる。
久しぶりだから、かな?
臍の下を執拗に責められて、下の欲望が正直に下着を押し上げる。
もどかしく、自分で布を剥ぎ取ろうとしたら、慣れた手つきで脱がされた。
空気にさらされて一瞬腰が引ける。
耳たぶに小さく音を立てて口付けながら、体を密着させてくる。
人肌が気持ちよくて、抱き寄せた体に頬を寄せる。
指が行き来するところが熱く体の芯を疼かせる。
十分に堅くなった僕のものを包み込み、一定のリズムで動かされる。
漏れそうな声を唇を合わせることでやり過ごし、腿に当たる彼のモノにも手を伸ばした。
息遣いだけで進む行為、確認もせずに指が襞を掻き分け押し込まれる。
「ぅぐ、ん」
「ちょっと我慢してくださいよ…」
冷たい石のようなものを皮袋から取り出すと後ろに押し込んだ。
指とは違った異物感に中の粘膜が動く。
少し待ってから指が再び挿入され、うごめかされると中の異物は熱で溶けて小さくなったようだ。
粘りをもった液体に変わったものと混ざり合った指がさっきより滑らかに出し入れされていく。
後ろの指が深く一点に当たると、自分の吐息が熱を持ってるのがわかる、隣の部屋の気配をうかがいながら押し殺している声が漏れそうで唇を強く噛む。
「こんな…こと、陛下にされたいんですか…?」
「違う…よ、渋谷の上げる嬌声が聞いてみたいんだ…、こんなこと、されてる渋谷をみてみたいんだよ。最低だろ?」
「じゃあ、なんで…、こんなことされてるんです?」
ゆっくり、両の足を抱えられて、指よりも質量を持ったものがこじ開けていく。
もっと、欲しいと息を詰めながら後ろをヒクつかさせてる自分が滑稽に思えた。
「同病相憐れむ、って言うんだよ…、僕たちは同じ傷を舐めあって、慰めあってるだけだ」
「通りで…痛いと思った…、あんたは必死で隠してる俺の傷を抉って、かき回す…っ」
ひと際強く突き上げられて、体が弾む。
「あう…ッ、ウェラー卿にも…こんなことした…のかい…?」
「まさか、…ルッテンベルクの獅子といわれた、あの人にそんなことしたら、俺が斬られるか、あの人は舌でも噛み切るだろう、…今ならわからないけれど…」
目を閉じて、突き上げられる腰の揺れにあわせて自分も揺らす、マスターベーションみたいに、自分の快楽を求めて。
「試して…みればいいのに…」
そうつぶやいて、彼の体を抱き寄せて唇を押し当てる。そのまま体制を入れ替えて、僕が上になった。
気持ちイイなんて体の一部だけで、頭の中はひどく冷めてて、ヨザックの腹に手を添えながら、腰を揺らす。
深く繋がれたソコが音を立てる。
壁一枚向こうに渋谷が居ると思うと体の中心が熱くなる。
人差し指の関節を強く噛んで声を押し殺しながら、遠くで名前を呼んだ『渋谷』……この世界で僕だけが呼ぶその名前を。
「ア……ぁ、イキそうだッ」
「俺…、も…出る…ゥ」
彼の手が僕の張り詰めて先端から滴をたらしてる棒に添えられて性急に扱かれる。
後ろに感じる刺激と前にも与えられる刺激で腹の奥から搾り出されるものを吐き出した。
同時に後ろに入れられた彼のモノが大きく小刻みに震えたので腰を浮かせると、熱い粘膜の壁から解放された肉棒から熱い液体がまだ開いたままになった入り
口を打つ。
ポタリ、と零れた白い液と内股を伝う感覚にまだ、体が震えた。
黙って快感を行き過ごしていると、起き上がった彼が後始末にその辺の布を掴んで手を伸ばした。
「いい…自分でするから」
「そういうわけにいきませんよ」
まじめな臣下顔をしていう彼に苦笑しながら彼の指を咥えた。
「じゃぁ…全部舐めて、僕を綺麗にしてくれる?」
ちょっとした意地悪、のつもりだったが、躊躇もせずにうなずいた。
「御意」
まだ、疼く体の奥をこらえながら、股間に顔を埋めて舐め取っていく、彼の頭を撫でていた。
渋谷も…、こんな顔でしてくれるだろうか……?
悪いことをしてるとは思わない、きっと彼も僕ではない誰かを浮かべているのだから。
メガネを外しててよかった。
そして、何事もなかったように、言葉も交わさずに、ヨザックは部屋を出て行った。
また、何度か傷が疼いたら、僕らはお互いを求めるだろう。
きっ
と、誰の代わりにもできずに、虚しい心を寄せ合う。
切り札を出せずに。

コンユでヴォルユでムラユというユーリ
総受
体制です。でもヨザムー(笑)
時間設定は原作ではなくて、マニメのコン帰還後のつもりです。
……というか、ヨザムラのネタが浮かんで、ヨザとムラケンとコン+ユーリの旅ってないんだ〜。
と思ったときにマニメ版の設定があったな〜というだけで(笑)
まったくの脳内練成、パラレルです。
愛の無いセックスもたまにはいいんじゃない?>オイ。
(c)Tsukasa Ichinose