「ユーリ、なんですか……? それ」
眞魔国の魔王陛下の城、血盟城の一室に入ると部屋 の真ん中で長いすに腰掛けたユーリがいた。
腕にヌイグルミを抱えて。
「ヴォルフが置いていった」
黄色い頭をした子犬くらいの大きさのそれを俺のほ うに突き出す。
「それは、金色の髪、生意気そうな目つき……わがま まプーさん?」
「なんだか用事があるから帰るって。その間に寂しい だろうからグウェンに作ってもらったってさ」
「グウェンのお手製ですか、愛されてるんだ、妬けま すね」
部屋にいる侍女たちに人払いをするように片手で合 図して、ユーリの向かいに腰掛ける。
「子供じゃないんだからヌイグルミ抱いてなんか寝な いって」
「じゃあ、何を抱いてなら寝れるのかな?」
ヌイグルミを抱いて寝るユーリの姿を想像して顔が 緩む。
「一人で寝れるよ! あーでもあれだな、おれの部屋 のベッド広すぎるんだよな〜」
「ギュンターが陛下のためにって選んだんですよ、ま だ小さいってぼやいてたな」
「あれが狭いって、ヴォルフと寝ても大の字なのに」
「それはあなたが魔王陛下だから」
「や、でもさ。あの眉間にしわ寄せてるグウェンも弟 には甘いんだな〜、自分の弟のアミグルミつくっちゃうなんて」
兄弟っていいよな、と嬉しそうにつぶやくユーリの 目が細くなる。
「俺はユーリにも甘いんですけどね」
「アハ、そうかも。おれもコンラッドには頼りまくり だし」
ホントに、この人鈍いな……。
おれの隠し方が巧いとかじゃないぞ。
「ユーリが来てから、少しづつ変わったよ眞魔国も、 みんなも」
「え、そうなのかな? それって国にとって好い事? コンラッドにしても?」
「…もちろん。 民もユーリが魔王になったことを喜 んでいる」
一瞬の間にユーリが息を飲んだ。一番喜んでるの は、この俺ですけど。
「ならいいんだけどさ、やっぱ……まだなんか不安で さ、実感湧かないっていうか。
2軍から急にオールスターに選ばれちゃったみたいな」
「実力のない選手は選ばれたりしないですよ」
ヴォルフのヌイグルミと一緒にひざを抱えて座る ユーリは小さく震えてみえた。
ぎゅっと肩を抱いて、ユーリの世界へ帰りましょう といいたくなる。
だけど、それは俺のすることじゃない。
「そうだ、食事が終わったら離れに来ませんか?」
「離れ?」
顔を上げたユーリの黒い瞳が丸くなる。
「俺の隠れ家です。ギュンターにはナイショでね」
●
「コンラッド…、コンラッドー」
頭上からユーリが小声で呼ぶ声がする。
月明かりに照らされるテラスに手を振る。
「こっちです、ユーリ」
「なんで窓から出るわけ〜? しかもちょっと高い し。よいしょっと…うわぁぁっ」
バランスを崩したユーリの体が傾いてテラスに摑 まった形でぶら下がる。
「ユーリ、受け止めるから跳んで!」
「跳んでって、簡単に言うなよ〜。この後ろ向きな体 制からどうやって、こりゃ跳ぶちゅうか落ちる……」
「俺を信じて」
広げた腕の中にユーリの体が飛び込んできた、とっ さに体を曲げ受け止めたが二人一緒に倒れこむ。
「コンラッドっ 大丈夫?」
目の前の顔が心配そうに覗き込む。
見張りの者が気がつかないか一瞬あたりを伺ったが 駆けつける様子はない。
自分の上のユーリの体をぎゅっと抱きしめた。
「ちょっ! コンラッド!」
「スリルがあったでしょう? ロミオとジュリエット みたいだ」
「なに言ってんだよ」
立ち上がろうとしたユーリの体をもう一度抱きこん で肩口に顔を埋める。
「俺のこと信じて飛び込んでくれたんだ」
「当たり前だろ、あんたが跳べって言ったんだから」
「嬉しいな、怪我させなくてよかった」
「怪我しなくてよかったよ、あんたが」
照れもうそも微塵も含まない言葉に一瞬、視界が揺 らいだ。
そうだ、ユーリはこういう人だ。
俺の愛した人はこういう人だ。
「行きましょう、まだ夜風は冷たいから」
血盟城の裏手に当たる敷地の奥に木で作られた小屋
がある。
もともとは警備兵の休憩所だったところだが、新しく立替て空き家になったところを俺が使わせてもらっている。
わずらわしさから開放されて酒を呑んだりするうちに居心地がよくてベッドやらテーブルやら持ち込んでしまった。
今ではこの場所を知るものは数少ない。
ユーリに教えるのも初めてだ。
「えー、こんなとこに建物なんかあるんだ。林になってるから見えないよな〜、真っ暗だし」
「でしょ。隠れ家にぴったり、ほら見えてきた、小さ いけど中は意外と広いんです」
後ろを歩くユーリを振り返り、木々の間から浮かび 上がる小さな窓と扉がひとつある小屋を指した。
「うわーすげー! お菓子の家みたい!青い鳥とか飛
んでくる!?」
この辺はきっとあの母上の影響だろうな。
ボストンで会った勇ましい母の顔を思い出しながら、小屋の扉を開けた。
「青い鳥は飛んできませんが、暖かい季節には綺麗な花が咲きますよ」
「おじゃましまーす。ちゃんとした部屋じゃん、もっとこうヒミツ基地みたいにごちゃごちゃしてるのかと思った」
ランプに火を灯し、戸棚を開ける。
ユーリが窓から外を眺めていた、その後姿は月光に照らされ縁取られた輪郭に息を飲んだ。
「コンラッド?」
声をかけられ、持っていたガラス瓶を落としそうになる。
「あ、酒は呑まないんでしたね。じゃあ、こっちを」
べつの瓶から飲み物を注ぐとユーリに手渡した。
「ありがとう。何、これ? 白いけど薄いから牛乳……じゃないよね」
「ああ、甘いですよ。羊の乳から作るんです」
一口飲んで何か気がついた表情になる。
「あ、カルPスだ、これ。懐かしー味がする〜原液舐めてよく怒られたっけ。あれ? でもカルPスって何から作るんだろ?」
「気に入った? ここの人たちは飲まないからね、俺は好きなんだけど,、庶民の飲み物だから」
「そうなの? 美味しいのに、昔はお誕生日会じゃないと出てこなかったんだけど、今じゃペットボトルで飲めるからな〜
え、でもコンラッドも好きなんだ。なんか甘いものとか苦手そう」
「そうかな? 甘いのは好き、ですよ」
陛下の笑顔、とかね。言おうとしたけど辞めて笑いかける。
「その顔で女性を口説くわけだ、おれでもドキッとしちゃうよ」
少しユーリの頬が赤くなった気がした。
この人わかってやってんのかな?
この状況で、そのセリフ、その表情は罪だよ。
「ユーリは? 好みの侍女はいませんでした? まだ誰にもお声がかからないって泣いてたよ」
冷静を装って話題を振ってみる。
「え? おれ!? そういうことだったの? そんなみんなかわいい子だし、よくしてくれるけどお礼だけじゃ不服ってこと〜〜?」
「いろいろタイプを変えてみたんだけどな。ギュンターはさすが陛下!って喜んでたけど」
「そんなこと考えたことないって!! っていうか魔王陛下ってそうなの? そんなことしちゃうんだ、おれには無理ーー!」
ますます赤くなる表情に、もっと頬を赤く染めたくなる。
−−−限界。
「我慢できなくなったらどうしてる? こっちにはビデオとかないでしょ? そういう雑誌もないしね」
一歩、ユーリに近づく。
鼻先に、髪の毛が触れて、甘い、匂いがした。
「な、なに言うんだよ! そりゃ、健全な男子高校生なんで、その、いろいろ興味はあるけど!」
慌ててユーリは顔を背ける、ゆっくり背後から抱きしめた。
「ヴォルフに……してもらってるのかな?」
「違うって! あいつとそんなことある分けない男同士なのに。先に寝ちゃってるし」
「じゃあ、俺がお手伝いしましょう」
右手の肩から指を這わせ、グラスを取り上げるとテーブルに置いた。
ユーリが予想外の展開に固まって思考回路を停止させてるのをいいことに腰を抱いて、最近しまってきた腹筋を撫でながらズボンの中に手を差し入れる。
「コン…っ なにして!?」
「緊張しなくていいですよ……」
下着越しにユーリのものに触れるとちゃんと反応していた。
形を確かめるように指の腹でやさしく撫でると小さく息を漏らした。
「やだっ こんな……」
「こんな…なに…?」
「こ……こんな、」
言葉を続けようとしてるけど手は止めない。
「俺にされるのが嫌なんですか? 男にされるのが嫌なんですか? それとも…?」
「……っ、義務…みたいに…されんのヤダ……」
唇をかみ締め、語尾は消えそうだった。そんな表情さえそそられる。
「そんなんじゃないよ…、ユーリ……好きだ…ユーリ…」
耳のふちを唇で啄み、言葉を注ぎ込む。
ユーリの体が小さく跳ね、腰を抱く俺の手をきつく握る。
「……いい?」
問いかけてみたが、返答も同意も待たずに最後の布の下に手を入れる。
直に触れるそれは熱を帯び始め、包んでやると脈打つ。
「……ぁ」
一旦、手を抜くとズボンを緩めて下ろした。
「汚したらやだろ?」
うつむくユーリの顎をなぞりながら、再び下を包みこむ。
初めてのシチュエーションのせいか堅さは十分で天頂部をこすってやると液をこぼした。
「ユーリ……」
頭は冷めてるのに、口からは名前を呼ぶことしかできない自分に苦笑した。
今は何もかも愛しくて、夢中で手を動かした。
ユーリは抵抗もせずに俺の手に身を任せ、ついに耐え切れなくなったのか頭を俺に預けてきた。
「あ…ふぅ…、コン、ラッド…」
熱い息を吐き出しながら、目を閉じて快感に身を任せている。
「出していいよ……ユーリ」
「んな、こと……ぅ」
根元から手の動きを早めてやるとあっさりと手の中に温かい液体が広がった。
痙攣が収まるのをまって手の中のものをぬぐう。
脱力したユーリの体を抱えて一緒にベッドに座り込む。
「人にされるのは初めて?」
「あったりまえ…だろ」
近くにあった布で手を拭うと頬に口付けた。
「よかった」
「よかった、じゃねーよ…」
膨れた顔もかわいくてベッドに寝かせるとゆっくり口付けた。
逃げないのをいいことに上の服に手をかける。
見慣れてるはずなのに肩のラインがやけに色っぽ
い。
「勿体無い……」
ユーリが目をそらしたのをみて、灯りを消す。
光を奪われて一瞬闇に奪われた中で自分の前を開け
た。
平気な振りして、結構限界な俺。
徐々に慣れていく視界の中でユーリに覆いかぶさり、額から頬、耳に口付ける。
「ん、」
「ココ、弱いんだ…?」
音を立てて何度も口付け、舌を差し入れると呼吸が乱れる。
「ぅ……あ」
首筋を撫でる指が汗ばんで吸い付くようだ。
吐息を漏らす唇をふさぐと、苦しいのか行き場を求
めたユーリの腕が背中にまわされる。
「ん…、うぅ…」
舌を押入れ、からめてやると一生懸命応えてくる。もっと、というように深いところに誘うように。
「ユー…リ…ぅ」
手のひらを何処も逃さないように滑らせると、甘い痺れが体中を走る。
今、ユーリがこの手の中にいる、それだけでたまらない。
まるで、戦場で敵にあったみたいな、痺れを快感が脳を支配する。
傷つけたくないのに、傷つけてしまいそうで、必死に名前を呼ぶ。
「ユーリ…ユーリ…」
足を開かせようと手を差し入れると、反射的に足が
閉じる。
「大丈夫…だから」
もう一度音を立て、口付けてから後ろの堅く閉ざさ
れたクチに手を伸ばす。
おそらく触れられたことのないそこをやさしく指でなぞる。
「……ぁ」
一度、指を口に含み、濡れた指で襞を押し開く。
唾液ってすぐ乾くんだな…と頭の端で思いながら。
何度目にかようやく指を一本受け入れるようになり、ゆっくり動かす。
「……っ」
唇をかみ締めながら、後ろは指を締め付けてくる。
「すごいよ…ユーリ…、奥まで入ってるの…わかる?」
奥まで差し入れて指を曲げてやると広げられたそこがクチュ…と音を立てる。
「ぁ! なんか変だ、コンラッド…ぉ」
「変、じゃないでしょ? こんなにして」
さっき吐き出したはずの前は堅さを取り戻していた。
腿から、ギリギリの付け根までなぞると腰を浮かせた。
「あ…ぁっ」
2本目を受け入れると奥にあるそこに触れるだけで啼くような声を漏らされて、こっちが持ちそうにない。
両足を抱え、潤んだ瞳を覗き込む。
「ユーリ…、ちょっと我慢して」
「コン…ラッ…ド」
目の端から零れた水滴を唇で救うと、限界に近い自分の物をゆっくり押し入れた。
「うっ…ん!」
ベッドがユーリの替わりに軋む声を上げる。
腕を掴むユーリの腕に力が入る、それでも止められなくて、腰を進めた。
ユーリの内は熱くて、急かすように締め付けてくる。
「は…ぁ!」
「あぁぁ…ん! あ、あ、!」
突き上げるたびに奥に誘い込まれるようにうごめいてイキそうだ。
何かを欲しがるようにユーリも腰を揺らし始めると抽入される音がジュプ…っグチ…ュと響く。
「ユーリ…! はぁ、あぅ」
片手でユーリのものを扱ってやると、あっけなく2度目を放って、その締め付けに促されるように俺も慌てて抜くと自分の手に出した。
はぁはぁと荒い息をするユーリの胸に口付ける。
射精したばかりの体がその刺激だけで反応するのがどうにもかわいくて抱きしめた。
「コンラッド…」
そっとユーリの指が左目の傷に触れる。
「すいません……、無茶しちゃいました」
「謝るならする…なよ」
力なく微笑むユーリにもう一度口付けて、掴んだシーツで体を拭うとそのまま包まった。
「朝早く、湯殿につれていくから、今日はこのまま……」
このまま、幸せな気分を逃したくないから。
「うん……」
うなずいたユーリはそのまま重そうな瞼を閉じた。
瞼に口付けたまま、俺もまどろみに堕ちていった。
○ ただ単に冒頭の
「グウェンのお手製ですか、愛されてるんだ、妬けますね」
が使いたかっただけなんですが。
なぜにSの入ったコンになってしまったのか。
うちのコン、もしかしてエロイですか? え?まだ
まだ?
カルPスは乳酸飲料です(笑)羊の乳からはつくりませんあしからず。