| ゆきむし。 |
| 「う
わ〜、雪? じゃないよな」 夕暮れが深まり、空が紺と深い緑に染まり始めた空にふわふわと舞う白い小さな綿毛にユーリは手を伸ばした。 「ああ、雪虫だろう。この虫が飛び始めるともうすぐ雪が降る」 「え? なんで?」 伸ばした指先に小さな虫が止まる。 白い綿毛をまとった小さな虫。 「なぜだか知らないが、この時期にはこの虫が飛ぶ、そうしてぼくたちは冬が来ることを知るんだ」 「へぇ…、こんな小さな虫がねー」 「寒く、なるな。雪が降ると」 「なんだよ、冬、嫌いだとか?」 「好き嫌いとか、考えたことがない。寒いのは嫌いだな」 飛び交う「雪」たちを眺めながらつぶやいた。 「おれは、雪合戦とか楽しみかも。おれが住んでたとこはめったに雪降らないからさ」 嬉しそうに、振り返るユーリの笑顔に、ヴォルフラムは微笑み返した。 「ことしは、冬が好きになりそうだ」 「そうなの?」 「ユーリに逢ってから、好きなものが増えた」 ヴォルフラムの素直な真意が伝わって、顔が赤くなった気がしてユーリは目を伏せた。 こんなとき、気の利いた台詞が返せないのがもどかしい。 「本当の雪が早く降るといいな」 今度はヴォルフラムが楽しそうに指を伸ばし、小さな虫を止まらせる。 「寒いのは苦手だけどな」 「寒かったら、ぼくが暖めてやる」 そっと、ヴォルフラムの片手がユーリの手を握る。 ほんのり温もりを伝える手をユーリは無言で握り返した。 もうすぐ、雪が降る。 終わり
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