2009.5.4のSuper Comic Cityで配布したペーパーに掲載のお話です。
成年向けの描写が含まれます。御注意ください。
  

 

 

 

晴天清々しい五月のある日の事でした。
「おーい、アル、明日は何の日か知ってるか?」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、兄のエドワードが弟のアルフォンスの傍に近寄ってきました。
「明日……何の日だっけ? ウィンリィの誕生日じゃないし、母さんの命日でもないし……」
庭の物干し台の傍で洗濯物を干していた手を止めて、律儀にも弟は兄の問いに答えたのですが、兄はピンと立てた左手の人差し指を左右に振って、今や誰もやりそうにない仕草を見せながら言ったのでした。
「明日はなあ、東の国じゃ端午の節句と言って、男子の健やかなる成長を願う日だそうだ。薬草を入れた風呂に入ったり、餅を食ったりするのだ。女の出る幕のない、男の祭りだぞ」
「なんだか、その言い方だとちょっと意味が違う気が……」
「あまり細かい事は気にするな、弟よ。とりあえず明日は俺達だけで祝うのだ。明日必要な物は俺が全部揃えておくから、心配するな!」
強引な兄の物言いにちょっとだけ不安を覚えつつも、とりあえずはーいと良い子の返事を返し、アルはまだ干し終えていない洗濯物を手に取りました。
次の日、朝からやけに楽しげなエドはアルの手を引いてバスルームへと向かいました。
「何?どうしたの?」
バスルームに到着したアルは白い猫足のバスタブに湯がなみなみと溜まり、その湯の中には細長い緑色の何かの草が浮いているのを見つけて素っ頓狂な声を上げました。
「兄さん、このお湯をどうするの?」
すると、エドは嬉々としてそれまで身につけていた洋服を脱ぎながら答えました。
「端午の節句にする事は、まずは菖蒲湯に浸かる事なのだ! 菖蒲には鎮痛効果があってだな、日頃鍛錬でくたびれた身体を癒してくれるのだ! さあ、お前も服を脱いでこの湯に浸かるんだ!」
「えーっ、別に痛むところもないし、汗だってかいていないのに?」
アルはそうエドに向かって文句を言いましたが、エドはシャツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ、トランクスを膝までずり下げながら怒り出したのです。
「黙って俺の言う通りにしろ! これは祭り! いわゆる一つのルーチンワークなのだ。今の状態がどうこうなんて考えるな! 俺の言う通りにすれば良いんだ」
兄がへそを曲げると後々面倒なので、アルはどこか割り切れなさを感じながらも洋服を脱ぎ始めました。
やがて、すっかり洋服を脱いでしまった二人は、ゆっくりとバスタブの中へと身体を沈めました。
バスタブは特に大きい物でもなかったので、そう大柄ではないエドとアルでも二人一緒に入るには少々どころがとても窮屈でした。そのままでは体育座りをしても膝が当たってしまうので、仕方なく膝を交互に相手の腿の間に割り入れて座るようにしました。
温めの湯に浸かりながら、ぷかぷかと浮いている菖蒲の葉を指で突いているアルにエドは言いました。
「なあ、結構気持ちいいだろ?」
湯の温かさに頬を上気させたエドはその魅力的な瞳をアルに向けて笑顔を見せました。
「そうだね。たまにはこうやってお湯に浸かるのも良いかもしれないね……」
美容に気を使う女性ならいざ知らず、健康で若い男子のアルは多分に漏れず入浴時間は短めです。エドも入浴時間は似たり寄ったりだったので、こうしてゆっくりと湯に浸かるなど本当に珍しい事だったのです。
アルは気持ち良さそうにとろんとした目をし始めた兄の表情を見て考えました。
(……手足を取り戻したとはいえ、継ぎ目の傷がまだ痛むのかもしれないな……兄さんてば強情張りだから、そういう事も滅多に口に出さないし。だからこういう日を口実にして自分がお湯に浸かりたかったのかも……)
そう考えた途端、アルは強引な兄を愛おしく感じるようになりました。
……しかし、アルの思いとは裏腹に、エドの本意は全く別のところにあったのです。
「さて、十分身体も温まったし、次の行事に移るぞ!」
エドは突然バスタブの中で立ち上がると、アルの腕を掴み、自分と同じように立ち上がらせました。
ざばざばと盛大に湯を波立たせながら立ち上がった二人の少年と青年の均整の取れた肉体は互いに向かい合う形になりました。入浴しているのでもちろん肉体を覆い隠す物はなにもなく、無駄のない上腕の筋肉や胸にぽちりとその存在を示している薄い桜色の乳首や奇麗に整った臍やしっかりと割れた腹筋や、そして柔らかな光のような薄めの下毛と生々しい肉の色をたたえた欲望が全てバスルームの白熱灯の下で晒される羽目となったのです。
男同士でもあり、また愛し合うようになって肉体の繋がりを得た二人だったので今更気恥ずかしさはありませんでしたが、やはりこうやって向かい合って互いの身体を眺めるような状況はアルにとっては慣れないものでした。第一、睦事は薄暗がりの中でするのが恒例だったので、アルは上気した頬を更に赤くして俯き、言いました。
「……何をしようってのさ……兄さん……?」
すると、エドはあろうことか手を伸ばし、アルの欲望をむんずと掴んで上下に扱き始めたのです。
「ひゃあああああああっ!」
兄の行為に驚いたアルはものすごい勢いで後ずさりましたが、狭いバスタブの中ですぐに追いつめられ、バスタブのふちに両手をついて腰を引くような姿勢を取るのが精一杯でした。
「なっ、何するのさ! やめてよ!」
 アルは精一杯の抵抗として顔を真っ赤にしながらそう怒りましたが、エドは全く聞く風でもなく、アルの欲望を握りしめ、超高速でその手を上下させるばかりです。エドの手の刺激に次第にアルの欲望はむくむくと充血を始めました。
「あっ……はっ……ああ……」
アルのぴんと張りつめて天を指し示した先端からはとろりとした露がにじみ始めています。エドはそれを見ると輝くような笑顔を見せて、今度は自分の股間に空いている方の手を伸ばしたのです。
エドは自らの手で欲望を刺激し始めました。バスタブに浸かっていた時から半勃ち状態だったエドの欲望は、ほんの数回扱いただけでアルの欲望と同じ位の硬度を保つようになりました。
「へへ……もう少しだな……」
自分のものとアルのそれを比べながら何やら呟いたエドはやがてアルの欲望を握っていた手の動きを更に早めました。先端から溢れ出た露でにちゃにちゃと淫微な音を響かせたアルの欲望は傍目に見ても爆発寸前といった様相を呈し始めており、アルは抵抗する事も忘れて兄の手淫に酔いしれてしまいました。
「あっ、ダメ、もうでちゃ……ダメ、イッちゃう、兄さん!ダメぇ!」
しかし、アルの下腹の筋肉が不規則に痙攣し出し、欲望の下で揺れていた袋が緊張で持ち上がったその時、エドはアルの欲望から素早く手を離してしまったのです。
「ひぃ……あ……え……?」
射精寸前まで追い立てられていたアルは兄の行動に分けも分からずに泣きそうな顔を見せながら兄の手に縋り付こうとしました。
兄は相変わらずもう一方の手で自らの欲望を扱いています。やはり射精が近いのか、露が溢れてピンと伸びた包皮に持ち上がった袋といった光景はアルのそれと全く一緒でした。
「兄さん……やだよぉ……最後まで……ねえ、お願い……してぇ……」
自分ばかりずるいとばかりにアルはエドに縋り付くと、まだ張りつめたままの欲望をエドのそれに擦り付けました。けれど、エドはそんなアルの行為を制すると、にんまりと笑って言ったのです。
「さて、次は『背比べ』だ! しかし、ただ普通に身長を測ってもつまらねえ……そこで今日はこいつの長さ比べをするぞ!」
……こいつ、というのはエドがさっきまで扱いていた物の事でした。
エドは押しとどめていたアルの身体を抱き寄せると、下半身をぴったりと密着させました。当然のように欲望同士もぴったりと密着したのですが、そこでエドは欲望同士の根元の高さを揃え(残念な事に、エドの方がアルよりも本の僅かに背が低かったので、エドが僅かに背伸びをする形になりました)、その長さを比べ始めたのです。
アルは当時、禁忌を犯して肉体を失った10歳の状態で肉体を取り戻しました。それから数年の間に周囲の人々の愛情と兄であるエドの過剰すぎる愛情を受けて健康を取り戻し、すくすくと成長をした結果、今では僅かながらエドよりも身長が高くなっていたのです。
人一倍、身長に関してはコンプレックスのあるエドがそれを面白く思う訳もなく、エドはなんとかして年齢や兄であると言う事以外にアルよりも優位に立っている部分はないかと思案に暮れた結果、まだ完全に成長を遂げていないその部分を発見したという訳だったのでした。
「むふふ……見てみろ、俺のナニの方がお前より0.7センチほど長いのだ。平常時はお前の方がおおよそ0.2センチ長いから、膨張率そして最大勃起時全長この二点において俺はお前を上回っていると結論付ける事が出来る! むはははは! 参ったか、弟よ!」
勝ち誇ったようにそう言うエドの顔を睨みつけながら、アルは言いました。
「……それで、こんなになっちゃったコレは、どうしたらいいの……?」
「え?ああ……もちろん、ちゃんと考えているから安心しろよ」
エドは楽しげにそう返事をしてからアルの両腕を自分の首筋に縋らせるように巻き付けました。そしてそのまま向かい合い顔を寄せてキスし始めたのです。
エドのぬるりとした舌が上下の歯の間を割って滑り込んで来るとそれに合わせてアルも舌を絡めたり吸ったりし始めて、そうこうしている内にアルは冷めかけた欲望に再び火が点くのを感じたのでした。
「んっ……んふぅ……」
互いの唾液が混ざり合いながらぴちゃぴちゃと淫微な音を立てているのを耳にしてまた興奮の度合いを高めたアルでしたが、そうした感覚の中で兄の手が二人分の欲望を握ったまま上下に動かされている事に気がついたのです。
「あっ、兄さん、それっ……」
欲望の裏側をぴったりと密着させ、エドの手がそのまま上下にスライドしていました。派手に動いて欲望が手から離れないようにとその動きはやや緩慢な印象がありましたが、エドの指先がアルの先端の敏感な部分を絶妙な加減で掠めていくのでアルは溜まらず切羽詰まった声を上げてしまったのでした。
「ああ、やめて、イク、兄さんにいさんっ!」
「アル、コレなんて言うのか知っているか?」
「知らないっ! もう出ちゃうよぉっ! ああっ、出る、出る!」
「こうやって互いのナニを合わせて一緒に扱く事を……うう、俺ももうそろそろ……こいつの事を『兜合わせ』というらしいのだ。ナニを裏側から見た形が兜に似ているからというのがその語源だが……うおお、ダメだ、俺も限界っ……」
欲望からの力強い脈動を感じたエドは指先に僅かに力を込めながら最後のスライドを二つの欲望に与えました。
「あああーっ!」
先にアルが達して、それからエドもその後を追うようにたくましく割れた腹筋をひくつかせながら果てました。エドの手もアルの欲望も二人の吐き出した精にまみれて白く汚れています。アルはひとしきり快楽を味わった後でそれをぼんやりと見つめながらまたエドに尋ねたのでした。
「……ねえ、あともう一つの『お餅を食べる』っていうのは……?」
同じように快感の波が引いて落ち着いたエドがまたまたにんまりとしながら口を開きかけました。その様子にアルは兄の口から吐き出される言葉がなんとなく予想出来た気がして、兄の口元を掌で押さえると諦めきった声で呟いたのでした。
「多分、ボクがお餅役なんだよね……」
アルの予想通り、エドはその後でアルのたっぷりと白く柔らかな肌を堪能したのでした。
(おわり)

他にも菖蒲の葉でソフトSMタッチにおしおきとかも描けたかもしれない……それからアルのお尻にはキスマークならぬ歯形はおそらくついてしまったことでしょう(アホですな)。
このお話の下書きを書いてからいろいろと検索して調べていたら『兜合わせ』が引っ掛かって自分的に爆笑しました。 


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