兄さんも弟も無事に体を取り戻した後のお話。
体は攻めで気持ち受けな変態兄さんです。
それ以前に設定がちょっとグロいかもしれないので御注意ください。

午後3時、その病室を訪れたのは俺だけだった。
病室というよりはちょっとしたアパートの一室。室内を衛生的に保つ為にリノリウム張りの床と薄いクリーム色の壁に囲まれている以外はバスルームがあり、簡単な煮炊きなら出来るキッチンまでついているのだからこれは最早病室ではないと俺は思っている。
そう、病室ではなくて俺たちの為のスウィートルームだ。個室使用料1日5万センズなり。
一般庶民には目玉の飛び出る値段でも、国家資格を持つ俺には大した額じゃない。そもそも俺は服だって食うものだってそう贅沢をしている訳ではないから、国から支給されている研究費はいつだって持て余し気味なんだ。
それを使う格好の機会が、今という訳だ。

病室に足を踏み入れると、明るく大きな窓際にぽつんとベッドが置かれている。
そこに寝かされているのは、数年の時を経て、ようやく自分の身体を取り戻す事の出来たアル、俺のたった一人の家族、そして弟だった。

アルの肉体をこちら側に取り戻し、そして魂を定着させてからもう3ヶ月。
魂定着の際のショックからか、置き去られた肉体が想像以上に衰弱していたからなのか、アルはもうずっと昏睡状態から脱する事が出来ずにいた。
…正確に言えば、半覚醒状態というべきか。
食事は流動食なら取る事が出来るし、呼吸も自発呼吸で生命を維持することは十分に出来ていたのだが、ただ、意識だけが戻らなかった。
ときおり開かれる瞳は昔のように俺と同じ色で、宝石みたいに丸くて奇麗で、けれど、俺を見ているのかすら分からずに、ただ、空を見つめていた。
そんな状態の弟を故郷に連れて帰る訳にも行かなかったので、俺はアルが意識を取り戻し、普通の生活を送れるようになるまではこの設備の充実した、セントラルの軍付属病院にとどまる決意をしたのだった。
入院してから何度かの検査を重ね、分かった事は、アルの肉体はあの日から成長をしていないという事と、栄養失調から来る衰弱以外には内臓や脳などの臓器には異常がないという事だった。
ただ、魂と肉体を結びつけているなにかがうまく機能せず、例えるならば覗き窓のない鎧の中に閉じ込められてしまっている状態なのだと思う。
あの固く冷たく重い鎧でさえ器用に動かしたアルなのに、本来の自分の肉体を操る手段を失ったしまうなど、俺も、おそらくはアル自身でさえ想像だにしていなかったに違いなかった。

「…よお。気分はどうだ?」
俺の挨拶に、眠ったままのアルはもちろん答えはしない。
最上階の最上級の個室には時折部屋の前を通りかかる機材ワゴンの車輪の音しかもっぱら聞こえない。
特に生命に差し迫った危機が訪れているわけでもないアルの元へは、午前中に回診に来る主治医と看護婦が訪ねるのみで、絶対安静時間を過ぎた午後の今頃からは唯一の身内である俺くらいしか、病室を訪ねる者はいない。
時々軍部の奴らが顔を見せる事もあったが、ここんとこ訓練だ報告書の提出だとみな騒いでいたから今日もきっとこの病室には俺とアルだけなんだろう。
けれど、それはそれで俺に取っては都合のいい事だった。

俺は白いシーツの上に寝かされているアルの傍に立つと、白い頬にそうっと触れた。
アルは何事もなかったかのように目を閉じて、しずかに息を吐き出し、そして吸う。
うすっぺらい胸板が凝視でもしなければ気がつかない程にわずかに上下して、アルが生きている人間だという事を実感させた。
流動食と高カロリーの点滴のお陰で、アルは発見されたばかりの頃のようなひどい栄養失調状態からは解放され、身体も少しずつだったがかつて元気だった頃の様相に近づいて来ていた。
白い頬は触れれば柔かく、そして暖かく、俺を安堵させる。
おおい、起きろよ?もう昼なんだぜと声をかけたところでアルは目を覚ます気配などないけれど、生きていてさえすれば、この先どんな風にも状況を変える事は出来ると妙な自信だけは持っていたからこの状況を悲観する事など俺はこれっぽっちも持ち合わせていなかったのだった。

からからから、と、通り過ぎるワゴンの音。
それがすっかり過ぎてから、俺はおもむろにアルの身体を覆っている毛布を奴の身体からはぎ取ると、その下にあった痩せて小さな身体を外気に晒した。
アルは病院指定の薄い水色の寝間着を身につけていた。
裾からすんなりと伸びている腕は両腕とも点滴を入れる為の血管が確保され、それもずいぶんと長い間そうされているものだからあちこちの血管から薬液や血液が漏れ出し、紫色の痣が浮き出している。
流石にその光景は痛々しくて、俺はほんの少しそれから目を背けると、次に身体を折って顔をアルの腕のところまで近づけて囁いたんだ。
「…痛いか?可哀想になあ…真っ白い肌が台無しだぜ…俺が治してやるからな」
自分の舌先を伸ばして、アルの腕の痣を舐め上げた。
痣のふちをなぞるように舌先を動かし、痣全体をマッサージするように舐めてやる。
俺の体温と舌先のぬめりでアルの肌はほんのりと赤みが差し、痣の色が薄まった錯覚を覚えた。
俺はアルの両腕にいくつもついている痣の全てにそうして舌先でマッサージを施した。
開けっ放しの口から図らずも唾液がしたたり、それがどこか淫らな感覚を呼び起こさせる。
「んっ…アル…どう、だ…?治ってきた気がするだろ?」
ちゅる、くちゅ、ずる…アルの腕を舐め上げながら、俺の手は自分のズボンのバックルを掴んでそれを外し出していた。
「アル…アル、なあ、気持ちいいだろ…?俺も…」
なかなか外れないバックルにもどかしい思いをしながらも、ようやくそれを外すと、今度はズボンのファスナーを下ろし、下穿きの裾の部分から自分のペニスを取り出して、皮からほんの少し顔を覗かせた先端をつまむように刺激する。
「くっ…アル…つあっ…ん、んんっ…」
舌でアルの腕を舐め回すうちに、すっかり興奮してしまった俺は、とうとう下穿きまでもひきずり下ろしてすっかり下半身を丸出しにしてアルの横たわっているベッドの上に飛び乗ると、奴の腹の上を跨ぐようにして馬乗りになった。
床ずれを防ぐ為に通常のものよりも上等な柔らかいマットレスに苦労しながら膝立ちになると、俺はすっかり興奮して固くなったペニスを元に戻った右手で握りながら、そして左手ではアルの寝間着の前の合わせを解き、痩せてへこんだ腹を晒してやったのだった。
白く細い腹回り、その中心にはつつましやかに顔を見せる形のいい臍がある。
ばっちゃんの後始末がよかったお陰で、俺もアルも同じように奇麗な形をしている。でも、やっぱり自分のよりは、アルの方が奇麗だと思う。
俺のがちがちに固い腹よりも、あまり筋肉のついていない、柔らかなアルの腹の方が俺は好きなんだ。
そんな愛すべき場所へ、俺は握りしめていたペニスの裏側を擦り付けるように腰を落として前後に動かし出した。
もはやペニスの先割れからは我慢しきれず雫が滴り、アルの腹をとろりと濡らす。そのぬめりを塗り広げるように先端を押し付けながら動かしたら、あまりに気持ちがよかったから、俺は自分でもイヤになるくらい情けない声を出しちまったんだ。
「あっ!アルぅ…な、いっかい…いっかい、イッてもいいかな?ほら、ここ2日ばかり客が来ててしてないから溜まっちまってさ…いいだろ?俺もう我慢できねえよ…」
俺は上体を眠り続けているアルの顔の方に折り曲げてそう囁く。それから俺はアルの顔を見るんだけど、俺がイッてもいい時は、アルは俺に向かって微笑んでくれる。
他人が見ればそれは笑っているんじゃなくてただ顔面の筋肉が不随意運動を起こしているだけだと言うけど、俺にはちゃんと笑いかけてくれてるって分かるんだ。
俺がなにかしでかしたとき。何かをしようとするとき。
ああしかたないなあ、にいさんてばって、アルはちょっと呆れたように、でも優しすぎる笑顔を見せてくれるんだ。
そして今回も、アルは優しく俺に向かって笑いかけてくれた。
アルの許しを得た俺は、誕生日のプレゼントをもらった子供のように喜びながらアルの腹にペニスを擦り付け始める。
はちきれんばかりに充血したペニスはびちびちと陸に上がった魚のようにアルの腹の上で跳ねながら先走りの汁をまき散らしている。
「あーっ!アルぅ、イイよぉ…すぐ出ちまう…いいよな?おま…お前の腹でイッても…いいよな?」
 いいよ、にいさん。ぜんぶだしちゃいなよ。
アルの脇腹に両手を添えて、俺は気が違ったかのように腰をアルの腹に擦り付けて、それからイッた。
丸2日間、軍部のやつと、生まれ故郷からの見舞客のせいで俺はアルと「でき」なかったから、溜まりに堪った精液が勢い余ってアルの喉元まで飛び散った。その後もどろりとしたやつが何度か吹き出て、泣きそうによくて、またきちがいのように腰を動かしながらアルの唇を自分の唇で何度も何度も吸った。
「アル、アル…あー…すっげ…よかったあ…」
徐々に身体を包み込む倦怠感に、俺はアルの身体を押しつぶさないように両手をつっぱらかすと天井を見上げた。

俺がアルとこういう風になったのは、今から1月ほど前のことだった。
アルの身体がこちら側に戻ってからというものの、それまで留まっていたもの、我慢していたもの、それらが一斉に噴出するように俺の身体の中から姿を見せた。
そりゃそうだ。それまでアルの身体と自分の身体、2人分の負荷を背負ってたのがアルの分からは解放されたんだから、余分なところに力が向かうってもんだろう。
アルの看病を続けていたある日の事。
こんこんと眠り続けるアルの身体を拭いてやってる時だった。
そのころは、国家資格の更新と、世話になったばっちゃんやあちらこちらにアルの容態が安定した事を報告に回っていた頃で、さしもの俺も疲れ果てていた。
それでもアルの世話はしてやりたい。
ぼんやりとしながらも細く白い身体を拭き清めてやっている最中に、アルのまだ育ちきってないナニが目についた。
本当なら、俺と大して違いない年頃なんだから、こんななまっちろくて皮かむりなナニじゃないはずなんだけどな。
俺は自分のペニスに指を這わせて、自身のその形を確認するようになぞり上げた。
初めて自分の手でしたのは、アルの身体を取り戻す少し前。
ありえねえなんて笑うな!こちとら生きるか死ぬかギリギリのところで勝負張ってたからそういうとこまで気も体力も向かわない。
ようやくこの頃むき出しになった先端に触れても痛くなくなったところだった。
「なあ、お前はいつになったらこんな風になるんだろうな?」
自然と握る手のひらにどくどくと触れる血流。
なあ、いいのかな?俺ばかりこんな事をして。
敏感な先端に図らずも触れて、いつしか、俺はペニスを固く握りしめて前後に扱き出していた。
「あっ…あ…んっ…ごめ…ごめ、ん…アル…俺だけ…」
アルの寝ているベッドの脇に膝立ちになり、俺は夢中で行き着くべき場所を目指す。
不自然な体勢のせいか、もう達きそうなのか、内股が引き攣れて身体がぐらつく。思わず伸ばした手がアルのひんやりとした指先に触れて、はっとしてアルの顔を見た。
重い瞼がわずかに開いて覗いたきんいろの瞳が俺を見ている。
だめじゃない、そんなことして…でもゆるしてあげる、にいさんずっとがまんしてたものね。
「あ…アル…いっ…イッて、いい…?」
うん。いいよ。にいさんのいくとこ、みたいな、ぼく。
声なんか聞こえやしない。でも俺の耳には確かに届いて、アルからの許しを得た俺は最後の高みにとうとう手を伸ばす。
「んあっ!アル、で…出る!は、あ…ああ出るでるっ…」
俺は伸ばした手の先でアルの手を握り、クリーム色のリノリウム張りの床の上に、白く濁った精液をまき散らした。
ペニスの先端からこぼれ落ちる精液を、荒い息をつきながらぼうっとした頭でそのまま見つめていた。

だからそれ以来、俺はアルがいいって言わないとこういう事をしない。
アルは優しいんだ。絶対ダメだって言わないから、俺はいつだってこうしていられる。
「アル、なあ、キスさせて…」
アルの上に覆い被さった俺は、奴の頬のくぼみに指を添えてキスをする。
舌をアルの口の中にねじ込むと、俺の舌を食い物と勘違いしてアルの舌が
わずかに反応した。
にいさんてば、キスへただよね。
「仕方ねえだろ…お前としか、した事ねえもん」
ならばと更に念を入れたキスをしているうちに、また下半身の事情があやしい動きを見せ始めて、再び俺はペニスを握り締めると今度はそいつをアルの顔の上に持っていき、扱き始める。
自分で出した精液やらなにやらでねとついた先端をアルの唇に押し付けた。
かすかに開いた唇の間に先端をねじ込むようにしたら、乾き気味の唇の皮と敏感な
粘膜が触れ合って気が狂いそうだ。
ああ、もう我慢なんてしている場合じゃない。
俺はアルの頬を指で押し、口を開かせるとそこにペニスを押し込んだ。
飛び出る舌、濡れた口蓋。感じる熱はアルの体温。
なあ、俺を食ってくれ。俺から生きている証を吸い尽くしてくれ。
かつてお前がそうやって扉の向こうで生を繋いだ時と同じように。
自分の手でサオを扱きながら、アルの口の中に赤い先端をねじり込む。
「はっ…あっ…あ、ル…歯があたって、きもち…いいよぉ」
ああ、本当に食われてるみたい。ヤバい、気持ちよすぎて訳が分からなくなりそうだ。
にいさんだしちゃいなよ?ボク、ぜんぶのんであげる…。
薄く開いた瞼の奥から、アルがそう囁いた。
「あっ、だ、出すぞ!アル!お前の口ン中にっ…つっ…つああああああ!」
痛みにも似た鋭い感覚が頭の先まで突き抜けると同時に始まった射精に、俺はここが病室だという事もすっかり忘れて声を上げ、ペニスをアルの口内に押し付けた。
狭い通り道から勢いよく出た精液は、俺がアルの口元に腰を押し付ける度にその行き先を変えて、アルの口の中に、赤い唇に、頬に、瞼に飛び散る。
やがて数度の噴出が収まった時、くらくらと目眩のする頭でアルを見た。
…ゆっくりと、俺の精液を飲み込もうとするその舌の動きに、俺はまた達っちまった。
「くあ…はーっ…はああ…あ…はぁ…」
射精なしに乾いた快感だけが体中に広がって、その波がすっかり引くまで、アルの身体に自分をぴったりと密着させていた。
「アルぅ…ごめんなぁ…俺ばっかイッちまって…でも…お前が俺のを飲んでくれるの、嬉しくて…」
全てがすっかり終わった後に、まるで言い訳のように俺はアルの顔に散った精液を拭ってやりながらそう呟く。
自分の身支度を素早く整えてから今度はアルの身体を拭いてやり、それからは何事もなかったかのようにアルのベッドの脇の丸椅子に腰を下ろして時間を過ごした。
夕食の時間になって、俺の顔をすっかり覚えた食事を運んでくる看護士に愛想を振りまきながらアルに食事をさせてやる。
俺の精液と同じように、流動食をゆっくりと飲み込むその舌に、俺はまたひどく欲情を催して、でも寸での所で思い留まり、俺もやがて病院を後にした。
「毎日大変だわね。早く弟さんが元気になるように私も祈っているわ」
帰りがけに、病院の職員にまでそう声を掛けられた。
「ありがとう。でもきっともう少しだと思うよ。だって食事だって取れるし、たまに笑うんだ!」
そう返事をするけれど、俺の本心はちっともそんな事を思っちゃいない。
俺だけを頼って、俺だけを喰ってくれよ。
誰も見るな、俺を見ろ。
今のままでいてくれ。このままずっと。
いいよにいさん、ずっとこのまま。
自分の背後からそう声が聞こえた気がして、俺は思わず後にした病院を振り向き様に見遣った。
アルの病室からは灯りも消え、何も見えない。
「……ひっでえ話…とうとう気が違ってきちまったってか…」
俺はとたんに可笑しくなって、一人そう呟きながら宿へと戻って行った。
明日の予定を立てながら。
またあの時間に、アルの許しを得る為に。


兄さんは果たして攻める方なのか、受けなのか…ただひとつ、Mなのは確実…。
そんな訳で、体は攻めで気持ち受けな変態兄さんのお話でした。

一応、続きも考えていたりして。  


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