時間もあるし、部屋の片づけをしよう。  もともと私物は少ないので余り手間はかからない。 士郎01 「しかしなぁ……」   士郎02 『不思議なコトにモノは日々増殖していく。  それこそ、目を離すと子供を産む兎のように。』 士郎03 「……兎だっけ、鼠だっけ、とにかく」   士郎04 「ま、軽く掃除機をかけよう」 士郎05 『しかし一度掃除機を用意すると、自然と隣や他の部屋も掃除したくなり、結局母屋すべてをやらないと満足できなくなる。  ……息抜きの掃除なのだ。適当なところで切り上げるよう気をつけていこう。  ごろごろと掃除機を従えて歩く。  ああ、モノが増える、いや増やす元凶発見。  今日もまた何を持ってきたのかと思えば』 藤村06 「ありゃ? 士郎、何してるの?」 士郎07 「掃除しようと思って」 藤村08 「了解、じゃあ後のことはよろしく」 士郎09 「ちょいと待て」 士郎10 『俺の部屋にガラクタを、ダンボール単位で置いて逃げるな。』 士郎11 「それはなんだ、藤ねえ」 藤村12 「え? だってほら、士郎が冬眠するときに必要かなーと思って」 士郎13 『ふふふ、ワタクシはそんな器用なコトが出来る生物ではありません。  あと、ガラクタは冬眠において何の役にも立ちません。』 士郎14 「……藤ねえ。この部屋は俺のねぐらであって、ビーバーのダムか何かじゃない。……いや、むしろカラスの巣の方が的確か」 藤村15 「むう、言われて見ればそっくりね。  けど士郎、最近のカラスはバカにできないわよ? バイタリティ溢れるワイルドぶりで、洗濯物のハンガーでも巣を作るんだから」 士郎16 『へえ。ハンガーで巣を作るなんて、まるでパズルだ。  カラスは賢いと言うが、連中の順応力はたいしたものである。』 士郎17 「まあ、それはともかく」 士郎18  『俺の部屋は物置ではない。  庭の土蔵すら藤ねえの手によって物置と化しているのだ。こんな所まで藤ねえの私物置き場にされてたまるものか。巣作りは自分の家でやってほしいのだが……。』 士郎19 「……む。もしや俺の部屋で冬眠する気か藤ねえ」 藤村20 「うん? 虎って冬眠したっけ?」 士郎21 「熊は冬眠するけども……どうかな、しない気がする」 士郎22  『虎が冬眠するのなら、藤ねえも冬眠する気だったんだろうか?  ……まあ、この人なら真似事ぐらいは平気でやりそうだが。』 藤村23 「いいよねぇ、冬眠できる動物は。冬の間ずーっと穴蔵で寝ていればいいんだから、ちょっと憧れてみたり」 士郎24 「冬眠って……秋にはたくさん喰わないといけないし、春先はガリガリになるし」 藤村25 「それっていわゆる一つの、天高く馬肥ゆる秋に食欲の限りを尽くして、おまけに春先にはダイエットも達成ってこと!?」 士郎26  『すげえな。そういう考え方になるんだポジティブにシンキングする人って。』 藤村27 「ますますしたくなってきたわね、冬眠」 士郎28 「仕事どうするんだよ」 藤村29 「冬眠休暇制度は無いか」 士郎30  『冬休みに有給を使い切ってしまえばいい。  そしてコタツで法楽三昧。人それをダメ人間と言う。』 士郎31 「で、藤ねえ……それは柿のダンボールに見えるけど、どんなガラクタが入ってるんだ?」 藤村32 「え? 柿に決まってるじゃない、士郎」 士郎33 『ほう、そう来たか。じゃなくって。  本当に? 本当に柿?』 藤村34 「ここまで持ってくるのは大変だったわよー」 士郎35 「ご苦労様……で、何で俺の部屋に?」 藤村36 「台所が手狭だったから、適当に置き場所探してたのよ。でもほら、誰もいない所に置いて忘れられちゃうと勿体ないじゃない? なら士郎の部屋が丁度良いかなーって」 士郎37 「……はあ、そうですか。  けど藤ねえ、前は居間にどどーんと蜜柑とかスイカとか置いてたじゃないか」 藤村38 「そうなんだけどねー。最近はセイバーちゃんとか桜ちゃんとかいるし。散らかしちゃ悪いじゃない」 士郎39 「……実に素晴らしい心遣いですが、その思いやりがどうしてココには適用されないのか。 ええい」 士郎40 『掃除機を片隅にのけ、ダンボールを開く。  ……中につやつやの柿が整列している。』 藤村41 「士郎が冬眠するなら、やっぱり餌が要るかなーって」 士郎42 「いや、俺はしないから……またこれ藤村組のお裾分けなのか?」 藤村43 「そうそう、もうウチにどどどーん!って」 士郎44 『そう言うからにはかなりの量が来たんだろう。  どうしたものか、シーズン毎に青果市場の出先か?と思うほどに果物が届く。  雷画じーさん曰く付き合いの必需品らしいのだが。』 藤村45 「あれくらいあるんなら、軒先で干し柿にしようかってほど」 士郎46 「干し柿は渋柿だぞ、それを生で送りつけるのはどんな嫌がらせだ……はぁ」 士郎47 『とりあえず二箱分、柿がある。  一個手に取ってみると結構熟して柔らかい。』 士郎48 「これ、早々に喰いきらないとまずいな」 藤村49 「でしょでしょ!?  もうあっちは朝に柿、昼に柿、夜に柿の、柿の大盤振舞でさあ。士郎にもこの秋の風情をお裾分けしてあげたーい!という暖かいお姉ちゃんの配慮なワケ」 士郎50 『余り物を押しつけた、と言わないか、それは。  しかしモノとしては悪くない、というか良い柿なんだよなこれ』 士郎51 「もったいないなぁ、このまま傷むのは」 藤村52 「大丈夫じゃないの? みんなで手分けすればあっという間に無くなるわよー」 士郎53 「蜜柑でもノルマがあったけど、今度は柿か……桃と梨は早く無くなったんだけどな」 士郎54 『我が家を巡っていった果物たちを思い出す。  半年前に比べれば消費者も多いので早く無くなるだろう。』 藤村55 「これから蜜柑とリンゴが待ちかまえてるのにねぇ……セイバーちゃんならたくさん食べそうだし」 士郎56 「……リンゴと柿は料理に使えるから何とかなるかな……とにかくこれ、別の場所に持ってくぞ」 藤村57 「一箱くらい士郎の冬眠用……」 士郎58 「そんなにたくさん要らないってば、ほら藤ねえも」 藤村59 「わかったわよー、よっこらしょー」