■WiSH ~鬼姫物語~(前編) ■概略 その日、依頼の無かった倖崎キララ・キサラと槇本康之は、少し変わった喫茶店に入る。 其処は、其理頗探偵事務所の表の顔「其理頗亭」で…。 ■登場人物 倖崎キララ (CV:そがみ) 倖崎キサラ (CV:氷月蒐) 槇本康之 (CV:如月航二) 八月晦日颯太 (CV:黄瀬ハル) 桜依みこと (CV:さくらひづき) 橋本さん (CV:香柳慎) 武藤一真 (CV:雪白ゆり) ■商店街 SE:足音3つ SE:ガヤ(活気溢れる商店街?) 康之「ん、あぁ〜〜!(伸び)今日は依頼無しかぁ…なんや、つまらんなぁ!」 キサラ「そういうことは、充分な戦力になってから言ってくれる?」 康之「キサラにぃさん、それは言うたらあきませんて…」 キララ「まぁまぁ。やすちゃんだって最近は慣れてきたからか、頑張ってるみたいだし?大目に見てあげましょv」 キサラ「と言うか…どうして一緒に帰ってるの?」 キララ「あら、方向が一緒なんだからいいじゃない。」 康之「せやせや、キララはんの言うとおりやってー…って、お?」 SE:足音止まる キサラ「何?急に立ち止まらないでくれる?」 キララ「どうしたの、やすちゃん?」 康之「いや…この一本向こうの道って、どないなってんやろ〜って思って…」 キララ「ああ、裏路地の方ね。其処にもお店は有るみたいよ?なんでも、一風変わったお店とかが多くて、一般の人はあまり入らないみたいだけど…。」 康之「…な、時間あることやし、ちょっと探検してみません?」 キララ「探検?ん…そうねぇ、どうしようかしら…」 キサラ「僕は帰…」 康之「(上のキサラと被り)ほな行きましょう!ほぉら、キサラにぃさんも早よぉ!」 SE:足音 キララ「…あは。キサラ、運が悪かったと思って諦めましょ。」 キサラ「…だから一緒に帰るのなんて嫌だったんだ。」 ■タイトルコール 康之「逢学妖研活動記 WiSH~鬼姫物語~ 前編」 ■裏通り 康之「はー…表と違ぉて静かやなぁ」 キララ「そりゃ、裏路地ですものねぇ」 キサラ「兄弟、思ってるより楽しんでない?」 キララ「あら、こういうミステリアスなところ、結構好きよ?」 キサラ「…じゃあ、あとは二人で行けば?僕は帰…」 康之「(上のキサラと被り)おお、これは…!もんのすごいツタまみれの店やな…!」 キララ「なぁに?…ん?看板が出てるわね。…見たところ喫茶店、かしらね?」 康之「へー!こないなとこに喫茶店かぁ!どれどれ、む、看板読めへんな…当て字か?」 キララ「どれどれ?うーん…あら?どこかで見たことあるようなお店の名前ね…」 キサラ「兄弟、来たことあるの?」 キララ「いいえ。でも、どこかで見たことあると思うんだけど…」 康之「基礎の「き」に、理由の「り」…んでもって…最後、これなんて読むんやろ?」 SE:お腹の鳴る音(大) 康之「あ、あははっ…丁度小腹も空いてきたし…折角だから、中に入りません?」 キサラ「今の音、小腹程度の音なの?」 キララ「まぁまぁ…」 キサラ「って言うか、僕もう帰」 SE:ドア+ドアベルの音 康之「こんちゃー」 キサラ「……(怒)」 キララ「まぁまぁ、諦めなさいな。アタシたちも行きましょう。」 橋本さん「いらっしゃいませ。」 康之「はー…!すっご…なんやええ雰囲気の店やなぁ…!」 橋本さん「ハハ…それはそれは…有難う御座います。さ、お好きな席へどうぞ。」 キララ「ね、あの奥のテーブル席なんかどうかしら?」 康之「そうしましょか!あ、おっちゃん!とりあえずコーヒー3つで!」 橋本さん「はい、承りました。ごゆっくりどうぞ。」 SE:足音 SE:椅子の音 キララ「へぇ…本当にしゃれたお店ね…隠れた名店って感じ?あら、あそこ、ピアノが置いて有るわ。」 キサラ「本当だね。誰かピアニストとか呼んで演奏でもしてもらってるんじゃない?」 康之「ピアノはええけどー…こないしゃれた店で、エラい別嬪(べっぴん)な子が注文取りに来てくれたら、もーっと嬉しいんやけどなぁ」 SE:足音 康之「おっ来た来た!」 みこと「いらっしゃいませ、こちらコーヒーが3点で宜しかっ…?」 三人(康之・キララ・キサラ)「あ。」 みこと「貴方達…確か逢学の…」 キララ「そういう貴方は、其理頗探偵所の…桜依みことさん…でしたっけね?」 康之「アッカ〜ン…ビミョ〜に合ってるような合ってないようなフクザツな心境や〜」 みこと「何が?」 キララ「いいのいいの、気にしないで。」 みこと「そう?」 キサラ「でも、なんで君が此処で働いてるの?探偵事務所は?」 みこと「え?何言って…あー…そっかー…貴方達はこっちを知らないのね。」 キララ「こっちって?」 みこと「ここは"其理頗亭"。其理頗探偵所の、表の姿って言うべきかな?」 康之「な、なんやて?!此処が、あの陰険にへにへ探偵の店やって…?!」 キララ「ああ、道理で見たことの有るお店の名前だと思ったわ。」 みこと「探偵所へは裏の階段からしかいけないようになってるからね。表の方を知らなくても不思議じゃないわ。」 キサラ「…それで、彼(ヤス/呼称が出来たらそれで)の言う、陰険にへにへ探偵は?」 みこと「あはは、その呼び方、バレないようにしなよ〜?で、颯太なら…もうじき出てくるわよ。…ホラ。」 SE:足音 SE:まばらな拍手 康之「わ…おっどろいた…感じが全然ちゃうやん。頭に巻いとった布とかしてへんし。めっちゃ普通の恰好やし。」 キサラ「それにしても…あれ、グランドピアノだよね?あれを、彼が弾くの?」 みこと「そうよ。」 SE:椅子の音 BGM:おんたま様の「雨水」or「大切な約束」イメージ的にはしっとり系のピアノ曲。(数曲メドレる?) キララ「素敵な曲ね…」 キサラ「ホント。あの探偵も、探偵所で見た感じとは全然違うね。」 康之「ぬぬぅ…負けられへん…わ、ワイの歌を(聞け!と言い掛けて)」 キララ「はいはい、やすちゃんストーップ。ね?」 みこと「…ホント、仲が良いのね」 キサラ「どこが?」 キララ「あら?アタシ達は仲良しよねぇ?」 みこと「あっはは…うん、なんだか懐かしい感じ…こんな賑やかな雰囲気、凄く久し振り。」 康之「……なぁ、みことねェさん?」 みこと「何?」 康之「何やろ、な〜んか不自然やで、その笑顔」 みこと「……え?」 キサラ「急に何言い出すの?…ほら、彼女、困ってるじゃないか。」 康之「そやかて、そう見えるんやからしゃーないやん!…せや、なんやったら話してみー!スッキリするかもしれんで?」 キララ「やーすちゃん。みことさんにだって色々あるんじゃないの?」 みこと「………。」 康之「こーんなしょぼくれ顔されたら気にするな言うほうが無理っちゅーもんやろ!ほれほれ〜、吐いたらスッキリするんちゃいますか〜?」 キサラ「それじゃあ犯罪者じゃないか。」 みこと「…………はあ(溜息)…わかった、わかったわ。」 SE:椅子に腰掛ける。 みこと「…今からちょっとした話をするけど…出来れば、他言無用でお願いできる?」 康之「え?」 みこと「約束、出来る?」 キララ「…ええ、いいわよ。」 キサラ「他言するなと言うなら、しないよ。」 康之「ま、まぁ…構へんけど。」 みこと「ありがとう。…そうね、貴方達は、鬼というものは知ってるわよね?」 康之「鬼?鬼言うたら、春暁がそうなんちゃう?」 みこと「あれは人から派生した鬼でしょう?…それとはまた別に、鬼には、超自然的な存在…山霊や山神の一種とされる、古来より人々にとって「見えざるもの・神聖なもの」の意で呼ばれていた「隠(オン)」という存在がいるの。」 キララ「ええ。そういう存在のことは、文献で読んだりしたことは有るわ。」 みこと「この鬼は、人間派生の鬼よりも延命であり、尚且つ強大な力が有るとされてた。ま、近年の都市化の影響で、自然が減って、存在していくのにツライご時勢では有るけれど。」 キサラ「ふぅん…それで、その鬼が何だって言うの?」 みこと「…貴方達の部員にも、人間派生とはいえ、鬼がいるわけでしょう?なら、その長い命がどういったことをもたらすのかは分かる?」 康之「えぇ?ん〜…長生きは、そりゃ凄いな思うけど…う〜ん…」 キララ「人より長く生きる鬼は、命の短い人間に先立たれてしまう…ってとこかしら?」 みこと「正解!…そう、鬼は、余程の事が無い限り人間の死を見続けることになる。それがとてもツライと言う事は…なんとなく想像が付くと思うけど、どう?」 康之「あー…そら厳しいな…親兄弟や大事な人に死なれても、自分はなかなか死ねへんのやろ?そら殺生やで。」 みこと「けれど、人と関わらなければ、生きていくことは出来ない。」 キサラ「…どういうこと?」 みこと「さっきも言ったけど、都市化の影響で力が減り、人間と共存しなければならない時代になってしまった。だけど、人と関わることが増えた分、どうしても関わった人に先立たれてしまうことが多くなった。」 キララ「そうでしょうね…それが自然な成り行きだわ。」 みこと「鬼だって、感情が無いわけじゃないわ。むしろ、人と関わることによって、魂に感情と言うものが生まれ、育ち…人と同じように喜怒哀楽を持つようになってしまった…。そして、感情を与えてくれた人は次々に死んでいく。」 一呼吸置く感じで一拍開け。 みこと「それがどれほどにツラいか…何度もそれを繰り返すうちに、鬼はある術を生み出す。それが…記憶置換術。」 康之「記憶、置換って?」 キララ「読んで字の如く、記憶の置き換えね。この場合、延命による外見の変化の無さなどへの疑問の打消しとかだと思うけど。     でも、最大の理由としては、鬼である人物の記憶を消して、別の記憶に置き換えることで、その人との関わりを断つのが目的じゃないかしら?」 キサラ「どうしてそんなことを?」 キララ「その方がまだ割り切れるんじゃないかしら?自分は死ねない。なら、生きているうちに、その人間の中から自分を消して、なかったことにすれば、自分の傷も浅く済むってとこかしらね?」 みこと「そうね。そのままその通りって言っても過言じゃないね。そうして鬼は、人と関わり、自分から関わりを断って生きていく道を選んだの。だけど…」 康之「だけど…なんです?」 みこと「あはは…不思議よね…記憶は消せるのに…人の躯(カラダ)に刻まれた記憶はどうしても消せない…。」 キサラ「え…?」 康之「ちょ、ねぇさん…泣いてんのとちゃう?」 みこと「馬鹿ね、馬鹿よ…あの日々が楽しくて仕方が無くて……だけど…、だから!!」 キララ「お、落ち着いて、ね?」 みこと「小泉君にも、一真君にも傍に居てほしかった…でも、でも私は…私は…!!!」 BGM:ピタリと止む。 SE:足音 キララ「…あなた(呼称変更可能)…」 颯太「みこと。」 みこと「……(嗚咽)」 颯太「…しょーがないねェ、まったく。橋本サン。」 橋本さん「はい…わかっております、颯太さん。…さ、みことさん、行きましょう。」 SE:歩く音 康之「あの…ねぇさん、どないしたんですか?あない取り乱して。」 キララ「…彼女自身が、話していたその"鬼"で有る、と言うことでしょう?」 キサラ・康之「え。」 キサラ「でも兄弟。僕は、彼女のこと見えてるんだよ?妖怪とかの類だったら、見えな…あ。」 キララ「彼女が言ってたでしょ?人と共存しなければならなくなったって。と言うことは、人間として生きなければならなくなった…ってことでしょ?違うかしら?」 颯太「…お察しの通り。アレはヒトじゃ御座いやせん。世間で言う、鬼と呼ばれるもので御座いやす。」 康之「…せやけど…さっぱり、チンプンカンプンや。どういうことか説明してくれへんか?」 颯太「アレは何度か、ヒトから記憶を消してやしてねェ。先の二人はアレにとって大事と言う部類の人間で御座いやした。」 キサラ「…自分にとって大事な人から、自分の存在を消すって…」 康之「そんなん…そんなんどっちもツライに決まってるやんか!」 颯太「……決めるのは、みことでやすから。」 康之「せ、せやかて!なんで気に入ってた子ぉから記憶を消すやなんて…そないなことせな…」 颯太「…それが、鬼の宿命(さだめ)で御座いやしょう。」 キララ「それが、宿命…?」 ■回想(エコー) みこと「何ヶ月も一緒にいた。だからこそ、これ以上情が湧く前に…私は、私が傷つかないために、貴方との時間を消す。大好きだから、断ち切るの。」 一真「冗、談じゃねぇよ!…ふざけんな…俺は、俺はまだアンタに言ってないことが…っ!」 みこと「さようなら。もう二度と、会わない事を願って…。」 SE:音 SE:雨の音 颯太「…夏の盛りだと言うのに、今日の雨は冷えやすねェ?」 みこと「…。」 颯太「……今からそんなんでどうすんでサ。いつか、あっしからも記憶を消さなきゃならねェだろうに。」 みこと「…ッ!!」 颯太「あっしは生活の場を提供してるだけ。あっしがおまいさんの、ヒトとしての生活を維持できなくなったら記憶を消す約束でやしょう?あっしだけじゃねェ…わかって」 みこと「わかってるわよ!!」 颯太「…なら、帰りやすよゥ。濡れるなァ好きじゃねェ。」 みこと「…わかってるわよ…」 ■喫茶店 康之「そんなん…そんなん寂し過ぎるわ…」 キサラ「…それで、君はどうするの?彼女のこと。」 颯太「…さァてね。」 キララ「他人があれこれ言って変えられるようなものじゃないのかもしれないけど、言わなきゃ変わらないこともあると思うわ。違うかしら?」 SE:雨の音 颯太「おや、雨が降ってきやしたね。…傘を貸しやすから、そろそろ帰りなせェ。体の芯まで冷え込まねェうちに…ね。」 続く