「……いたかった」
簡素な部屋は、ビクトリア戦を前にしてキラにあてがわれたものだった。だが今や、簡易寝台の主はとなっていた。
一方のキラは、ベッド脇にちょこんと座り、シーツにくるまったの髪を優しく撫でている。
「ごめん。加減……きかなくて」
「ううん……キラがいいなら、それでいい」
のそりと影が動いて、キラの手の甲にの手が重ねられる。見上げる視線は熱に浮かされたような、それでいてどこか幸せそうにも見えたことに、キラは内心ほっとしていた。
「でも……次は、もう少し、その。優しく……してね」
「分かった」
微笑んで頷くと、は今度こそ、落ち着いたように目を閉じる。そういえば時間を気にしていなかったが、明日は早い。
「それじゃ、おやすみ……」
「あ、待って」
「?」
ベッドを離れて寝る準備をしようとしたキラの指が軽く引っ張られる。の方を覗き込むようにすると、彼女はキラの手の中に何かを渡してきた。
「……?」
「お守り……戦場へ行く兵士に、これを渡す風習があるんだって」
「これ、が……お守り……?」
手の中の感触は驚くほど小さく、軽い。『お守り』の正体が何であるかキラは悟った。
再びに視線を落とす。彼女もこの『お守り』が恥ずかしいのだろう、顔を赤らめて目を伏せている。
「……その、ありがとう……」
『お守り』を握りしめ、キラはの額に唇を落とした。
「うん、おやすみ、キラ」
「おやすみ」
が寝入ったのを確認して、キラは着替えを始めた。
このお守りのお返しは、勝利と真実をもって、必ず。
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お題提供:
BLUE TEARS様