「やっぱりさ、かっこいいよね。アスランて」
「……ふん」
そう言うと途端にむくれてしまうシン。
「はああいうのがいいんだ」
「別にそういうわけじゃなくて、一般論を言ってるだけだよ」
「じゃあ、が変わり者ってことだろ!」
腕を組んでそっぽを向くシン。その仕草ひとつがたまらない。だからついつい、畳み掛けてしまう。
「だってさ、元評議会議長の一人息子で、金かけたコーディネイトの施された第二世代でしょ? エリート中のエリートだし」
嘘。
ホントはただの親の七光り。本人はてんで役立たずのお荷物。
「顔もいいしさ、目も綺麗なエメラルドグリーンだし。欠点って言ったら生え際が危ないってくらいだよね」
嘘。
コーディネイターの顔なんて、どれもみんな同じ。碧眼だって珍しくも何ともない。あんなの、プラントでは十把一絡げのうすらハゲ。
「声もいいよね〜。ちょっと落ち着いた感じに囁かれたら、女の子みんな落ちそう」
嘘。
いいのは声質だけ。男のくせにヒステリックな叫び声。シンの舌ったらずな甘い声の方がよっぽど素敵。
「あとはやっぱり性格? 女性に優しいのって、モテる条件っていうか」
嘘。嘘嘘嘘。
あいつが優しいのは、自分自身に対してだけ。外面だけ良くて、口ばっかりの最低男。
「それから……」
「もういい! そんなにアスランがいいならアスランと付き合えばいいだろっ!」
「でも私はシンが好き」
「……!」
「ごめんね? シンの拗ねた顔が可愛いから、ついつい意地悪言っちゃった」
「だって、が他の男ばっかり褒めるから」
「だからごめんってば! さっきのぜーんぶ嘘! シンが一番いい男!」
顔の前で両手を合わせてぺこりと頭を下げる。シンが戸惑った瞬間を狙って、私は彼の腕にするりとしがみついた。
そう、アスランへの褒め言葉なんて全部嘘っぱち。よくもまあ、あんなにペラペラと大嘘がこけるものだと我ながら嫌になってくる。ただちょっと、シンの拗ねた顔が見たかっただけなのに。
やがて顔を真っ赤にしたシンが、小さな小さな声で「……許す」と呟いた。
私は感謝の意を込めて、シンの真っ赤な頬に軽く唇を落とした。
ああ、照れたシンも、かーわいいなぁ。
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お題提供:
31D様