Novel

相手好みの服を着る

「じゃーん」
「……っ」
 目の前でひらひらと揺れるスカートに、シンは息を呑む。男にしては色白の肌にはさっと赤みが差している。
 久々のデートに気合を入れたが会心の笑みを浮かべた。

 シンは意外と、こういう女の子らしい服装を好むのだ。なので今日のは、動きやすさよりも見た目を重視したコーディネイトで決めてきた。
 下着無しでもバストラインを綺麗に見せるためにカップのついたワンピースに、編み上げのサンダル。ワンピースはホルターネックで首の後ろで結ぶようになっているため、背中は丸見えだ。下はロングスカートになっているが、回るとふわりと舞って膝上まで見える。
 ただしそのままだと露出が高くなり、シンのいらぬ嫉妬心を招いてしまうため、服の上には薄手のショールを羽織っていた。

 普段の軍装とは全く違う雰囲気。にっこり笑って「どう?」と聞くと、シンは顔を赤くしたままぶんぶんと首を縦に振ってみせる。
「凄く可愛い、その服」
「……服、だけ?」
 途端にの顔が引きつる。シンなりの照れ隠しだということはすぐに分かったが、それでもこう返さずにはいられないお約束すぎる答えだったのだ。

 案の定、彼はすぐに取り繕った否定の言葉を吐き出した。
「ち、違うって! が着てるから、その服が生きるんだよ! 似合ってる……凄く」
「ふふ、ありがと」
 微笑むに、シンは急にトーンを落として呟く。
「……それにどうせ後で脱がすし」
「何か言った?」
「別にっ……」
 不自然に顔をそらすシンをもう少し追求しながら、二人は並んで街へと歩き出した。

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お題提供:TOY