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第十二話-すべてを賭け-

 格納庫で両手を組んで、はただ祈ることしかできなかった。

「キラ……」
 呟きを誰に聞かれるか分からないのに、名前を呼ばずにいられない。誰より愛しいと思ったその人を。
 因果なものだ。最初はオーブ──自分の暮らす国の安全を第一に考えるべきだと思っていたのに、いつのまにか優先順位は逆転していた。大儀より先に恋愛感情が出てくるなんて、人間は意外と小さいのだと自嘲の感情すら湧いてくる。

 だが出撃前の最終調整で、の役目は終わったのだ。あとは、彼を信じて待つしかない。

 コズミック・イラ71年9月26日、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦──その戦端が落とされた。

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(待ってたんだ、この時を)

 CICのガイダンスに従い、ヒルコを発進させた後のキラは、戦場を一直線に進んでいた。
 プラントと連合の戦闘などどうでも良かった。この戦いは、『両者の殲滅戦を止める』などというまるでヒーローごっこのような介入行動は、単なる出来レースなのだ。
 フリーダム・ジャスティスに加えてエターナルまでもを奪われたザフトに対しては、ジェネシスを押さえるだけでいい。あとは連合の横っ面を叩いて適度に消耗させ、美味しいところだけをさらっていく。そういう筋書きが既にラクス・クラインの頭の中に描かれている。
 そしてそこにヒルコは存在しない。他の有志と同じように、使い潰すだけのただの駒としか思われていないのだ。かえって都合がいい。

 ニュートロンジャマーの利いていない場所を確認し、そちらへ向かっていく。既にジャスティスはジェネシス攻略に向かった。となれば、残るはフリーダムのみ。
(必ず殺してやる、キラ・ヤマト。必ずだ!)
 そう思うと、自然とキラの口元に歪んだ笑みが浮かんできた。

 程なくしてフリーダムは見つかった。
 同時に、ジェネシス防衛ラインに布陣するザフト部隊の中に、見慣れない一機のモビルスーツを発見する。
 フリーダムはそいつ──プロヴィデンスを戦闘を繰り広げていた。

「見・つ・けたぁぁぁぁ!!」
 意識せずキラは叫んでいた。標的を見つけて、その表情が歓喜に震える。
「フリーダム!!」
『なっ!?』
 呼ばれて、フリーダムが一瞬動きを止めた。てんで素人だ。イージスに乗っていた頃のアスランはコイツの何百倍も強かった。
 片方だけヤタノカガミ装甲の取り付けられた肩を突き出し、フリーダムに体当たりをかける。金色の光が飛び散り、左右の重さが違うために大幅に変えた機体バランスがこの一撃で意味をなさなくなった。
 だがそんなものは今のキラにはたいしたことではない。機体がアンバランスになったのなら、その状態をニュートラルだと認識して制御すれば済むことだ。
 二人を見送ったプロヴィデンスから一定の距離を離すと、スラスターを逆噴射させ、フリーダムからも離れる。向こうからは戸惑った様子が伺えた。
 構わずビームを浴びせてやる。逃げ惑うフリーダムに少し溜飲が下がった。だが楽しみは長くは続かなかった。

 通信回線が開き、ニュートロンジャマーキャンセラーのおかげでクリアな声がフリーダムから流れてきた。
『やめてください! ヒルコのパイロット、どうして……君もラクスの思いに賛同したから、僕たちに協りょ……』
 ラクスの思い? 今にしてみれば反吐が出る言葉だった。三隻同盟と呼ばれるテロリストまがいの集団に潜入することになったその時は、ただ都合のいい隠れ蓑だと思っていた。だが実際はもっとおぞましいものが隠れていたのだ。この集団の成り立ちと、背後に存在するバックアップ組織を調べれば調べるほど、それは顕著になっていった。
 そして彼女らの結成・蜂起がとんだ茶番だと知った。何のことは無い、シーゲル・クラインの時代から用意してあった武装組織と情報ネットワークを駆使して『戦乱を収める英雄』を演出し、世界を彼女一色に纏め上げようとする、いわばマッチポンプ。
 おそらく目の前のキラ・ヤマトの顔をした人形もそのために作られたのだろう。だからこいつを存在させておくことは許されない。誰が許しても自分だけは許さない。
「違うな! 僕はずっとこの時を待っていたんだよ、僕の……キラ・ヤマトの振りをしたお人形を消すチャンスを!」
『僕は、人形なんかじゃない!』
「どのツラ下げて抜かしてるんだよ! 電波教祖の言いなりが!」
『違う! ラクスは……僕は!』
「僕は、何だよ? 言いたいことがあるならはっきり喋れ!」
『僕は……それでも僕はっ!!』
「はっきり喋れって言ってるんだ!!」
『くっ……!』
 フリーダムは説得を諦めたのか、砲口をヒルコに向けた。ロックオンアラートが鳴ったのは一瞬だけで、すぐに僅かに急所を外されたことが分かる。
 なんて甘いのだろう。フリーダムのマルチロックオンには僅かなタイムラグがある。常に動き回っていれば、面制圧には程遠い単なる一斉射撃になどそうそう当たらない。
「当たるかっ!」
 ヒルコはフルバーストを軽々と回避する。フリーダムの性能自体は、未完成のヒルコなどはるかに及ばないものがあるが、奴の射撃能力は縁日の射的レベルだ。動いている的には当てられない。
(いや、そもそも僕をベースにしたからか?)
 キラはどちらかというと白兵戦の方に向いているという自覚があった。いや、もしかしたら射撃の才能もあるのかもしれないが、今まで努力することを知らなかった物臭な少年が僅かな時間で習得できるような技術ではないことは明白だ。

 フリーダムの動きは止まっていた。必殺の攻撃を外したことがそんなに予想外だったのだろうか?
 ざまあ見ろだ。その間抜けな姿に容赦なくビームライフルを撃ち込んでやる。オートでやっているから狙いも定まっていない、多分致命打には成りえないだろう。
 だが、モニターに示されたのは、目の前のフリーダムと、そしてヒルコが被弾したというインフォメーション。
「えっ!?」
 一瞬、混乱するも、理由はすぐに分かった。ここにはもう一人いるのだ。
「ラウ・ル・クルーゼかっ!」
『フフ……どうした、キラ君? 存分に殺し合いたまえよ。己の存在を賭けて』
 漆黒に浮かび上がる灰色。クルーゼのプロヴィデンスがおそらくは漁夫の利を狙ってドラグーンによる全方位攻撃を仕掛けてきたのだ。

「クソッ!」
 キラの顔に僅かに焦りの色が浮かんだ。二人同時に相手にするには、クルーゼの技量は高すぎる。
 オールレンジから襲い来るドラグーンの群れを、フリーダムを盾にすることでなんとかやり過ごす。やはり先に始末しておくべきはこちらの方か。
 一方のフリーダムは、ドラグーンから回避行動を取りながらヒルコへと向き直った。あちらも先にヒルコから倒そうと判断したのか、と思ったが、どうやら違ったらしい。
『どうして分からないんだ! ラクスの想いを!』
 なおも通信を入れてくる。ラクス・クラインの名を出せばきっと分かってくれる、との意図が丸分かりの稚拙な説得。だからこそ腹が立つ。
 仮にもキラ・ヤマトを名乗る人間が、あんな女の傀儡と化していることが。
「戦場で女の名前なんてなぁ!」
『な……何を!?』
「お前は黙っていろっ!!」
 ビームサーベルを抜き放ち、フリーダムの装甲を撫でるように振り抜く。牽制のつもりだったが、その一撃は象徴的なハイマットの青い羽を半分もぎ取った。
『うわぁああっ!!』
 オープンチャンネルで情けない叫び声を周囲に撒き散らし、フリーダムは沈黙した。
 直後、その様子を見物していたらしきクルーゼから、指向性回線を使って言葉がかけられる。
『流石だな、キラ君。やはり君がオリジナルなのかな? 私とは違って』
「あなたが何者かなんて、僕にはどうでもいい。邪魔をするなら容赦はしない!」
 憎々しげに放たれたクルーゼの言葉尻にこもる僅かな自嘲の感情。だがキラには問答をするつもりなど毛頭ない。先にコイツを片付けなければ、やられるのは自分だ。
 ヒルコを囲むように飛ぶドラグーン。だが、極限まで研ぎ澄まされたキラの感覚は、それら一つ一つの動きがまるで手に取るように知覚できた。
「やってやる……!」
 短く吐き出すと、再びビームの刃を出現させる。
 無作為に振り切られたかのように見えるその太刀筋は、正確にドラグーンの一つを捉え、真っ二つに切断していた。
『ほう?』
 通信が繋がっていたわけではない。聞こうとしていたわけでもない。だがその時キラは、確かにクルーゼが感嘆の息を漏らしたのを聞いた。
『惜しいな、たった一つの憎悪のみでそこまで登りつめる君を、同志として迎えられないのは』
「何がっ」
 ヒルコをなおも突進させる。接触回線が開けるほどにまで近づいてしまえば、ドラグーンでヒルコだけど狙うことも難しくなるだろう。だがその目論見は甘かった。
『君も嫌というほど見てきただろう? 人の愚かさという奴を! その才能を妬み、憎み、利用しようと隣人の顔をして近づいてくる!』
「くっ……だから滅べというのか?」
 ドラグーンは正確に、ヒルコのみを狙っていた。
 クルーゼの技量はザフトのトップクラスだ。しかもプラントのコーディネイターたちは、彼がアル・ダ・フラガのクローン──すなわち、遺伝子上はナチュラルであることを知らない。
 遺伝子の上に胡坐をかくプラントコーディネイターは、皮肉にも自分達を守っている人間の中に彼らが見下しているナチュラルがいることを知らないのだ。
 キラもコーディネイターとはいえ、一年前までただの学生だった少年と、死に物狂いで努力を重ねてきたであろうナチュラルのクローンとでは、実力の差は明らかだ。
 二、三度切り結ぶと、ヒルコのビームサーベルが軽くあしらわれる。まるで動きを先読みされているかのようだ。
『それが人の行く末だよ! これはもはや誰にも止められん!』
 何かに取り憑かれたかのようなクルーゼの言葉を聞きながら、キラは再び距離をはかった。何でもいい。突貫できるタイミングを。
「ならどうして、あなたは放っておいても滅ぶ人類などわざわざ滅ぼそうなんてする!?」
『私には権利がある! 世界に必要のない生命として作られた私には! むろん、世界からはじき出された君にも!』
「僕にはそんな必要はない!」
 脚部を大きく振り戻し、AMBACによる姿勢制御で機体の向きを変える。狙い澄まされ降り注いだドラグーンの光の雨は、ギリギリのところでヤタノカガミに弾かれていった。
「妬み? 憎しみ? 結構じゃないか! 妬みの対象を越えようと努力が出来る! 憎しみの対象に復讐する喜びがある! 信じて、裏切られて、傷付いて、戦争を繰り返しながらもまだ人は滅んでいない! それがどういうことだか分かるか!?」
『だから私が終わらせようと言っているのだよ!』
 ドラグーンの攻撃はなおも止まない。今度は鏡面装甲と通常の発砲金属の軽装甲の間を狙い、ヒルコを包む黄金の鎧を少しずつ剥いでいく。キラも負けじと浮かんだドラグーンビットに射撃を加えるが、その動きは斬りかかってきたプロヴィデンスにより阻止される。
 ビームサーベルを収束するコロイド粒子の濃度を上げ、近づいてきたプロヴィデンスのビームサーベルを防ぐように前に斬り上げる。音のない鍔迫り合い。
「あなたには無理だね! 何度も何度も愚考を繰り返してまだ滅んじゃいないんだ、あなた程度が一人で頑張った所で、人類を滅亡させるなんて不可能だ!」
『ならば君は、このまま緩やかに衰退を見つめると言うのか!? それでは私の寿命がもたんのだよ!』
「きっと僕の寿命だってもたないさ! それに、この程度で滅びるようなら所詮はそれまでだってことだ! あなたはただ単に、一人で死ぬのが怖いんだ!」
『残念だよ、おそらく本物のキラ・ヤマト君! 君になら私の闇を分かち合えるかとも思ったが……!』
 聞きながら、キラはクルーゼの攻撃に込められた想いを理解していた。いや、理解できてしまった。
 自分の持つ憎悪と彼の憎悪にはさほどの違いもない。ただ、その対象が違うだけなのだ。
 クルーゼは世界全体を憎み、その全てを滅ぼそうとしている。自身の偽者とそれを作った者を憎み、正体を暴こうとした自分と同じように。
 だけど分かるからこそ、呑まれてはいけないと強く思った。クルーゼの憎悪を受け入れることは、自分自身さえも滅ぼしてしまうのを許してしまうことだから。
 だから、キラは自分のエゴでクルーゼを滅ぼすのだ。そのことを噛み締め、彼の吐き出す世界への呪いに叫び返した。
「闇の一つや二つ、誰だって持っているさ。僕があなたを倒す理由はただ一つ、僕はまだ生き足りない! まだ17年しか生きていないんだ、それだけだっ!」
『最後の最後で本音を吐いたな、キラ君! 所詮君も命が惜しいただの俗人か!』
「高みから見下す物言いはやめろーっ!!」

 思わず吐き出された両者の感情。そのせいで僅かに生まれた隙をキラは待っていた。
 一瞬先に起こりうる出来事が頭の中で鮮明に浮かぶ。プロヴィデンスのコクピットにまっすぐに突き刺され吸い込まれていくビームの刃をはっきりと見ていた。その通りにすればクルーゼを殺せる、はずだった。
『今だ!』
 サーベルにエネルギーを送る直前、横合いから別の意思がキラの脳裏を閃光のごとく駆け抜けていった。
「何……っ!?」
 クルーゼを殺すヴィジョンが掻き消えた。かわりに、ダメージを知らせるレッドアラームが鳴り響く。モニターには、ヒルコの右腕が肩からごっそりと無くなっていると表示されていた。
 フリーダムだ。振り向かなくても分かる。子供向けのSFアニメのような決めポーズで静止しているのが見えるのだ。全身の砲門をこちらに向けて、プロヴィデンスとやりあっているところを撃ったのだ。
 ヒルコは握っていたビームサーベルごと右腕を失い、右足も半分ほど消し飛んだ。プロヴィデンスは一見すると目立った損傷はなさそうだったが、あちこちの装甲が吹き飛び、内部へのダメージはかなりたまっている。ドラグーンも既にほとんどが撃ち落されているようだ。
 確認してもいないはずなのに、キラにはそれが正確に分かる。360度の視界を全て同時に把握できるような、そんな錯覚すらその身にある。開ききった紫闇の瞳孔で、キラはフリーダムを睨み付けた。
「フリィィィダム……っ!」
 既にフリーダムはマルチロックオンの体勢に入っていた。ここにはターゲットは二機しかないのに、無駄なマニュアルも省略しないところはまさしく人形を髣髴とさせる。
『僕には……僕の想いを……ラクスの願いを!』
 何て奴だ。
 確固たる信念も何もなく、ただ単に感覚と脊髄反射だけで表面的な奇麗事を吐いて、相手の話も聞かずに一方的でワンパターンな攻撃を繰り返す。
 こんな出来の悪い人形が自分を騙っているなんて。
『それでも……守りたい世界があるんだ!』
 胸糞が悪くなる奇麗事と共に、フリーダムは再びフルバーストの発射体勢へと入る。
 怒りで煮え滾る心とは正反対に、キラの頭は急速に冷えていくような気がした。
「邪魔を……するなぁああああーっ!!」

 絶叫と共に、バッテリーを食うビームライフルを投げ捨てて、キラは最後の武器を引き抜いた。腰部にひとつだけマウントされたアーマーシュナイダー。全身PS装甲のフリーダムにもプロヴィデンスにも、ただ斬りつけただけではたいしたダメージは出ない。
 だが、やりようはあるのだ。キラは機体を加速させ、フリーダムに急接近すると、アーマーシュナイダーを唯一まともに動く左手に逆手で持たせ、ヒルコの腕を反動無しで振り下ろす。宇宙空間なら勢いをつけて振り回さなくてもいい。アークエンジェルで逃げ回っていた時に体で覚えた。
 刃は正確に、フリーダムのコクピット部分──胸部装甲板の継ぎ目に打ち下ろされた。フェイズシフトの施されていないフレームは、一点のみに強い衝撃を受けたことによりいとも簡単に捻じ曲がり、へし折られる。
「うおおおおおおっ!!」
 柄まで刃をねじ込むと、キラは渾身の力を込めて抉るようにアーマーシュナイダーを動かす。ちょうど刃の先がコクピットだ。人の乗っている、もう一人の自分の乗っている──
「う……ぐっ……!」
 吐き気が込み上げてくる。人形を壊しただけなのに、その嫌悪感は他のMSを墜とした時とまったく同じ。まるで自分が直接あの偽者を刺し殺したような、そんな感覚。だがそんなものに構ってはいられない。
 永遠とも思える一瞬ののち、フリーダムは完全に動きを停止した。

『おめでとう、キラ・ヤマト君。勝ち残った君が本物だ!』
 ノイズ混じりのクルーゼの声。賞賛の言葉は嘲りの色が含まれている。彼の言葉はなおも続いた。
『だがもう止められん! ジェネシスが発射される前に死んで貰うぞっ!』
「クルーゼエエエッ!!」
『そうでなくてはッ!!』
 気持ちが悪い。これはもう、信念とか戦う理由とか関係ない、生理的なものだ。
 戦争を終わらせたいだとか、憎しみの連鎖だとか、世界への復讐だとか。そんなものは全て建前だ。そんなものは、今、命を懸けている者にとっては奇麗事に過ぎない。
 ただ、目の前のコイツを倒さない限りは前に進めないのだ。
 アーマーシュナイダーを引き抜く。だが既にヒルコの関節は軋みを上げていた。今の無理な制動で黄金の装甲は全て剥がれ、左腕は前に突き出したポーズのまま、とうとう言うことを聞かなくなる。
 そのことに感付かれたのか、半壊したプロヴィデンスが出力の落ちたビームサーベルを構え、突進してくる。チャンスだ、とキラは思った。どう見てもピンチでしかないけれど、確かにチャンスだ。
 クルーゼは真っ直ぐに突っ込んでくるだけ……つまり、動きの予測をしなくてもいい!
「これで終わりだ……っ!」
 激突までのコンマ数秒、咄嗟にコンソールを引き出してOSの操作をした。今まで各部へと回していたエネルギー、残りのバッテリー、全てをスラスター制御のためのエネルギーに振り分ける。そうしてフットペダルを思い切り踏むと、ヒルコもプロヴィデンスに向かって一直線に突撃していく。
 激突の直前、バッテリー切れを知らせるアラートがが鳴り響く。だがそれももういい、既に交錯の刻は来た。アーマーシュナイダーの狙いも、慣性の法則に従い先程と同じくコクピット装甲の継ぎ目に寸分違わず吸い込まれ──……


 やったと思った瞬間、キラの視界は閃光に覆われた。