Novel
天使は瞳を閉じて 3
「はぁ? 天使ぃ!?」
「そう、いたんだよ! 天使が」
「お前の親父が言ってたやつだろ?」
「それもあるけど、見たんだって」
ロイドがコレットと会った翌日の昼休み。彼はいつものように校舎の屋上で昼食をとっていた。
座り込んで弁当を広げるその傍らには、見るからに軽薄な印象を与える赤毛の男が同じように座っていた。
年齢的にもここの学生でないのは明らかだ。第一、制服を着ていない──にもかかわらず、ロイドはそんなことはあまり気にしていないようで、興奮気味に昨日の不思議な邂逅のことを男に話している。
「金髪で、白い服着てて、羽根が生えてて、それで」
「へー」
「それで、スッゲー可愛い女の子」
「何ィっ!?」
それまであまり興味なさそうに半眼だった男の目がくわっと見開かれた。
「ロイド君、どーしてその時に俺様を呼んでくれなかったのよ!?」
「んなこと言われたって急に現れたんだからしょうがないだろ! 第一、俺ゼロスの連絡先知らねーし」
「っかー! 嘆かわしい! 所詮男の友情なんてその程度のものなんだなー、あー俺様悲しいなー」
「お前なぁ……」
先程のだらけた雰囲気から一転、大袈裟に嘆いてみせるゼロスにロイドは深く溜息をついた。
二人の出会いは、これより少しだけ遡る。とはいえ、はっきりしているのはそれだけで、いつ、どこで出会ったのか、どんな出会いをしたのか、ロイドは何故か思い出せないでいた。
ゼロスはいつも気がついたらそこにいて、自分をからかったり他愛もない話をしていたけれど、彼が一体何者でどこから来てどこへ帰るのか、ロイドは全く知らない。
だというのに、そのことを追求しようと思うことは不思議となかった。
そのゼロスだが、どうやら無類の女好きらしくて、いつもロイドにとってはあまり興味のない「女性をナンパする方法」だの「深くお付き合いする方法」だのをご高説垂れたりしているわけなのだが、どうやら今回もロイドの言った『スッゲー可愛い女の子の天使』とやらに興味を惹かれたらしく、物凄い勢いで食いついては表情をくるくると変えて何事かを騒いでいる。
勢いに少しだけ戸惑いながらも、ロイドはふと、ある疑問を口にした。
「……というか、信じるのか? 俺の言ったこと」
「何を言ってるのかねロイド君。親友の言うことを信じるのは当たり前じゃねーのよ」
「さっき『男の友情なんてその程度』って言ってたぞ」
「それはそれ、これはこれ」
「……あのなー」
調子良く笑って見せるゼロスに、ロイドはもう一度溜息をついた。
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あとがき。
ゼロス登場。こいつは結構重要な役回りを任せる予定です。
ゲームをやった人なら分かると思いますがこいつも……です(何だ)
いつか同じ設定でゼロロイバージョンが書きたいなとか思ってますが、とりあえず今回は無しです。