Novel

戦術講義? いいえ、趣味です

 バーランド宮では、女王ピアニィと騎士アルのかなり距離の近い会話が頻繁に見られる。
 遠目から見ると、まるで初々しいくっつきたての恋人のような二人に思えたが、実際は……そうでもなかったりする。
 城の一室にて、二人は顔をつき合わせて何事かを話し込んでいる。囲んだテーブルの上にはチェス盤のようなボードとポーンがいくつも並んでいた。和やかなゲームタイムに見えるが、違う。

「いや、だからここはこう行って、先にこっちを……」
「ああっ、そうか……じゃあこっちを殺してこのルートで……」
「そうそう、で反対側は俺が引き受けるとして、残りをこう……」
「なるほど、そういう手もありますね!」

 かなり物騒な会話である。

 本当のところ、二人は戦術について話していたのだ。実に楽しそうなやり取りである。
 それを部屋の隅で見守っていたベネットが溜息を吐いた。
「あの二人……ホントに妙なところでお似合いでやんすねぇ……」
 呆れ返った口調だった。その隣に立つナヴァールはそれに静かに頷くのみ。
「まあ、良いではないか。陛下も実に生き生きしておられる」
「いやぁ……『いかに効率良く敵を殲滅するか』で生き生きされても……」
 本来ならここでツッコミを入れるのはアルの仕事のはず。だというのにその本人はピアニィと向き合って、こちらも実に生き生きと効率良く敵を切り刻む方法について話し込んでいる。

 なんというクレバーカップルであろうか。

「その戦術を使うには、あたしももっと魔術の腕を磨かないとだめですねっ」
「だな。……どこから伸ばしていくかもまた考えとかないと……」
 そうやって和気藹々と(?)話していた二人であったが、ふとピアニィがこちらを向いた。
「ナヴァールはどう思いますか? このスキルについてなんですけど……」
 ピアニィは紙にいくつも書き出したスキルを見せてくる。するとそれまで動かなかったナヴァールがすたすたと二人に近寄っていく。そして、

「陛下……ルールに関する質問はHPにメールでお願いします」
「メタなこと言わんでください社長っ!?」
「社長ではなくナヴァールと呼ぶように」
 思わず(やっと)つっこんだアルに向き、ナヴァールは平然とそう答えた。

 フェリタニアは、今日も戦乱渦巻いている──はず。たぶん。

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あとがき。

当人たちはラブラブなはずなのに、会話は物騒(笑)
これがアルピィの真髄だ! と勝手に思っております。
中の人成分がルージュの時より多いのもそのせいです。