Novel
夏はこれで涼しくなろう!
「肝試しを、やりますっ」
そう女王が宣言した一時間後。
その女王本人を含むいつものメンバーは、心霊スポットやらエネミー出没ポイントやらにも出ることはなく、城の中でテーブルを囲んでいた。
「……なあ、姫さん」
「んー、何ですかー?」
アルは熱心に紙束を整理しているピアニィに呼びかける。
「肝試しって話はどうなったんだ?」
「ええ、だから今準備してるところです」
「どこがだよ!? それどー見てもシナリオとボードとマーカーだろーがっ!?」
「そうですよ?」
きょとんとした顔でピアニィは首をかしげた。
アルは頭を抱えた。別に肝試しに行きたいわけではない。というかそんな暇があったらまた外に出て自分の用事を済ませたいのだ。だが今、フェリタニア首脳陣の集まるこの部屋を抜け出すわけにもいかず、椅子の上で腐っているのである。
そんなアルの目の前に、すっと一枚の紙が手渡された。
「ん? 何だこれ……」
「さあ、アルもキャラクターを作ってください!」
手に取ってみたそれは、どう見ても白紙のキャラクターシートであった。
「これ……肝試し……か?」
「はいっ! 今日はこれです!」
咲き零れる花のような笑顔で、ピアニィは一冊のルールブックを差し出した。
表紙におどろおどろしく書かれている『Call of Cthulhu』のロゴ──
「…………なるほど、だいたい分かった」
観念したアルは、どこぞの通りすがりの仮面ライダーのようなことを呟くとペンを取り、キャラクターシートの空欄を埋める作業を始めた。
「ところで、お約束だが姫さん……じゃない、キーパー、<クトゥルフ神話>技能を……」
「お約束ですが駄目です!」
ちなみに、ものの見事に全員発狂したそうな。
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あとがき。
リアル肝試しの代わりにホラー系TRPGで代用する陛下、というネタでした。
いや、どっちかというと何でもかんでもTRPGで済ませるゲーマー陛下ですが(笑)
ちなみにこのゲーム、発狂してナンボですよね!(爽)