Novel

Opening〜親愛なるトラン=セプター〜

『トランさんへ

 お元気ですか? ……というのはちょっとおかしかったですかね。
 えっと、あたしはいつも通り、というかいつも以上に元気です。

 それで。……えーっと、何から書けばいいのやら……う〜ん。
 なんだかおかしいですね。伝えたいこととか、お話したいこととか、たくさんあったはずなのに、
 こうしてペンを取っていると、なかなか言葉が出てこないです。

 そうそう、あたし達『新生フォア・ローゼス』は、また新しい冒険に行くことに決まりました!
 これからも一緒に冒険するということは、この間お伝えした通りなんですが、
 また新たな決意を込めて、ここでお知らせすることにします。
 信頼できる仲間と共に、あたしはまた旅立ちます。もちろんトランさんも、その一人ですよ。

 この間、会いに行ったばかりですし、ここからトランさんのいる所までは遠いので、
 この手紙を直接渡すことは、まだできそうにありません。
 でも、また一つ冒険を終えたら、その時は、きっとまた会いに行きますね。
 この手紙は、その時が来るまであたしが大切に保管しておくことにします。
 だからそれまで、あたし達のことを見守っていてください。約束ですよ?

 では、またお手紙します。

 愛を込めて ────ノエル=グリーンフィールド』


「……これでよし、っと」
 呟き、ノエルはペンを置いた。
 今の思いをしたためた、シンプルなデザインの便箋を丁寧に折り、封筒に入れて封をする。
 きゅっ……という音と共に、ノエルの思いはその中に閉じ込められた。

 そのタイミングを見計らったかのように、ドアをノックするものがいた。
「ノエルさん? そろそろ出発の時間ですよ」
「あ、はーい!」
 答えてドアを開けたその向こうには、既に旅支度を終えた聖戦士の姿。
「何をやっていたんです?」
 クリスはノエルの背後を覗き込むようにしたが、それは曖昧にかわされる。
「えへへー、秘密ですー」
 そんな風に言われて背中を押されれば、クリスにはもう確かめる術はない。ノエルに押されるがままに、廊下へと追い出される。

 再びドアが閉じられ、しばしクリスはノエルの支度が終わるのを待った。
 ちらりと横目で見遣ると、そこには同じく支度を終えたエイプリルとレント。彼らは今日、この街を出発する。

 新生フォア・ローゼスの、新たなる冒険の旅に。

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あとがき。
オープニング終了〜。なんぞこの『ちょっといい話』は? という感じですが、
これは短編ではなく物語の始まりです。は、始まりですよ!? 始まり!
なのになんでアンタらやり遂げた男の顔でレコードシート回収してんの……っ!?(笑)
つ、続きます。というか、続いてくれ。