ある時ジェスが隣のベッドの壁を見ると、見覚えの無い女性の肌もあらわなポスターが貼ってあった。
「カイトの奴……また性懲りも無く」
溜息を吐く。あの同居人(?)はたまにどこからかこういういかがわしいものを集めてきては、部屋に貼るのだ。そのことがジェスには気に食わなかった。
この家《バックホーム》には子供も住んでいるというのに……
と、そこまで思い返してみて、現在その子供──セトナがいないことに気付く。
どうやらまた例の気ままな失踪のようだ。
「しょうがない、俺がやっとくか」
もう一度溜息を吐いて、ジェスは自分の机の引き出しからガムテープを取り出した。
「あぁーっ!? 俺のコレクションがっ!」
ガムテープにて写真のきわどい部分を隠すように貼っていたジェスの背後から、何やら絶望したような叫び声が聞こえてくる。ジェスは気にせず作業を続けた。
「おい、ジェス……っ! お前、カメラマンだろう! この写真の良さが分からんのか!」
「知りませーん。俺はポルノは専門外だ。第一セトナだっているんだぞ、教育に悪い」
「あのガキがいない今がチャンスだったのに!」
後ろからカイト(どうやら戻ってきたらしい)がジェスの肩を掴んでは何かを喚いているが、ジェスは無視して作業を続ける。やがてすっかり肌の見えなくなった写真に一つ頷くと、ようやく後ろを振り返った。
そこには物凄く不機嫌な表情のカイトがいた。
「あのなぁ、カイト……」
ガムテープを置き、ジェスは疲れたような声を出す。目の前の彼の不機嫌さに対抗するかのようにだ。
「こんなの貼って俺が嫉妬しないとでも思ってるのか」
「……は?」
「そりゃ、俺だって男だし気持ちは分からんでもないが……」
それでもこう堂々とやられると傷付くというか、なんというか。
そんなようなことを、頬をポリポリとかきながら呟く。するとみるみるうちに、それまでむすっとしていたカイトの表情が焦ったようなものに変わっていった。
「その……すまん」
「いいよ、別に。セトナに悪影響が出なきゃそれで」
小さく聞こえてきた謝罪に微笑んで返す。それにはさらに軽い口付けで返された。
ちなみにこの後、カイトのベッド脇の壁には引き伸ばされたジェスの写真が貼られたのだが、これはさすがにジェス本人により高速で引っぺがされることになる。
---
お題提供:
BLUE TEARS様