拍手お礼ログ その5

君の体温は幸せの温度で、(アルピィ)

 アルが目を覚ますと、最初に鮮やかな紅のローブが目に入った。
「あ、気が付きましたか?」
 上からかかる声に、ああ自分は気を失っていたのかなどと思い出す。自分が今どういう状態でいるのかは、敢えて考えないことにした。
「……悪いな、姫さん」
「ううん、あたしなら大丈夫ですよっ。傷も治してもらえましたし」
「そっか、なら良かった」
 ほっと息をついて、くるりと上を向く。艶やかなピンクブロンドの髪と、安心したような少女の笑顔が目に映った。
「でも、最後の一撃はホントにびっくりしたんですよ」
「ああしなきゃ勝てなかったからな……」
 アルは少しだけ、拗ねたような口ぶりになる。姉弟子とでも呼ぶべき少女に……ナーシアに勝つには、あの時点ではあれしか方法がなかったのは事実だ。
 だがそんなアルの言葉すらも、ピアニィは微笑んで首を振ってみせた。
「だって、信じるって言ったじゃないですか。あの時」
「そうだな……そうだったな」
 今度はくすぐったそうに。アルは目を伏せてピアニィに答える。二人の、フェリタニアの仲間たちと共に勝ち取った勝利だと、心から言えた。

「でも、アル。ひとつだけ、お願いがあるんです」
「ん? 何だ?」
 先程より少し硬い声でピアニィが言う。アルは何事かと上側の片目を開ける。ピアニィは至って真剣な表情で、

「HPをリソースにしすぎですっ。これからもそんな戦法取るんなら、さっさとサムライに戻って《ストライクバック》取ってください」
「なっ……」
 アルは一瞬だけ絶句した。一瞬だけ。
 次の瞬間には、既にモードチェンジ完了済みであった。
「あれはだいたい《カバーリング》の分だろっ!? 俺単体で攻撃されることってそんなにないから取らなかったのにっ!?」
「そしたらその時はあたしが《アヴェンジ》撃ちますよ! 《ディフェンスライン》で命中使って避けるよりもダメージソースが確保できますし、《レイジ》の調整にも使えるし、色々お得ですっ!」
「いやいや、普段はともかく、次は《プロテクション》の性能がガタ落ちするんだぞ!? 前倒し過ぎるだろそれっ!?」

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 二人から少し離れた場所で、アンソンは吐き気を催しそうな表情をしていた。
「な、ナーシア……」
「どうしたの、砂でも吐いた?」
「吐かないよっ!? むしろ血ぃ吐きそうだよ!!」
 冷静に受け流すナーシアに向かって、彼は大げさな手つきでとある方向を指差す。そこには、膝枕をしたままスキルについて議論を交わすアルとピアニィがいた。
「なんなんだよ、あの殺意の高さはっ!?」
「大丈夫。あれが、普通」
「絶ーっ対普通じゃねえええーっ!? しかもさりげなく僕が貶されてたような気もするしっ!」

 荒野にアンソンの絶叫が響いた。

暗い夜に口づけを、(サイ→アル)

「よーう、アルー」
 呼びかける声に応えて彼が振り向く。返事が来る前に、サイラスは『呪詛』を発動させた。

「よっ、と……」
 途端に崩れ落ちるアルの体を支え、サイラスは息を吐いた。
「悪いな……こうするしかなかったんだよ」
 数ヶ月前のことだ。とある事件を一緒に解決した後、この男はとんでもないことに首を突っ込んでいたのだ。
 師匠の手がかりを追ってレイウォールの王宮に忍び込み、そこの末姫と一緒に逃げ出して、高名な軍師の力まで借りて国を一つ作ってしまった。
 国家間の争いごとの審判を司るエストネル王国に所属し、密使なんぞをやているサイラスの耳にもすぐに入ってきた。

 それが気に入らなかった。
 いまだに剣聖テオドールの影を追い続けていることも、ピアニィを連れてレイウォールを脱出したことも、幻竜騎士団団長リシャールにただならぬ執着を受けているのも、ナヴァールとかいう軍師がアルに入れ込んでいるのも、全部。
 サイラスにはそれが耐えられなかったのだ。
 アルには何か、人を惹きつけてしまうものがある。それは一目惚れとか、そういう運命的なものではなくて、彼の内面から来るものだ。たとえ最初は反発していても、アルという人物を知れば知るほど好きになっていく。
 サイラスもその例に漏れず、アルに好意を寄せていた。最初は違ったのに。
 だからこうするしかなかったのだ。アルを自分だけのものにするには、こうするしか。
「ホーント、お前って罪な奴だよ……」
 呟いて、サイラスはもう一度溜息を吐いた。

 ノーデンスに与えられた『眠り姫の呪詛』の力を私用で使うようなことは、当然だが固く禁じられている。もうエストネルには戻れないだろう。
 サイラスにはもう何もない。呪詛を受けて眠り続けるアル以外は、何も。
 自分の肩に顎を乗せ、静かに寝息を立てる顔をちらりと見る。その名の通り、まさしく『眠り姫』だ。

 遠くから足音がいくつか聞こえてくる。おそらく彼の主であるあの少女と、その仲間達だろう。無意識にアルを抱き締める手の力が強くなる。
「帰る前に……ちょーっとくらいはいいよな?」
 サイラスの顔に悪戯っぽい笑みが浮かんだ。アルが今は誰のものなのか、彼女らに知らしめておく必要がある。顔がばれてしまったら、そのあと捕まる可能性だって少なくないのに。
 それでもやらずにはいられなかった。アルの顔を起こし、扉が開くと同時にサイラスは唇をアルのそれと重ね合わせる
 扉の向こうから息を飲む音が聞こえた。ざまあ見ろだ。

 見せるのは一瞬だけ。アルの体を再びぎゅっと抱き締めると、二人は一瞬にしてピアニィ達の前から消え失せた。

イエスしか言わせない(柊アンゼ)

 今日も今日とて。

『柊さぁ〜ん、これからするわたくしのお願いにぃ〜ハイかイエスでぇ〜お返事してくださぁ〜い!』
「絶対にノゥだっ!!」
『では次の任務でーす!』
「聞けよ人の話っ!?」

 テーブルの向かい側に座って、距離が近いというのにわざわざメガホンでそう言ってくるアンゼロットの言葉を遮った。そう柊は確信していた。
 甘かった。
『何を言ってるんですか柊さん。これは世界の危機なのですよ、あなたが動かなければ世界は滅んでしまいまーす』
「だからっ……」
『それに……』
 何か言い返そうとしたのと同時、アンゼロットがメガホンを下ろし表情が引き締まる。
「……な、何だよ」
「それに、柊さんはわたくしが選択肢を与えた任務の時に限って、躊躇わずイエスと言ってくださるんですもの。期待してしまうのは当然のことだと思いませんか?」
「え……」

 言葉に詰まる。
 確かに彼女の言うとおりだった。アンゼロットが拒否権をくれるほどの危険な任務に限って、柊は例外なく即承諾を出しているのだ。
「そ、それは……お前がああいう風に言うってことは、それくらいヤバイ任務ってことだろ? だったら」
「柊さんがスリルシーカーだなんて、知りませんでした」
 まあ、と口に手を当て、アンゼロットが驚きの声を上げる。顔はちっとも驚いていないのがムカつくと言えばムカついたが、柊は気にしないことにした。
「そういうわけじゃねえよ、ただ、それほどヤバイってんなら、行かないわけにはいかねーだろ?」
「そうですわね、そういう方でしたね、柊さんは」
 アンゼロットは今度はにこりと微笑んだ。まるで真昼の空に浮かぶ淡い月のような微笑み。そしてテーブルの上に置かれたカップを取り、口へと運ぶ。
「さ、柊さん。せっかくのお茶が冷めてしまいます。どうぞ召し上がってください」
「お、おう……」
 つられて柊も紅茶をすすった。ほのかな甘みと香りが鼻の奥に突き抜けていく。
 そしてカップを置いたアンゼロットは、笑顔のまま言った。
「さて、一息ついたところで次の任務でーす!」

「台無しにすんなぁぁぁぁぁぁっ!?」

 柊の叫びも空しく、彼は足元のシュートから直接任地へと向かわせられるのであった。

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ここまでのお題提供:31D

テイルズオブジアビス リプレイ 〜ELDRANT〜

※このなんちゃってリプレイに登場する人名などは全てフィクションであり、実在の人物、団体とは一切関係ありません。
 また、キャラクターの口調が違う(いわゆる『プレイヤー発言』)ことがあるので、お気をつけください。


GM:さあ、このキャンペーンもいよいよ終わりが近づいてまいりました。みなさん、張り切って行きましょう!
一同:おーっ!!
GM:さて、エルドラントへと突入し、リグレットを倒したキミ達だが……道のりはまだまだ続いている。今回のダンジョンは気合入れて作ったから、頑張ってね!(笑顔)
ティア:今回『は』!?
ジェイド:今回『も』の間違いだろっ!?
GM:(無視して)今いるフロアはこんな感じねー(と、フロアタイルを並べ始める)
ルーク:よっしゃあ! 俺が一番乗り!(すすすっと自分のコマを進める)
GM:(シナリオとマップを確認している)……あ、ルーク。そこで【感知】して。
ルーク:へ? ……(ダイスを振る)……ゲェ! ファンブルっ!?
一同:おいーっ!?
GM:えーと……ルークの足元が突然パカッと割れ……落とし穴に落ちる。シーンから強制的に退場します(一同爆笑)
ルーク:何ですとーっ!?(机の下に落ちていくジェスチャー)
ナタリア:さすがルーク、おいしい!(サムズアップ)
ガイ:おいしい、じゃないですっ!
アニス:ともかく、下で合流するしかないんじゃない? どーせパーティー分断とか考えてたんでしょ?
GM:(鋭いな)とりあえず、ここでいったんシーンを切ろうか。

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GM:……さて、ルーク。
ルーク:はい……
GM:キミの目の前に、同じく落とし穴に落ちて立ち往生しているような感じの赤毛の男がいます(笑)
ルーク:アッシュー!? 何やってんだお前ぇーっ!?(爆笑)
GM:その声に気付いて、アッシュが振り向く。そして……

(中略〜BGM:meaning of birthでお待ちください〜)

1ラウンド目

GM:戦闘開始だ! こちらの行動値はルークと一緒だから、PC側優先ね。言っとくけど、強いぞ?
ルーク:ううっ……なんで俺一人なんだ……
GM:そりゃあ罠にはまったのがお前だけだからな。1ラウンド目だ! 行動は?
ルーク:うーん……アッシュのデータって、基本的には変わらない?
GM:まあね。アッシュのプレイヤーが作ったのを元に強化してあるよ。でもこれ以上はエネミー探知してくれ。
ルーク:……(しばらく考えて)……GM、待機する。
GM:(ん? 気付いたか?)ならばこちらの行動だ。「怖気づいたか、屑がっ!」激昂した言葉と共に切りかかるぞ! マイナーで移動してエンゲージ、メジャーで《穿衝破》だ! 命中するとコンボが発生するぞ!
ルーク:そこだ! 待機解除! マイナーで《バックステップ》、メジャーで《魔神拳》!!
GM:!! インタラプト行動が先に解決されるから……(ダイスを振る)回避失敗!
ルーク:よし! ダメージはあんまり出なかったけど、これで一撃目を防げた!
GM:ぐっ……! 《バックステップ》でエンゲージを離脱してるのか! 《穿衝破》の射程は<至近>だから……
ルーク:自動的に失敗だ!
GM:気付かれたな……だがまだ手はある! 次のラウンド行くぞ!

2ラウンド目

ルーク:待機……と言いたいところだけど、遠距離《魔神拳》じゃたいしたダメージ出ないんだよなぁ……いや、ここはやっぱり待機!
GM:ならばこちらも戦法を変えて……マイナーで《超振動》、メジャーで《サンダーブレード》!(ダイスを振る)……クリティカル! 《超振動》の効果で譜攻以上のダメージが出るぞ!(と言いつつ山ほどダイスを振る)
ルーク:駄目だな、回避は無理……《マジックガード》使う!(ダイスを振る)成功!
GM:ちっ……だが、これでも結構ダメージは行ったはずだ。次来い!
ルーク:待機を解除して、マイナーで《鋭招来》、メジャーで《崩襲脚》!
GM:ん!? エンゲージしてないよな?
ルーク:《ダッシュ》の効果で《崩襲脚》が移動攻撃扱いになってるんで(笑)
GM:(ダイスを振る)……駄目だ、回避失敗! うおおお、ダメージが!
ルーク:あ、コンボに《烈破掌》が入ってるので、<転倒>食らってください(笑)
GM:攻撃できねええええええっ! でも、ルークの方もかなり食らってるはず……次のラウンド行くぞ!
ルーク:あ、その前にクリンナップで『ローレライの宝珠』使います(ダイスを振る)……お、全快!
GM:ええぇぇええええええええ!?

 ここは本気で後悔した。はっきり言うと、落とし穴に数人落として、一人くらい戦闘不能に持ち込むつもりでいたのだ。
 もちろん、プレイヤーの許可を得てアッシュのデータはいじってある。
 まさかこんなことになるとは……ローレライの宝珠、強すぎ。

ルーク:よっし、完・封・勝・利!!
GM:くぅ……っ! これは見事としか……っていうか、俺の詰めが甘かったな……
ルーク:GMが本気で悔しそうだ(笑)
GM:悔しいよっ!? アッシュもすげー悔しそうにぶっ倒れてるよ!!
ルーク:あー……いや、その……なあ、アッシュ。
GM:「……何だ」
ルーク:お前を見てると、その……凄く『エンダースさん』という単語が……

ジェイド:エンダースさんを馬鹿にするなぁーっ!? 彼はきっといつかリベンジにっ、生まれ変わったエンダースさんの実力を思い知れ貴様らーっ!?
ルーク:どわーっ!? ジェイドいつの間にっ!?
GM:菊池さん、次のシーンまでちょっと落ち着いてください。

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次のシーン? んなもんないです。