「はい、できたわよ」
強い陽射しの中、リタがそう言って人数分差し出したのはシャーベットだった。しかし、何かがおかしい。
「ねえリタ……これ何?」
「シャーベット」
カロルの問いに力強く宣言すると、周囲がどよめいた。
「これ……なんか、氷が荒くない?」
「シャーベットというのは、白身魚のように滑らかな食感がキモなのじゃ。リタ姐、失敗したの? 氷が鮫肌のようなのじゃ」
「あら、これでもまだ上達した方よ? 最初の頃は氷の塊にフルーツソースをかけただけだったもの」
「それは……豪快だな」
彼らの言うとおり、そのシャーベットは通常より氷のきめが粗かった。どうもミルクの量が少なかったらしく、見栄えは『普通の氷を細かく砕いて上からイチゴの果汁をかけたもの』となっている。
仲間達がおのおの『リタ作シャーベットっぽいもの』を手に持ったまま好き勝手言うのを、リタはしばし黙って聞いていた。しかし、視界の端に、シャーベットを脇に避け穴を掘ってそこに腹を乗せ舌を出すという、珍しく犬らしい行動をとったラピードの姿が映った瞬間、それは爆発した。
「うっさいわね! 味は問題ないはずなんだから……!」
むすっとした表情で、リタはスプーンを手に取りそのまま一口。皆が見守る中、少々驚いた顔になって最初に発した言葉は、
「あ、おいし……」
直後、一斉にスプーンを取る凛々の明星の姿があった。
「あ、これシャリシャリしてて美味しいです」
「そうね、暑いしちょうどいいかも」
「ま、食えなくはないわね」
「シャーベットっつーよりカキ氷だけどな」
そして事件は、それまで口を開かなかったユーリがスプーンで氷をざくざくと崩し始めながらそう言った次の瞬間に起こった。
「ちょ、ちょっとユーリ!?」
「……くーっ!!」
ユーリはおもむろにカキ氷を口の中にかき込み、半分ほど食べたところで急に頭を押さえてうずくまった。
「大丈夫です!?」
「そんな急に食べるからよー」
「……何言ってんだ、お前ら……」
慌ててまわりに駆けつける仲間達の心配そうな声を振り払って、頭を押さえたままユーリは苦しそうに言葉を吐き出した。
「カキ氷は頭がキーンってなるまで一気に食うのが常識、いや、カキ氷に対する礼儀だろうが……っ!」
ユーリは大真面目だった。
「バ……」
「君はバカだっ!」
リタがいつものように呟くより早く、フレンのそんな叫び声が響いた。
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お題提供:
Fortune Fate様