拍手お礼ログ ボーグ脳編

WEB拍手がボーグ脳シリーズ1:TOV編

「……駄目だ、どうしても余計な言葉ばかり出てきてしまう」
 フレンが力なく首を振る。昔からユーリに口で勝ったことがないのだ。いつもうまく言いくるめられたり、きつい一言で黙らされたり、やり方は色々だが、いつも口喧嘩はいつの間にか殴り合いと化してしまったりもする。
 良くも悪くも真っ直ぐなフレンと、斜に構えたユーリとでは、やはりユーリの方が口が回る。
「お前がオレに口で勝てるわけがねぇだろ?」
 それはユーリもよく分かっていることだ。だから彼は、これ以上フレンが何かを言う前に、手に持ったものをフレンにかざして見せる。
「お前がオレに勝てるのは……コイツだろ?」
「そうだな……想いは全て、このボーグに賭ける!」
「いいぜ、来な!」

 二人の手の中にしっかりと握られた、互いのボーグマシン。オルニオン郊外に設置されたバトルフィールドで、二人は対峙した。
「チャージ三回、フリーエントリー、ノーオプションバトル!」
「チャージ三回、フリーエントリー、ノーオプションバトル!」

「うおおおおおおおおおっ! チャージ・イン!!」

 こうして、一度は離れ離れとなっていた親友達のボーグ魂が、今ここに火花を散らす!!

「行けぇーっ! 僕のナイト・リッター・シュヴァリエ(直訳:騎士・騎士・騎士)!」

「やるようになったね! でも、ボーグバトルで君に負けたことはない……今回も、勝たせてもらう!」
 フレンの脳裏に、過去の思い出が浮かんでは過ぎ去っていく。お金が無くて一つしか買えなかったカブトボーグを、ユーリと一日交代で使っていたこと。騎士団に入るため、入団試験バトルに備えて二人で毎日特訓した日々。そして世界征服を掲げる悪の秘密組織マイタケ・オーガニゼーションとの壮絶な戦い。超巨大兵器ザウデボーグ。帝国のマドンナ、エステリーゼ姫の救出……色々なことがあった。本当に、色々なことが……
「これで終わりにするよ! ライトドラゴンデストラクション!!」
 目をかっと見開き、ユーリを見据える。自らの必殺技により、彼のボーグ、ブラック・ブレイブ・ヴェスペリアは既にフィールドの端にまで追い詰められている。だが……
「そいつはどうかな?」
「何っ!?」
 ユーリの表情は死んでいなかった。いやむしろ、自身と余裕に満ち溢れているではないか!
「お前はオレに口じゃあ勝てない! ボーグバトルは精神攻撃が物を言う……言い負かされたらそのままお前の負けだーっ!」
「し、しまった!!」
「行けぇっ! ブラック・ブレイブ・ヴェスペリア! デッドリーシャドーウルヴズ!!」
「ぐわぁあああああーっ!!」

 一瞬の隙を突いて、ユーリのボーグがフレンのボーグを押し返し、ついにナイト・リッター・シュヴァリエはフィールドから弾き飛ばされてしまった。
 勝負ありだ。それを悟ったのと同時に、二人はその場に倒れ伏した。

「ボーグバトルでも、負けてしまったな……」
「ははっ、ざまーみろ」

 二人の笑い声がオルニオンの夕陽にとけていく。これぞ、雨降って地固まる、である。


テイルズオブカブトボーグ VxV(ヴェスペリア バイ ヴェスペリア) 〜完〜

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※ライトドラゴンデストラクション…Light=光、Dragon=竜、Destruction=滅(牙槍)
 デッドリーシャドーウルヴズ…Deadly=必殺、ShadowWolves=(漸穀)狼影(陣)

WEB拍手がボーグ脳シリーズ2:アリアンロッド・サガ編

「つ、つらい……かなりつらい。こんなにつらいのは久しぶりだ……」

 フェリタニアがまだ遷都する前のこと。城門によりかかり、アルはげっそりとしていた。
 今日は決戦なのだ。師であるテオドールとの、最終決着をつけなければならない。だが、アルのコンディションは最悪と言っていいだろう。
「アル……明らかに調整ミスだ……このままでは……」
 物陰からこっそりと事態を見ていたナヴァールが重い溜息をつく。しかし今更後には引けない。アルはふらふらと歩き出そうとして……

「アル、あたしもう見てられない!」
「えっ?」

 少女の叫び声と、アルに近づいてくる足音。思わず立ち止まり、振り向いたアルの目に飛び込んできたのは……

「お願い、アル……もうやめて! これ以上あなたが傷つく所を見たくない!」
「き、君は……フェリタニアのマドンナ、ピアニィ!」
 そこには、今回の使い捨てヒロインピアニィが、ソフトフォーカスのかかった状態で立っていた。胸の前で両手を組み、目には涙を浮かべている。心細そうにアルを見つめるその姿は儚げという形容がもっとも似合う。
「アルはよく頑張ったわ、だからもう、戦わなくていいのよ……」
 涙の混じった声で呼びかけるのは、アルを引き止める言葉だ。ピアニィはアルの胸に飛び込み、肩を震わせていた。
「姫さん……」
 アルは肩に手をやり、そっとピアニィの顔を離した。ソフトフォーカスのかかった儚げな表情。だがそれを見つめるアルの顔には、いつの間にか生気が漲り、いつものアルに戻っていた。
「すまねえ、姫さん……俺は大切なことを忘れていた!」
「え?」
 肩に置いた手にさらに力を込め、アルはピアニィを引き剥がすように離れる。そこにはもう、何の迷いも恐れも、体の不調すらない!
「そう……俺は行かなくちゃならない。なぜならば、俺には絶対に負けられない理由があるからだぁぁーっ!!」
「アル……待って、アルーっ!!」

 手を伸ばすピアニィ。だがアルは立ち止まらなかった。
 そう、全ては今日、決着をつけるのだ!

 そして同日、悪の秘密結社ブラックバルムンク団のアジトの一つである空中要塞にて、ついに二人は対峙した!

「行くぜ、テオ……これで決着をつけてやる!」
「良くぞ言った、我が弟子よ! ならば……これで最終決戦と行こうか!」
「望む所だ! うおおおおおおおおおおお!」
「チャージ・イン!!」

 そして今、決戦の火蓋が切って落とされる!!


アリアンボーグ・サガ 〜完〜

WEB拍手がボーグ脳シリーズ3:デスマーチ編

 悪逆ボーグバトラー、ゴルドレイ打倒のため、彼の所有する豪華客船(という触れ込みだった火薬輸送船)に乗り込んだ、高速機動ボーグバトル戦隊エンジェルファイヤー。だがそれはゴルドレイの卑劣な罠だった!
 禁断のバトルレギュレーション、トリプルフリーの前に苦戦するアキナ達。果たして彼らは勝利することができるのか!

「くぅっ、つ、強い……!」
 唇を噛み締めて耐えるアキナ。彼女達は窮地に立たされていた。
 ゴルドレイは金にあかせて高級なオプションパーツをこれでもかと装備していたのだ。一方のエンジェルファイヤーは、貧乏なフェリタニアでろくなパーツも買えずにいた。普段ならばノーオプションバトルで切り抜けてきた一行なのだが、今回はそれも叶わない。
 そう、禁断のバトルレギュレーション。チャージフリー、フリーエントリー、フリーオプションのトリプルフリー。フリーオプションなのだからどんなパーツでもつけられる。ゴルドレイはそこをついて、卑怯にも超高級且つ強力な、公式戦ではとても使えそうにないパーツを満載して襲い掛かってきたのだ!
「くそぉ! 今回は船上でのバトルだからと軽装備で調整してきたのが裏目に出てしまった!」
「いや、その前にあんなのってアリかよ!?」
 後悔に打ち震えるマルセル、思い切りブーイングを飛ばすギィ。だがゴルドレイはどこ吹く風だ。
「トリプルフリーですよ、アリに決まってるでしょう。これが金の力です!」
「くぅーっ!」
「どうです? 金さえあれば何でもできるのですよ! さあ、さっさと降参しなさい!」

 絶体絶命の大ピンチと思われたその時だった。
「く……ふ、ふふふふふ……」
 アキナの低い笑い声が響く。一体何事かとゴルドレイが一瞬、攻撃の手を緩めた時、それは起こった。
「あたし達……これまでに色んな奴と戦ってきたんです……中には卑怯な人もいて、だからついつい……ね?」
 顔を上げたアキナの目は据わっていた。傍らのドラム缶型エクスマキナ──ドランだ──を引き寄せると、自らのボーグマシン『ラブリー・テング・シスター』をおもむろに掲げ……
「使うつもりはなかったんですけど……どうせ公式戦では使えないし……」
 ドランの頭部が機械音を立てて開かれていく、そこにはちょうど、カブトボーグを差し込むためのスリットがあった。

「ま、待て、何だそれは!?」
「オプションパーツですっ!」
「待て、そいつは仲間のPCだろうっ!?」
「フリーオプションでしょう?」
 これにはさすがのゴルドレイも驚愕の表情を見せる。いくら強力なパーツをつけているといっても、所詮アイテム扱いのものである。PCと比べればその力は一目瞭然。
 しかし、アキナは止まらない!
「ボーグ・オン!!」
 叫び、ドランの頭部にボーグが刺さった。究極のオプションパーツを装備した究極のカブトボーグ、ここに爆誕である!
「行けぇーっ! ラブリー・テング・シスターfeat.ドラム缶!」
「い、今ヒドイことを言われた気がするナリー!」
「ご、ごめんなさい! 許してーっ!?」
「ごめんで済んだらファーイースト・アミューズメント・リサーチはいらねえんだよ!!」
「意味が分からないーっ!?」

 バトルフィールドをドランが蹂躙する。
 必死に逃げ回るゴルドレイのボーグマシン『エコノミック・マネーゴールド』だったが、それは無残にもドランによって踏み潰されてしまった。

 かくして、エンジェルファイヤーの活躍によりゴルドレイは倒され、その野望を打ち砕くことができたのである。
 しかし、悪の秘密組織ブラックバルムンク団の刺客はこれだけではない。行け、エンジェルファイヤー! 戦えエンジェルファイヤー!!


アリアンボーグ・サガ DxD(デスマーチ バイ デスマーチ) 〜完〜

WEB拍手がボーグ脳シリーズ4:ブレイク編

 ファントム・レイダーズ……伝説の盗賊団と同じ名を持つグラスウェルズの特殊部隊。
 それは、ナーシア、カテナ、ゼパ……そしてマンソン! このいつもの四人のことである!


 ここは、カブトボーグのパーツショップ『ミネアの店』。いつもの四人ことファントムレイダーズのギルドハウスである。
「はーい、ミネアの店でーす」
 店を任されている少女ミネアが電話を取る。途端にミネアの表情が変わった。
「な、なんですって!? フィリップ陛下の暗殺計画!?」
 その時店に激震が走った!
「陛下暗殺……!? まずいことになったな」
 柳眉を寄せるカテナ。
「どうするんじゃ、ナーシア?」
 いつになく焦った様子のゼパに、ナーシアはぎりと奥歯を噛み締め答える。
「グラスウェルズで勝手な真似はこの私が許さない。もちろん、ぶちのめしに行くわ!」
「落ち着くんだ、ナーシア」
 今にも飛び出さんとするナーシアを引き止める声。当時に、ミネアの店の奥に設置されていたピアノが繊細な旋律を奏でる。
「マンソン!? 何故止めるの?」
 ナーシアの表情は怒りと苛立ちに満ちていた。無論、カテナや普段は温厚なゼパも然りである。睨みつけた視線の先のマンソン──キャップに半ズボン、小さな眼鏡をかけた小太りの中年は、殺気混じりのナーシアにも怯むことなく演奏用の椅子を立つ。
「行くなと言っているわけじゃない。ただ、怒りで冷静さを失っては駄目だ」
「あ……」
 ナーシアははっとした。そうだ、そういえば前にもこんなことがあった。あれは確か、王都ベルクシーレの不穏分子を追っていた時。
 その時敵は、なんとナーシアの弟ロッシュに危害を加えかけたのだ。怒りで我を失いそうになったナーシアを止めてくれたのは、このマンソンだったではないか!
「ナーシア、君は冷静さを失わなければ誰よりも優れたリーダーだ。そう、俺のピアノで心を落ち着かせて、四人のハーモニーを取り戻すんだ!」
「そうだな、マンソンの言うとおりだ」
「そうじゃ! いつもの四人なら怖いもの無しじゃ!」
「……ええ!」

 こうしていつもの四人は、再び結束を取り戻した。これもすべてマンソンのおかげである。
 そしてついに、フィリップ王暗殺を企む悪の秘密組織ブラックバルムンク団との決戦の時が来た!

「いくぞみんな! いつものリズムを忘れるな!」
 マンソンの合図で、カテナ、ゼパ、そしてナーシアがポーズを決める。バトルフィールド中央で戦況を支配するのは、もちろんマンソンのボーグマシン、ハウリング・ロデオ・ドライブ!
「今だ! グランピアノ・ヒーリング・フォルテッシモ!!」
「アン!」
「ドゥ!」
「トロワ!」
 マンソンの必殺技が、今まさにブラックバルムンク団の野望を打ち砕く!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


アリアンボーグ・サガ BxB(ブレイク バイ ブレイク)〜完〜

WEB拍手がボーグ脳シリーズ:おまけのフレユリ編

「ユーリ……」
「ん?」
「ふ、二人っきりだね……」
「そうだな」
「あ、あの……」
「何だよ?」
「あー……」
 きょとんとした表情で自分を見上げるユーリに、フレンはそこから先の言葉を失った。
 緊張する。夜に二人きりになることなんか、今までに、それこそ下町で一緒に育った子供時代から数えきれないくらいある。
 だけど今日は特別なのだ。なぜならば……

「なーんだよフレン。そんなになるんなら、やっぱ付き合うの無しにするか?」
「だ、駄目だ!」
 思わず過剰反応してしまう。
 そう、今日は二人が付き合い始めて初めての二人きりの夜なのだ。
「駄目だからねユーリ! 僕はずっと、ずーっと、君のこと……」
「フレン……」
 焦ってユーリに詰め寄る。必死になるのも無理はない。ユーリとフレンは昔からずっと一緒だった幼馴染だ。その時から暖めてきた想いが、長い旅の果てにようやく通じたのだから。
 そしてそれはユーリも同じだった。なまじ遠回りした分、二人はこれからの進展の速度をどこまで速めてもいいものか、はかりかねているのである。

 視線が絡み合う。そしてフレンはふと、自分がユーリを押し倒している格好になっていることに気付いた。
「あ、あの、ユーリ……」
 だけど今更退くこともできない。刻々と過ぎる時間に、痺れていく両腕。
 いい加減限界を感じてきたところで、ユーリが静かに片手を上げてきた。
「フレン」
「ん……?」
 ユーリの手にあるのは、黒くてでかい、彼のボーグマシン『ブラック・ブレイブ・ヴェスペリア』!

「夜のシークレットバトル……しようぜ!」
「ああ!」
 フレンはそれに笑顔で答え、自らも懐から、白と青が眩しいボーグマシンを取り出した。
 夜の勝負は、これからだ!


テイルズオブカブトボーグ VxV(ヴェスペリア バイ ヴェスペリア) 〜今度こそ完〜