NOVEL
衝動的に抱きしめる
ポータルが閉じ、ネガアースには六人のエレメントハンターの子供達が取り残された。
このままでは元素消失を止めるどころの話ではない。協力してこの状況を打破することが最重要だ。
コロニーチームの一人ロドニー・フォードはそう考え、地球チームのリーダーである少女に話を持ちかけようとした。だが……
「何の用よ」
キアラの声色と視線が刺々しい。嫌われたものだなとロドニーは自嘲する。
先日の一件以来、彼女との溝は開いたままだった。今も明らかに避けられている。だけどロドニーには、地球チームに渡りをつけるためにはどうしてもキアラとの接触が必要だったのだ。向こうで一番信頼する存在である彼女が。
「キアラ、今は非常事態だ。僕たちと協力して……」
「そんなこと、あたしが了承すると思う?」
「今は意地を張っている場合じゃないだろ!」
強い語調とともに、キアラの腕を取る。彼女がびくりを体を震わせたのが分かった。
「放してよっ!」
キアラが腕を強く引き、ロドニーを振りほどこうとする。だが引くわけにはいかない。
『握手は政治家の道具だもんな』
キアラとロドニーを引き離すきっかけとなったチームメイトの言葉がリフレインする。今のキアラは、自分と手を繋ぐことに異常な抵抗感を示している。だけどロドニーにはそんな意図は無いのだ。
「聞いてくれ、キアラ。僕は……」
「放してったら!」
「……っ」
キアラが大きく腕を振り、ついにその拘束が解かれる。ロドニーは一瞬怯んだが、すぐに気を取り直し彼女に一歩近づいた。
そうだ、手が駄目ならもうこれしかない。
「キアラっ!」
「!?」
ふわり、という擬音が聞こえた気がした。ロドニーの鼻腔を花のような香りがくすぐる。
目を瞑って、ロドニーはあらん限りの声で叫んだ。
「好きなんだ!!」
「……え?」
ゆっくりと目を開ける。僅かに顔を離したキアラの表情は明らかに困惑していた。
「な、何馬鹿なこと……」
「僕は本気だ」
出てくる声は、普段の彼とはうって変わって熱のこもったもの。これにはさすがのキアラも、いつもの強気な調子が崩されている。
「あ、あたしは……」
キアラがさっと頬を染め、視線を横に向ける。
「あたしは別に、あんたのことなんか」
「知っている」
「え……」
「それでもこれは、僕の正直な気持ちだ」
「ロドニー……」
先程とはまた違った穏やかなロドニーの声に、キアラが再び視線を戻す。
二人は図らずも見詰め合う形となった。
短い逡巡ののち。キアラの桜色の唇から、ロドニーへの答えがゆっくりと紡がれ──
---
あとがき。
33話の怒涛の展開に度肝を抜かれてやった。反省も後悔もしない!
こんな展開にならねーかなー(笑)