THIS CHARMING MAN  ディス・チャーミングマン
人里離れた丘の真ん中で
自転車がパンク
万物は僕をまだ大人にしてくれないのかな?

そこへ素敵な車が登場
運転席にはディス・チャーミング・マン

何だって人生を複雑に考えるんだ?
革張りの助手席は
こんなにも滑らかなんだぞ?

今夜 お付き合いしたいな
でも着て行ける服がないんだ
そこでこの男曰く
「君ほどハンサムな子が
そんなことを気にするとは
ゾっとするな」

ああ! 思い上がった食料庫勤めの少年
身の程をわきまえたりはしない
ディス・チャーミング・マンは言った「その指輪を返しなさい」
彼はそのテのことについちゃ詳しいのさ
彼はそのテのことについちゃ詳しいのさ

今夜 お付き合いしたいな
でも着て行ける服がないんだ
そこでこの男曰く
「君ほどハンサムな子が
そんなことを気にするとは
ゾっとするな」

ララララ……ディス・チャーミング・マン
おお! ララララ……ディス・チャーミング・マン

ああ! 思い上がった食料庫勤めの少年
身の程をわきまえたりはしない
ディス・チャーミング・マンは言った「その指輪を返せ」
彼はそのテのことについちゃ詳しいのさ
彼はそのテのことについちゃ詳しいのさ


 大人と同等に渡り合おうと背伸びをする「少年」と、余裕で彼を誑(たぶら)かす「大人」についての歌。歌詞からは、様々な直喩が見て取れて面白い。

Punctured bicycle
On a hillside desolate
Will nature make a man of me yet ?

 「人里離れた丘」は少年の孤立感を、よりによってそんな場所で惨めにも自転車がパンクしてしまうことは間の悪さ、立ちまわりの下手さを表している(不器用なヘマをやらかすと、自分がひどく子供っぽいように感じてしまうものだ)。

 そこへ、素晴らしい車に乗った魅力的な大人の男が登場する。すべらかな革張りのシートからは裕福さを窺える。少年のパンクした自転車とは大違いだ。
 いそいそと車に乗り込んだ少年は、さっそく男の関心につけ込み甘えながら欲しいものを手に入れようとおねだり「一緒に遊びに行きたいんだけど、着て行くに相応しい服がないんだ」。

 けれど男は上手くかわす「君ほどのハンサムなら、服なんて関係ないよ」。この口の上手さ、大人の余裕、ここで男が一筋縄ではいかない相手だと分かる。それでも懲りずにこっそり男の指輪に手を出すが、男は横目でお見通し「指輪を返しなさい」。

 勿論「素敵な車」、「着て行くに相応しい服」、「指輪」、それら全ては少年が子供であるがゆえに未だ手が届かずにいる成熟の象徴だ。身の程知らずな少年は、それらを手に入れるために甘えてみたり、男を出し抜こうとしてみるが、結局は敵わないのである。「大人はそのテのことについちゃ詳しい」から。

 ついでに、私はどうもこの男を「紳士然とした人物」とは想像できない。おそらく身なりは良いいが、ちょっと仇っぽく堅気の男には無い雰囲気が漂っている……そんな感じだ。

 こういった一連の物語だが、ジョニーの軽妙なギター・フレーズのおかげで少年の挫折感を直接的に感じることはない。むしろ瑞々しく可愛らしいコメディタッチに仕上がってさえいる。ジョニーのギターは最高だなぁと思う瞬間。

収録アルバム
基本的にオリジナル・アルバムのみの記載です。
アルバム未収録曲に限りベスト盤等を記載します。

・The Smiths*
*UK盤LPには未収録。同CD、カセットには収録。LPではUSA盤、Australia盤にボーナストラックとして収録。
・Singles
・Best...1