1. America Is Not The World
2. Irish Blood English Heart
3. I Have Forgiven
4. Come Back To Camden
5. I'm Not Sorry
6. The World Is Full Of Crashing Bores
7. How Could Anybody Possibly Know How I Feel
8. First Of The Gang To Die
9. Let Me Kiss You
10. All The Lazy Dykes
11. I Like You
12. You Know I Couldn't Last
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*Bounus disc B-side collection*
1. Don't Make Fun Of Daddy's Voice[*]
2. It's Hard To Walk Tall When You're Small[*]
3. Teenage Dad On His Estate[*]
4. Munich Air Disaster 1958[*]
5. Friday Mourning[*]
6. The Never-Played Symphonies[*]
7. My Life Is A Succession Of People Saying Goodbye[*]
8. I Am Two People[*]
9. Mexico[*]
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[*]同年11月発売のdeluxe edition特典"Bounus disc B-side collection"(オリジナル版には未収録)。
他、同盤にはDVD特典として以下が付属。
*Bonus disc enhanced section*
Irish Blood, English Heart (music video)
First Of The Gang To Die (music video) [USA only]
First Of The Gang To Die (live on Late Late Show, 22 July 2004 )
I Have Forgiven Jesus (live on Late Late Show, 23 July 2004)
Let Me Kiss You (live on Late Late Show, 23 July 2004)
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かつてモリシーのアシスタントであったジョー・スリーが言ったとされる言葉に「The Smithsの周辺でお金にうるさかった人がいたのは事実よ。けれどそれはモリシーじゃない。彼はただレコードを出したかっただけ」というのがあるが、これは本当にそうなのだと思う。モリシーにとって、ステージに立つこと、レコードを出すことは、何よりも切実に必要なことで、誠実にも生きることと同意義なのだろう。
それを考えれば、前作Maladjustedからレコード契約を失くしていた7年間を、モリシーはさぞや胸苦しさ抱きながら過ごしていたに違いない。しかし今作You Are The Quarryをやっとの思いでリリースした時、彼の音楽に対する誠実さは報われたのだ。このアルバムは英国アルバムチャート2位、シングルカットされた4曲はいずれもシングルチャート・トップ10入りを果す大ヒットを記録した。
傍目には、まるで突然起こった奇跡の復活劇のように見えるかもしれない。けれど実際のところは、彼の地道な活動が実を結んだ結果なのだ。沈黙していたとされる7年の間にも、モリシーはツアーを行い、新曲を書き続けていたのだから。
収録されている"Irish Blood English Heart"や"First Of The Gang To Die" "I Like You"といった曲は、02年のツアーから披露されていた、お馴染みのアラン、ボズ作曲の作品だ。モリシー程の知名度があり、作詞の才能、声の素晴らしさを賞賛されている歌手ならば、著名なソングライターに作曲を依頼しても断わられはしなかっただろうし、そうすることがレコード契約の近道になったかもしれない。しかし、彼は長い時間をかけて信頼関係を築いた、この二人と曲を作っていくことを選んだ。
モリシーは言う「世間は僕が音楽シーンに『カムバック』したと言うけれど、僕にしてみたらリスナーが僕のところに『カムバック』してきたのさ」。モリシーの言う通り、彼はずっと変わらず彼の音楽と共にいて、そこへリスナーが戻って来たのだ。「おかえり、モリシー」ではなく「ただいま、モリシー」だったのだ。
アルバムの内容に話を移そう。今作が他アルバムと大きく違うところは、"音の強さ"だ。前作までプロデュースを務めたスティーブ・リリーホワイトが洗練された細やかな音作りをしていたのに対し、今作のジェリー・フィンは初聴きから印象を残すインパクトの強さを目指したように思える。
この音作りの方向性に関しては、氾濫するポップ・ミュージックの中で、久しぶりにリリースできた自分の曲が埋もれないようにという計算が見える。特に"Irish Blood English Heart"や"I Like You"といったアップテンポの曲は、プロデュース前のライブ音源のアレンジに比べ、曲が引き締まり格段に良くなっている。とはいえ、逆に"I Have Forgiven Jesus"や"Come Back To Camden" "All The Lazy Dykes"といったスローバラードは、大味過ぎて野暮ったい印象を否めない。しかし結果的に見れば、やはりモリシーの計算は間違っていなかったのだろう。
You Are The Quarryは12曲収録の通常盤と、全21曲収録+特典DVD付きのデラックス盤が出ている。もしあなたが初めてモリシーを聴くなら通常盤が良い(最初からデラックス盤は少々満腹になり過ぎるかもしれない)。
けれど、もしあなたが「ただいま、モリシー」のリスナーならば、迷わずデラックス盤をお勧めする。こちらに収録されている"The Never-Played Symphonies"と"My Life Is A Succession Of People Saying Goodbye"が素晴らしいからだ。