想い
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「兄さん」
答えがないのは分かってる
かたわらでよく眠っている兄が返事をしないと判りきって、あえて声をかけた

ありがとう

何に、というのではなく
何もかもに感謝してるから
寝息を立てている兄さんを見ていると、とても切なくなる
この人が、ボクの生きている証
ボク自身
分身のようなそれでいてまったく切り離されて存在する別の人格でありながら

「兄さん」
もう一度
起こさないように、小さな声で

からっぽの胸なのに、何かに締め付けられるような気持ちは一体どこからくるのだろう

「・・・・・・・・・・」
もう、声はかけずに見つめるだけ

昔から兄さんの後姿ばかり見てきたボクは
良くも悪くも兄さんしか知らない

でも
この人だけが
ボクのすべて

それだけは
ゆるぎない真実
ボクは間違っちゃいない