HAPPY HAPPY HAPPY BIRTHDAY !
こんな大切なもの、本当におれがもらってしまっていいんだろうかと思った。
塔矢は好きだというひいき目を除いて見ても整った顔立ちをしていて、立ち姿も美しい。
いつも凛としていて涼やかで頭も良く、碁はもちろんべらぼうに強い。
碁界の宝と呼ばれてしまうのも納得で、塔矢アキラのような人間は冗談ではなく百年に
一度くらいしか現われないのでは無いかとそう思う。
なのに、その碁界の宝様はおれに全てをくれると言った。
中身も外見も頭のてっぺんから足のつま先まで望むなら全てをおれにくれると微笑みな
がら言ったのだ。
「そんなに良いものでも無いけれど、欠片一つ残さずキミに全部あげるよ」
心も全てと。
いつも怒ってばかりいるくせに気前のいい若先生は、そう言っておれの前で自ら襟元を
開いたのだった。
塔矢は素晴らしかった。
言葉では言い切れない程に、ただひたすらに素晴らしかった。
触れるだけで満たされて、抱きしめるだけで幸福だった。
「大好き」
「愛してる」
信じられないような嬉しい言葉も惜しまずに、塔矢は言葉通り全てをおれにくれた。
こんな、誰もがきっと欲しくてたまらない大切なもの。
みんながこいつを好きで、おれなんかの百倍も千倍も大切にしている。
なのにそんなものをおれはもらってしまったのだった。
幸せで、幸せで、幸せで、でもあまりに幸せなので未だに信じられない。
「本当に…おれがもらっちゃってよかったのかな…」
他の誰にも渡すつもりも無かったし、この先も渡すつもりはもちろん微塵も無いけれど。
疲れて眠っている顔にキスをして、おれは信じられない幸せを噛みしめながら、そっと塔矢
を抱きしめたのだった。
甘さ六千倍(当社比)誕生日だからいいよね!お題がちょっと寂しい話だったので、裏とこちらではめいっぱい
ヒカルに幸せになってもらいました。なんたって誕生日だからね(笑)2005.9.20 しょうこ