Merry merry Christmas -A-



くしゃくしゃになった包装紙の間に投げ出された腕が見えた。

解いた青いリボンは指に絡まり、それだけ見ているとまるで塔矢自身がプレゼントの
ように見えた。



「…やべぇ」

十二時を最後にその後の記憶が無い。

したたかに酔っぱらっていたせいもあると思う。

食事は外で食べてきて、ケーキとシャンパンだけ家でとなったイブの夜、自分も塔矢も
明らかに飲み過ぎていた。



「シャンパンと…ワインと…地ビールとチューハイと…日本酒と」

年末ずっと忙しくてもらい物の酒や、いつか飲むためとして買った酒が溜まってしまって
いたせいもあるだろう。


いくら飲んでも明日から新年まで仕事も何も無いということで、それらを互いに引っ張り
出してきては全て飲んでしまった。



「こいつも随分飲んだよなぁ…」

ビールの辺りで雰囲気がそういうふうになって、布団も敷かずにしてしまった。

送ったシャツを塔矢に着せて、着せたらなんだか非道くそそって着たまま押し倒してしま
ったのだ。



『どうしてキミは…』

そんなにも即物的なのだと口では文句を言いながらも塔矢は抵抗しなかった。

むしろはんなりと酔ったその体は自分を待ち受けていた風情がある。

酔うと塔矢は酔っていない時よりもずっと積極的で大胆になる。

肌も柔らかく淡いピンクに染まるので、触れている自分も気持ちがいい。

『………っ』

荒い息を唇で塞ぎ、挿り込んだ中は熱くてとろけそうだった。

『気持ち……いい』

耳元で譫言のように囁かれた時、最後に残っていた理性も消えてそのまま果てるまでや
ってしまった。





「…………頭痛ぇ」

今はもうすっかりと酔いの醒めた頭には二日酔いの兆候が見えてズキズキと痛む。

これはもう明日…今日の朝は非道い目に遭うだろう。

「塔矢は大丈夫なんかな」

どちらが先に意識を失ったのかはわからない。

けれど何度目か果てた後に気絶するようにそれぞれ眠ったのだと思う。


暖房は強にしておいたものの、この真冬に部屋の中で裸で寝ていた。

信じられないと苦笑してしまった。


(部屋、すげー有様だし)


包み紙とリボンと脱ぎ散らかした服と、なんとか最後の理性で塔矢が引っ張り出してきた
らしい掛け布団が自分と塔矢の体をお情け程度に覆っている。


よくこれで風邪をひかなかったものだと感心しかけて、いやこの頭痛はもしかしたら風邪
かもと思う。


「とにかく…こいつだけでもちゃんと寝かせないと…」

痛む頭を押さえながらキッチンに行って水を一杯飲んだ。

そしてそれから部屋に戻り、布団を敷こうと散らかっているものたちを部屋の隅にざっと
寄せた。


「塔矢」
「…ん」


ようやく布団を二組敷いて、声をかけたけれど塔矢は目も開けなかった。もうこれは丸1日
くらいは寝たままになる感じだと、ため息をついてそっと体を布団に移す。


本当は服も着せてやった方がいいのだろうけれど、そこまで自分も元気では無い。

なので申し訳無いと思いつつ素肌の上に多めに布団をかけてやった。

「おやすみ」

まだほんのりと酒の香のする額に唇を押し当てる。

はみ出した手にまだリボンが絡まったままなのに気がついて取ってやろうと思い、でも思い
直してそのままにした。


焼けていない肌に絡まる青リボンは綺麗だった。


「おまえ…おれのクリスマスプレゼントだ」


もらったんだからもう絶対に誰にも返さねーからなと、もう一度口づけたら眠っているはず
なのにその顔はゆっくりと笑みに変わった。


「凶悪」

こんな飲み過ぎのヤリ過ぎで意識が無くなっているというのに、それでも自分に口づけられ
たらおまえは笑うのかと、そう思ったら胸の奥が痛くなった。



「大好き」


どうしてこうもこいつはカワイイんだろうかと本人が聞いたら殴られそうなことを心から思った。

すげえカワイイ。

すげえそそる。

ヤレるもんなら猿みたいに死ぬまでヤリたい。




「…愛してる」

きっとおれの他誰も知らない。

無防備な寝顔を眺めながら、おれはクリスマスの幸せを一人噛みしめたのだった。



※クリスマス、他にヤルことはねーのかと言う感じですが無いのデス←おい。
実際はもう1日、年内に研究会くらいは入っているかと思うのですがそれは仕事のカウントに入れないと。
普段すれ違いが多い分、こういう時には歯止めが無くなる二人でした(笑) 2005.12.25 しょうこ