0505
「膝枕して」
普段は言わないようなことをせがまれて少し驚いた。
「汚れるよ?」
ついさっきまでの行為のそのまま、シャワーも浴びていないので、ぼくの体には自分のものと
彼のもの、欲望の残滓が散っている。
「いい。気にしない」
言って、引き寄せるようにするともうぼくの膝に頭を載せてしまった。
「…後で髪を洗ってあげるから」
仕方がないなあとため息をつき、そう言うと進藤は「うん」と頷いた。
「ごめん、お願いしマス」
すり寄せられる頬の温もりが少し冷えた膝に気持ち良い。
見下ろす体のあまりにも生々しい様に、本当は今すぐにでも駆け込んでシャワーを浴びてしまいた
いと思うけれど、彼はいつまでも子どものようにぼくにしがみついて離れない。
「進藤」
「ん?」
「嫌じゃないのか?」
「なにが?」
「なにって……」
青臭い、どろりとした白い液は彼が頬をすり寄せているぼくの足にもついているはずで、それが嫌では
ないのかと不思議になってしまう。
「いや、いいんだ。……その方がいい」
尋ねると進藤は目を伏せて言った。
「だってなんだかものすごく、生きてるって感じがするじゃん」
生きておまえと愛し合っているのだと、そう強く感じられるからと口元は笑っているのにどこか泣いている
ようにも見える。
「こうして愛して、触れられて、いつまでも確かめられる」
それがどんなに幸運なことかと噛みしめているのだから邪魔するなと、言われてそれ以上追求するのを
やめた。
そう
確かにものすごく、生きているのだということを実感する。
いつまでも塞がらない彼の心の穴を、塞ごうと藻掻く自分に強くそれを実感する。
「…進藤」
「ん?」
「愛しているよ」
愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ
ぼくは生きてキミを愛すると、耳元に囁くように言ったら、進藤は目を伏せたまま静かに「うん」と答えたの
だった。
※つい昨日、似たような話をアップしたばっかりで申し訳ありませんが今年も五月五日です。
この日はずっと特別なんだろうなあと思います。いつかアキラとそういうものも分かち合えるようになれればいいのにね。
たぶん唯一理解出来る人だと思うから。そういう意味でもこの二人は特別な関係だよなと思います。2006.5.5 しょうこ