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「桜は?」 「嫌い」 「紀の善の釜飯」 「好きじゃない」 「砂浜を歩くのは?」 「大嫌い」 じゃれついてくる子犬、晴れ渡った空、川面に散る淡い色の花びら。 どれもみな好きじゃない。 「じゃあおれのことは?」 「き…」 「好き? 嫌い?」 「大き…」 例えそれがルールでも、ぼくはどうしても進藤のことを「嫌い」とは言えない。 「それじゃ…キミは?」 「え?」 「キミはぼくのことを好きなのか嫌いなのか」 「そんなんもちろん大き……」 そこで詰まったままいつまでも答えられない彼の顔に胸の底が熱くなる。 彼もまたそれがルールとわかっていてもどうしてもぼくを嫌いとは言えないから。 好きは嫌いで嫌いは好き。 つきあい始めて何年も経つのに 今だにどうしてもぼくたちは エイプリルフールに嘘をつくことが出来ません。 2007.4.1 |