おやすみ
布団の中でそっと探ったら、やはり探していた指に出会った。 確かめるように触れあって、それからゆっくりと絡めて握る。 「…おめでとう」 俯せで窓の方を向いたまま、彼の顔も見ずに言う。 「ん…ありがと」 同じ布団の右隣、たぶんきっと壁を見ているはずの進藤がぽつりと呟くようにぼくに 返した。 「…こうやって、おまえに『おめでとう』って言って貰えるのって…なんか、すげー幸せ」 「だったら来年も言ってあげるよ」 来年でも再来年でもいつだってどこでだって、キミがそう望むならばぼくはキミに言う。 「お誕生日おめでとう、進藤。キミが生まれて来てくれて良かった」 「――ん」 激しく、強く、欲望のままに交じり合った後の心地よい倦怠。 「おまえの誕生日にも、おれ…絶対言う」 「…うん」 「生まれて来てくれてありがとう…って」 「ありがとう……進藤」 もしかしたら出会わなかった。 何か一つでも違えばきっと一生知らなかった。 なのにこうして出会えたことが嬉しくて嬉しくてたまらない。 「大好き…進藤」 「おれも大好き」 ぎゅっと、一度強く握り合って、それから静かに指をほどく。 名残惜しく手を離したぼく達は、ゆっくりと寝返りを打つと、今度は闇の中で向き合 った。 「………おやすみ」 「うん………おやすみ」 そして互いの体に腕を回すとしっかりと抱きしめ合い、温もりを確かめながら幸せ な眠りに落ちたのだった。 |