Holy night
「おれ、今金無いからさ」 だからこれで我慢な? と、手合いの帰り、駅前のカフェに連れ込まれて小さなケー キとカプチーノを目の前に置かれた。 「我慢…って何が?」 「わかんねーなら別にいいよ、でもとにかく、来年はもうちょっとマシにするから」 さっぱりわけがわからなくてきょとんとするぼくにケーキを食べろと睨むように勧め る。 「キミは食べないのか?」 「だから言ったじゃん、金が無いって」 飲み物は二人分買えたけど、ケーキの金までは無いから一つでごめんってさっき 言ったと言われて、わかったようなわからないようなそんな気持ちで頷く。 「じゃあ…半分ずつ食べようか」 「いいよ、おまえ全部食べても」 「ぼくは甘いものが苦手だから、全部食べるのは少しキツい」 だからキミが半分食べてくれるとちょうどいいんだけれどと言ったら、進藤はしょう がねーなーと言って、カウンターでフォークをもう一本貰って来た。 「それでもなるたけ甘く無いヤツにしたんだぜ?」 「そうだね、見た目ほどは甘く無かった」 美味しいよと口に運んでそう言ったら進藤はにっこりと本当に嬉しそうに微笑んだ。 「そうか、よかった!」 来年はもうちょっとちゃんとするからと、もう一度最初に言われたことを繰り返され てようやく気が付く。 そうか、今日はクリスマスイブ――――だったのだと。 |