「塔矢アキラ誕生祭7」参加作品








flowers of love



愛してると彼に最初に言われたのはいつだっただろう?

ふざけるような、冗談めいた『好き』は思い出せない程昔からずっと言われて
いたような気がする。


『塔矢好き』
『大好き』
『可愛い』


鬼みたいにおっかない所も、綺麗な顔して言葉が無茶苦茶キツイ所も大好
きだと、褒めているのか、けなしているのかわからない言葉を彼はよくぼく
に言ったから。


『好きなんて、そんな軽々しく口に出して言うものじゃないだろう』
『えー? でもおれ本当に好きなヤツにしか言わないし』


本気とも本気で無いともつかない言葉。

でもぼくは彼のそんな言葉を決して本気には取るまいと決めていた。だって
ぼくはもうその頃から彼のことがとても好きだったから。


冗談を本気にとって傷つくのは嫌だった。言葉をそのままに受け止めて、引
かれたらと考えることは死ぬよりも怖かった。


『塔矢好き、大好き』

けれどいつしかその『好き』には、意味が加わるようになっていった。

『おまえは?』
『おまえはおれのこと好き?』


そして深い想いのこもった『愛してる』―――。


初めて愛してると言われた時、胸の中に柔らかで香り高い花が一輪咲いた
ような気持ちになった。


少し照れたように囁かれる甘い『好き』は花びらで、言われるたびにぼくの
胸の中にはたくさんの花びらが雨や雪のように散った。



二人で歩き、何気ない話をしていて、ふいに思い出したように耳元に囁かれ
る『好き』。


気が付いたら手を繋ぎ、夜の道を別れがたく歩いている時の『好き』。

初めて抱きしめられてぎこちなくキスをした時の『愛してる』。

時を重ね、距離が近くなるごとにぼくの胸の中には一本一本花が増え、美し
い花束が出来上がって行った。





『おまえの首筋、すごく綺麗』

噛みつくようにキスされて、初めて肌に触れた時にもぼくの胸には花が咲い
た。


こんなにも温かく、優しい気持ち。

何気ない日々の中に隠れている溢れる程の幸せ。

キミと出会うまでは知らなかった全ての事々。


「ぼくもキミが好きだよ」
「大好きだ」
「愛してる」


彼の胸にもぼくの言葉が花を咲かせることはあるのだろうか?

目が覚める程綺麗じゃ無くても、鮮やかな色でも、夢心地になる程良い香りで
なくてもいい。


ただひたすらに優しくて、彼の心を温まらせる、そんな花をもしもぼくの言葉が
咲かせていたならどんなに幸せだろうかといつも思う。






「今日はどうしたい?」

22歳の誕生日、大人びた口調で尋ねる彼は、それでもまだ子どもの頃の悪
戯っぽい表情もその顔に残したままでぼくに言った。


「今日と明日は丸々全部おまえのために空けたから、なんでもやりたいことや、
して欲しいことをおれに言って」


どこかに行きたいなら連れて行くし、何か欲しいならそれ買ってやるからと言わ
れてくすっと笑ってしまう。


物なんか欲しくない。
どこにも行きたくなんか無い。



「花が欲しい…かな」
「花? いいけど? バラとか?」


少しだけ驚いたように言う彼に笑いながら首を横に振る。

「いや、違うんだ、そういう花とは違うから」


ぼくが彼から欲しいのは胸に広がる愛情の花びら。
ずっと何年も彼から与えられ続けて来たもの。


「何? プリザーブドフラワーとか言うヤツ?」

「いや、違うよ。いいんだ、もうそれは」
「なんで? ちょっとくらい高くてもおまえが欲しいって言うんなら―」
「いや、いい。本当にただちょっと言ってみただけだから」


それよりも今日はキミの家でずっと抱きしめていて欲しいなと言ったら進藤は
「そんなんでいいの?」と少し物足りなさそうな顔をした。


「おまえがいいならいいけどさ」

だったらせめて何か豪華なメシ食って、ケーキくらい買ってから行こうぜと言う
のに、またぼくは首を振る。


「何もいらない。ただ部屋に行ったら―」

ぼくがいいと言うまで、ずっとキミに『愛している』と言って欲しいと言ったら、彼
は一瞬黙った。


「それが…おまえの欲しいもの?」

モノよりも花よりもそれが欲しいん?と。

「…それしかぼくは欲しく無い」

一晩中でもぼくに、ぼくの欲しいものを与えてくれと言ったら進藤はゆっくりとそ
の顔を赤く染めた。


そして少し腰を屈めると、ぼくの耳元に最初の贈物を囁いてくれたのだった。

『愛してる』

誰よりも誰よりも、命かけて一番におまえのことを愛してるよと。

「ありがとう、ぼくもキミを愛してる」

彼のくれた愛の言葉は一輪の花になり、ぼくの胸の花束に加わった。


『愛してる』
『愛してるよ』
『おまえのことが大好き』



愛情と優しさに満ちた甘いキス。


『大好き』
『好きだよ』
『好きで好きでたまらない』


愛の言葉の花々は、ぼくの胸の花束を更に大きく広げさせ抱えきれない程に
なった。


溢れんばかりの幸せと、永遠に色褪せぬ美しい花弁。




ぼくの胸の中には彼の愛という名の美しい花束がいつも――在る。








「塔矢アキラ誕生祭7」開催おめでとうございます♪

開催ありがとうございます。

今年も誕生祭に参加することが出来てとても嬉しいです。
22歳のアキラはきっと滴るような美人さんでしょうねえ。(うっとり)



サイト内には他にも色々ありますので、(ヒカアキ)よろしければそちらも見てみてやってください。
2008.12.14 しょうこ


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