ろくでなしの朝2
「本当にやるのか?」 「なんだよ。気が乗らない?」 ヒカルの言葉にアキラはくすっと笑うと「いいや」と短く答えた。 「ただ、本当の成人式には出なかったのに今頃出るなんてと思って」 「いいだろう別に、紛れて退屈な話を聞いてさ、それからまた出てくれば」 誰もおれ達なんか知らないし、一人や二人多くても少なくてもわかりやしないってと言う 顔にアキラは笑顔を向ける。 「キミらしい…」 「おまえもやるって言ったじゃん」 カーテンの向こう、明けた空は高く清み、青く美しい。 たくさんの人々が成人を迎えるに相応しい清々しい天気だと思いながら、アキラは今一 度ヒカルを見、いつもの癖で少しだけ右に曲がって締められたネクタイに苦笑した。 「だらしない。いくら紛いものでも不真面目に参加するのでは失礼だ」 そしてきゅっと締め直してやるとそのままゆるく腕を回してヒカルの体に抱きついた。 「なんだよ? 珍しい」 「いいだろう、たまには」 愛しているってそう思ったからと言われてヒカルもそっと抱きしめ返す。 「愛してる。おれも」 そうしてキスをしてふっと互いに見つめ合って笑った。 「さて、それじゃ行くか!」 「待って、もう一度」 「好きだなあ。おれら一緒に暮してんじゃん」 「嫌ならいいよ?」 「まさか―」 嫌なわけ無いとキスをして、更にまた離れがたく何度も何度もキスをして、それから ようやく体を離した。 「行こうぜ」 「…うん」 止まらないくすくす笑いを噛み殺しながら二人揃って外に出る。 1月、――本来の成人式がとうに過ぎた今、ふたりはろくでなしでふしだらな、けれど 世界中の誰よりも幸せな『大人』になって、晴れた空の下を仲良く歩いて行ったのだ った。 |