最高の贈り物
進藤の誕生日に何を贈ろうか考えて、考えて考えて、それでも何にしたらいいのか 思いつかなかった。 そもそも進藤はあまり物を欲しがらない。 服は自分で買ってくるし、靴や小物もこだわりがあるらしいので迂闊にぼくが買う わけにはいかない。 ではと食事に誘おうにも彼はあまり食事に多くを望まないのだった。 「…キミは本当に恋人泣かせだ」 あまりに決まらなくて思わずぽろっとこぼしたら、おかしそうに笑われた。 「だって仕方無いじゃん、一番欲しいものはもう貰っちゃったし」 それはぼくだと彼は言う。 「おまえ以上に欲しいものなんか無いんだから、聞く方が間違ってる」 「それでも折角の誕生日、何か贈りたいと思ったって仕方無いだろう」 「もう…貰ってるけどなあ」 目を細め、いかにも嬉しそうに進藤が言う。 「何を?」 毎日のあのことかと、つい下世話な答えを想像して殴ろうかと腕を振り上げたら苦 笑して止められた。 「違うって。それは、もちろんそれもそうだけどさ…」 もっといいもん貰ってる、毎年それが何より一番嬉しいんだと言われて首をひねっ た。 「なんだ?」 「えー?教えちゃうとおまえ悩まなくなりそうだから」 「何が?」 「だから、おれはさ―」 おれのために何を贈るか悩みまくっているお前を見るのが何より嬉しいんだと。そ れがどんな物を貰うより嬉しいプレゼントになっているのだと言われて赤面した。 「最低だ」 「うん。でも最高だ」 これ以上のプレゼントは無いと言われ、でもやはりぼくは悔しいので、まんまと彼の 策にはまった感もしなくは無いが、悩む姿よりも喜んで貰える贈り物を決めるため、 再び考え込んだのだった。 |