初春
大掃除をしなかった。 お飾りも買いに行けなかったし、年越し蕎麦も食べられなかった。 お節ももちろん用意していないし、年賀状は印刷で辛うじて住所を手書きで書いたくらいで、 それも年が明けたこれから出すような始末だ。 (元日に出した年賀状って一体何日頃届くんだろうか) 手元に届いた大量の律儀な人達からの年賀状の束を見ながら溜息をつく。 「それもこれも…」 みんなこの男が悪いと、いぎたなく眠るその姿に思わず頭をぺちりと叩きたくなって寸前で 止めた。 「それでも…」 幸せだったから、だらしなくても後悔しない。 生まれて初めての自堕落で不義理な年末年始。 愛に溺れるということはこういうことかと思いながらぼくは散らかり放題の部屋の中、年賀 状を枕元に置くと、恋人の隣に再び潜り込んだのだった。 |