進藤ヒカル誕生祭11参加作品


甘々で濃厚



「口開けて、塔矢」


耳元に囁かれて全身に鳥肌がたった。

進藤の前髪がぼくの額に触れて、覗き込む目が間近過ぎて見ていられない。

言われるまま薄く開いた口に、進藤は小さく笑ってからゆっくりと唇を重ねて来た。




誕生日、何が欲しいと尋ねたぼくに、進藤は少し考えて「キス」と言った。

キスならいつもしているし、今更そんなものでいいのかとぼくは拍子抜けした気分だったけれど、
重ねて言われた言葉に思わず顔を見てしまった。



「うん。キスがいい。それも思い切り濃いヤツ」


普段しているのだって充分濃いと思うのに、それ以上のキスとは一体どんなものなのだとぼくは
怖じ気づいたような気持ちになって、それはそのまま顔にも出てしまっていたらしい、進藤は苦笑
したように付け足した。



「大丈夫、別になんも怖く無いから」


そんなことを言われたらかえって怖いと思いつつも、自分から言い出したことなのでぼくは否やと
は言わなかった。


何よりも彼の誕生日なのだから、彼が欲しいものをあげたいと思ったのだ。



そして迎えた当日、さあどうぞと目の前に立ったぼくを進藤は上から下まで舐め上げるように見
つめた。



「キスってさあ、セックスと同じくらい感じるよな」

「このタイミングでそういうことを言うのは良い趣味じゃ無いと思うけど」


行為の前に露骨なことを言って煽るのは彼の常套手段だった。


「別に盤外戦仕掛けて無いって、本当にそう思うからさ。だって口だけしか繋がって無いのに、ヤ
ッてイッたのと同じくらい感じて痺れるじゃん」



言いながら唐突にぼくの髪に指を差し込んで、耳をなぞるように持ち上げてから、ばさりと落とす。

ただそれだけのことなのに、微妙に触れる彼の指先が熱くて足の先まで震えが駆け抜けた。


「おまえってさ、結構感じやすい方だよな」

「だからそういうことを言うのはやめろ」

「なんで? 別に感度がいいって悪いことじゃねーだろ」


むしろおれにとっては最高に都合が良いと、彼の口角が笑ったように持ち上がった瞬間、猛烈な
雄の気配がぼくの体を包み込んだ。


同じ男同士だからこそ解ってしまう。彼は生々しくぼくに欲情していて、それを隠すどころか見せつ
けてぼくの反応を楽しんでいるのだった。



「…趣味が悪い」

「何のこと?」


表面上は何も変わらず、邪気の無い笑顔をぼくに向けているけれど、気配は濃厚で息苦しい。


「おまえって本当に可愛いよな」

「うるさい」


失礼極まりないことを言ってから進藤はぼくに口を開けるように促して、それからゆっくりと唇を重
ねて来たのだった。



温かい息が頬を掠め、次に舌が差し込まれる。

ぬるりとした感触に思わず眉を顰めると、進藤は息だけで笑ってさらに奥深く入って来た。


「ん―」


ぼくの舌を絡め取ろうとする彼の舌の動きが性急で痛い。

弾みでカチッと歯が当たり、けれど構わずに進藤は益々強く舌を絡めて来た。


「ん……んん……」


苦しくて思わず声が漏れる。

無意識に腰が引けて、けれど彼の手ががっちりと押さえつけているので逃げられない。

もう片方の手はぼくの頭を押さえていて、気がつけば身動きすらも出来なかった。


「そんな嫌がるなって」

「嫌がってなんか」


息継ぎの間も無く再び口づけられて、今度は口の中を隅々まで舌で探られた。

歯の一本一本、顎の内側の窪みを辿るような舌の動きはこそばゆく、体の奥底の埋火が掘り
起こされるような気がした。



「しん―」


進藤と、言いたくて言えない。言わせても貰えない。

いつもとは違う荒っぽい仕草は不快と快感と紙一重だ。


「おまえ、なんでこんなに美味いんだろう」


うっとりと言われてカッと腹の底が熱くなった。


「このまま足の先まで食っちまいたいくらい」


耳元に囁かれ、ぐっと腰を押しつけられて、ぼくの顔が赤く染まった。

固いものがごりっとぼくの腹に当たったからだ。

進藤は微妙に腰を動かして、それを張り詰めかけたぼくのモノと擦り合わせるようにした。


「あ――っ」


熱と痺れと猛烈な快感が体を貫いた。


「はっ―、……ああっ」


熱で全身が燃え上がる。

がくがくと膝が震えてくだけてしまいそうなのに、進藤はぼくに跪くことを許さない。


「ダーメ、まだ味わってる途中なんだから」


そうしてまた唇を合わせて更に口中を舌で探り回る。


「あ……やっ、……だめっ」


常に無く自分が乱れて行くのがはっきり解り、ぼくは焦った。


「進…」


重なった唇の合間から唾液が喉を伝って流れ落ち、胸元を濡らして行く。


「ん――」


目尻に滲んだ涙が膨れあがり、頬を滑って行く頃になってようやく進藤はぼくから顔を離した。

がくりと力が抜け、崩れ落ちそうになるのを進藤の腕が抱えて留める。


「あー美味かった。サンキュ。ほんとおまえって最高!」


けろりとして満足そうに言う進藤の顔をもうぼくは見られなかった。

まだ体中が疼いていて、ちょっとでも動こうものならば、そこから呻きたくなるような快感の波
が広がったからだ。



(苦しい)


こうなってはもう自分ではどうにも出来ない。

進藤はそんなぼくを黙ってしばし見つめた後、腹が立つ程優しい声でこう言った。


「おれはもう満足したけど、おまえがしたいって言うなら今のヤツもう一度やってもいいぜ?」


ぼくの状態を充分解っていての言葉だった。


「最高の誕生日プレゼントをくれたんだし、そのお礼に今度はおれがおまえに欲しいモノをやっ
てもいい」



その代わり、ちゃんとおれの顔を見て、ちゃんと声に出して欲しいものをねだってくれよなと、
こういう時の進藤は本当に悪魔的だとそう思う。



「どうする? ん?」


促されて恥ずかしさと屈辱に再び目尻に涙が滲み、でも体が堪えきれなかった。


「して―欲しい」

「何を?」

「…キス」


喘ぐようにぼくが言うと進藤はさも嬉しそうな表情になった。


「どんなキス? いつもしてるようなんでいいの?」


どうやらどうしてもはっきり言わせたいらしい。いや、ぼくに言わせるまでがもしかしたら彼が望
んだプレゼントなのかもしれなかった。



「濃い…のを」

「ん?」

「思い切り、濃いキスを」


してくれと喘ぐようにぼくが言った瞬間、進藤は満足そうに笑い声をあげた。

そして『おねだり』を叶えてくれるために、ぼくを勢いよく仰向かせたのだった。






駆け込みでギリギリの二度目の投稿すみません(汗)
来年も再来年もそのまた次の年も永遠に二人がラブラブでありますように!


主催者様、本当にすみません。よろしくお願いいたします(土下座)



サイト内には他にも色々ありますので、(ヒカアキ)よろしければそちらも見てみてやってください。
2015.10.20 しょうこ



素材はこちらからお借りしました。