塔矢アキラ誕生祭15参加作品
年に一度のお楽しみ
休憩時に配られた缶コーヒーのプルタブが妙に固くて開けられず、難儀していたら進藤がすっと手を差し伸べて来た。 「かせよ、開けてやるよ」 「いいよ、そういう女性枠な扱いは止めろ」 ムッとして睨んだら、クスっと小さく笑われた。 「いいじゃん別に、今日誕生日だろ」 プレゼント代わりに開けてやると言われ、少し考えて頷いた。 「…ああ、うん。そう言えばそうだね。じゃあお願いしようかな」 手渡した缶を進藤は一瞬で開けてぼくに返して寄越した。 「おまえ爪が短いから開け難いんだろ。幾らでも開けてやるからまた開かなかったら持って来いよな」 「そう何本も飲まないよ」 苦笑して、でも開けて貰ったコーヒーを有り難く飲む。 腹に落ちる温かさが心地良くて思わずそっと目を閉じた。 12月14日。 今日はぼくが大手を振って彼に甘えることが出来る、魔法のような1日です。 |