Present
窓の外、明けてくる空を見つめながら、ぼくは彼に何をあげようかとずっと考えていた。
昨日、12月14日にぼくは数え切れない程の喜びと溢れる程の幸せを彼からもらった。
だからその全てに返すことは出来なくても、ぼくも彼に同じように喜びと幸せを与えるも
のをあげたくなったのだ。
「物……はきっと必要無い」
大抵の欲しい物は彼は自分で買ってしまっている。
二、三、欲しいと言っていたものがあったのでそれのどれかにしてもいいが、でもそれだけ
では貰った分にとても足りないとそう思う。
「キス…でもダメか」
呟きながら笑みがこぼれてしまうのは、それではまたぼくの方が幸せになってしまうからだ
った。
「体……はもう預けてしまっているし…」
命もとうに捧げている。
後ぼくに残るものと言ったら打つことと、彼への想いぐらいだろうか?
「でもそれもとうに進藤のものだし」
そう考えたらもうぼくには何もあげられるようなものが無かったのだった。
「運命…はぼくにはどうにも出来ないし」
例えばもしあるとして来世への約束も自分では確約に出来ない。
ぼくがぼく自身で確かに彼にあげられるものと言ったら一体何があるだろうかと、しばらく考
えてやがてぼくは身を屈めた。
すぐ傍ら、ぴったりと触れる位置で安らかに眠る、彼の耳元にぼくは囁いたのだった。
「ぼくはキミに『誓う』よ」
生涯キミしか愛さないこと。
生涯キミのライバルで在ること。
生涯を共に過ごす相手であること。
ぼくの持っている全ての物をキミに捧げるつもりであること。
「ぼくの全てはキミの物だ」
そう誓うことがぼくからキミへのお返しだと、言ってその頬に口づけてぼくはやっと安心して彼の
隣に潜り込んだ。
まだ微かに汗の香が残る肌に顔を寄せて、目を閉じたら手探りの手がいきなりぼくの手を握っ
た。
「しん―」
「ありがとう」
おれ、すげー幸せと、そのまま折れる程強くぼくの指を握り取った。
「ありがとう、おれもおまえに誓うから」
生涯おまえしか愛さない。
生涯おまえのライバルでいる。
生涯を共に過ごすのはおまえだけだ、おれの全てはおまえのものだと、話されるつっかえるよう
な声は胸に染みた。
熱く。
痛い程に甘く―。
「―ずっと二人で生きていこうな」
囁く声に「うん」と答えようとしてあまりの幸せに息が詰まり、ぼくは黙って頷くと、彼が握るよりも
更に強く、彼の指を握りかえしたのだった。
※誕生日のSSは最初二つだけの予定でした。でも誕生日企画をやって、たくさんの人に参加していただいて、
掲示板の書き込みなどを見るうちにこの話を書きたくなったのでした。
みなさま本当にありがとうございました。ロムの方も参加くださった方も少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
そして私自身もとても楽しかったです。見てくださった皆さんにこの話を捧げます。2006,12,19 しょうこ