clover
駅からの帰り道、新しく出来た眼鏡屋の前を通り過ぎようとして目の端に白い影を見た。 (なんだ?) ふと足を止めて見てみると、店の横の駐車場に白くこんもりとシロツメクサの花が咲い ているのだった。 「…こんな所、花なんか咲いてたっけ?」 ついこの間まではただの緑の葉っぱだけだったと思う。それがいきなり咲いたかのよう に目についたのは、今が夜で花の白い色が際だって見えたからなのかもしれない。 「四つ葉のクローバーはシアワセになれるんだったっけ」 でもそんなものを探すような時間では無いし、例えこれが昼間だとしてもそれを探すよう な性格でも無い。 「結構綺麗な花だよな」 摘んで帰って見せてやろうかと一瞬思い、でも止めた。 「ただいまっ」 それから程なく家に帰り着き、リビングに居た塔矢に言う。 「さっきそこの眼鏡屋の所を通ったらさぁ」 皆まで言わないうちに塔矢が微笑んで言った。 「綺麗だったね」 「――うん」 緑色の四つ葉も白い綺麗な花もいらない。 そんなものが無くたって、シアワセはいつもここにある。 |