胸を焦がした永遠
蛾の交尾を見たことがある。 学校の門の金網に大きな真っ白い蛾が二匹、 先端を合わせてくっついていたのだ。 「蛾だ…」 最初は何か花だと思い、 でもよくよく見てそれが蛾であるとわかって驚いた。 「人がこんなに近づいても逃げないんだ…」 それどころかぴくりとも動こうとはしない。 「生殖はそれぐらい生き物にとって重要ってことじゃないかね」 通りがかった先生が言って珍しそうに見る。 「こんな大きな蛾、最近じゃあまり見ないなあ」 まあ生まれるのは毛虫だから我々にとっては有難いことではないがねと、 言ってそのまま立ち去って行った。 ぼくも始業時間に追われるようにその場を去ったのだけれど、 放課後気になってその場所に行ってみた。 蛾は、朝見た金網のほぼ同じ場所で誰かに叩き潰されたのだろう、 地面に落ちて潰れていた。 二匹まだしっかりと繋がったまま離れることなく死んでいたのだった。 あの蛾の姿を時々ふと思い出す。 「ん? どうした?」 睦み合ったその後、 それでも肌の温もりが離せなくて緩く抱きしめ合っている時などに。 「いや、ぼくもきっと離れないだろうなと思って」 踏みつぶされて殺されてもキミと繋がったままで居たい。 それは男同士のぼく達にとって生殖という本能では無く、 ただひたすらに愛という衝動によってのみ起こる行為なのだとそう思う。 |