罪
※すみませーんラブラブじゃありませーん。ヒカル最低でーす。そういうのが嫌な方は読まないことをオススメします。
来る前にちゃんと抜いてくれば良かったと、風呂を終え、布団に入ってから深く後悔した。
仕事で来た温泉地、昼間は指導碁だなんだと忙しくて考えもしなかったのだが、こうして
二人きりで静かな部屋に押し込められると、もぞもぞと満たされないものが這いだしてくる。
「今日は疲れたね」
何も知らず浴衣に着替えた塔矢は、綺麗な仕草で布団に潜り込むとおれを見てにこっと
笑った。
「ああ、緒方センセーってば遠慮無くこき使ってくれるからくたくただよ」
「でもそれは、キミのことを気に入っているからだよ、あの人は気に入らない相手には全く
声もかけないんだから」
光栄だと思って使われたらいいと、自分自身もさんざこき使われた塔矢はおかしそうに笑
いながら言った。
「そのうちきっと、今日の埋め合わせに美味しい物を食べさせてくれるよ」
「えー?ちょっとくらいゴーカなメシじゃ全然割に合わないと思うけどなあ」
他愛無い話をしてからおやすみと言い合って目を閉じる。
やがて隣からはすうすうと規則正しい寝息が聞こえてきたけれど、おれは全く眠れなかった。
(あー、もう最低っ)
それというのも下半身が熱く熱を持ち立ち上がってしまっているからだった。
「やっぱちゃんと抜いてから来ればよかった…」
いつもだったらこういう泊りの仕事の時は前日に必ず抜いて欲望の処理をしてからおれは来
る。
何故ならここ数年、こういう仕事の折りには塔矢と二人部屋を宛がわれることが多かったから
だ。
おれはもういつからとわからなくなっている程前から、はっきりとそういう意味で塔矢が好きだ
ったし、欲望も持っていた。
抱きたい、舐めたい、入れたいと、本人にはとても言えないような下品で生々しい欲求を常に
内に秘めていてそれを押さえるのに苦労していた。
塔矢自身はノーマルだし、そんな塔矢におれの欲求をぶつけることなんか出来る訳がない。
だからなんとか強姦魔にならずに済むように二人きりで泊るような時には必ず処理をしてか
ら来るようにしていたのだ。
それが今回に限ってそれが出来なかった。
前日までずっと忙しくてくたくたに疲れていたのと、それならばせめて朝に抜いてから行くかと
思っていたのが寝坊してしまってそんな暇すら無かったからだ。
まあそれでもおれもケダモノじゃないし、一泊くらい我慢出来ると思っていたのが間違いだっ
た。
宴会までは良かったけれど、その後一緒に風呂に行ってばっちりと裸とその後色っぽい浴衣
姿を見てしまってからはダメだった。
ほんのりと上気した肌と、胸元から漂ってくるような色香におれはすっかりとその気になってし
まったのだ。
したい! ヤリたい! ツッコミたい。
もう下品極まり無いが体中の血が全てそこに集まってしまっているようで、まともに思考するこ
とすら出来ない有様だった。
「うー…やべえ」
ちょっとでも見るとむらむらとしてしまうので背を向けるようにして寝ていたけれど、寝息や寝
返りを打つその気配でもおれのモノはしっかりと反応してしまって痛い程になってしまっていた。
(…寝てる間だったら何やってもわかんないかもしんないよなあ)
入れるのはともかく、ちょっとくらい触ったりキスしたりしても平気なのではないかとぼんやりと
自分が考え出しているのに気がついたおれは、ぎょっとして布団から起きあがった。
「マズ……このままだとおれホントにゴーカン魔だ」
塔矢の寝顔を見ただけでも生唾が沸いてきてしまうくらいのがっつきぶりに、さすがに自分で
も怖くなってトイレに向かった。
もうこれは抜かないと眠ることが出来ないどころか今すぐにでも塔矢を襲いかねない。
男ってのは本当にやっかいに出来ているよなと思いながら、ドアを閉めながら思った。
「ふう…」
浴衣の前をはだけ、固く張りつめたそれを握ると知らずため息が漏れた。
「……っ」
どれだけ飢えてんだと呆れてしまったが、おれのそれは既に先端から液が溢れ出していて
指にぬるりと感触があった。
「は……あ」
ゆっくりと膨らみを揉みしだきながら上下にこすると脳天に付き抜けるような快感が体を駆
け抜けた。
(気持ち…イイ)
前に抜いたのがいつだったか忘れたがそんなに前では無かったはずだ。それなのに今自
分は欲望が破裂せんばかりになっている。
一体どんなケダモノだよと思いながらも指を動かすのは止められなかった。
「あ………っ……くっ」
寝ているとは言え、同じ部屋に居る塔矢に気づかれたくなくて声を必死でかみ殺す。
「ん……んん」
ぬるぬると指の間を液が伝わり、それと共に硬さと熱さも増して行った。
(あー、塔矢ん中に突っ込みたい)
あいつん中、きっと熱くて気持ちイイんだろうなあと思っただけでびくりと体が跳ねる程強い
快感がわき起こった。
「あっ………」
くっ、うっと、おれはうめきながら頭の中で塔矢を裸に剥いて四つんばいにさせると挿れて
いる所を想像した。
(あいつきっと涙目で、やめてとか言っちゃって)
(でもおれはやめてなんかやらないで、もっと非道い格好させたりして)
それもすごく燃えるよなあと、最低なことばかりが次々と浮かぶ。
(顔にかけたりしたらあいつマジで泣いちゃうかもしれない)
ああ、でもおれのモノで白く汚れた顔を見てみたいと、思ったらもう我慢出来なくて声が少し
大きくなってしまった。
「く…………は……ああ」
熱がどんどん高まって、体全体が溶けそうな程熱かった。
「う………塔……矢」
泣かせたい、すがらせたい、イヤラシイ言葉を言わせてみたい。
「あ………は、………はっ……ぁ」
(ああ、あいつの飲みてぇなあ)
思い切りエロい顔で喘がせてみたいと思った所で熱は頂点に達した。
「あっ……ああっ」
頭の先から足のつま先まで熱が駆け抜けて、おれは呻きながら体を大きく波打たせた。
握った指の合間からは恥ずかしくなるほどたくさんの白いものが溢れ、ぼたぼたと床に
落ちる。
「は……ぁぁ」
衝動が過ぎると途端にどっと脱力が来た。
今回は抜いていなかったせいで快感が強く、終わった後の空しさもいつもよりずっと大き
かった。
「………すげ」
荒くなった息を整えながら改めて自分の下半身と手を見て苦笑する。
「こんなに溜まってたなんて」
これからは絶対に何があっても抜いてから来ないとと、床に落ちた自分の精液をトイレット
ペーパーで拭こうとした時、ことっと音がした。
「進藤―――」
まさかの声に顔を上げると、いつの間にかドアが細く開いていて、目を大きく見開いた塔矢
がそこに立っていた。
「なっ!」
「ごめん――目が覚めたらキミがいなくて―そうしたらうめき声のようなものが聞こえたから」
具合でも悪くなったのかと思ってと、言う塔矢の目はおれの浴衣の前を見ている。
はだけたまま、まだ整えることをしなかったそれからは白く汚れたおれのモノがはっきりと見
えているはずで、塔矢の顔がうろたえたように真っ赤になった。
「ごめん――こんな……見るつもりじゃ」
「見たのかよ」
一体いつから見ていたのだと、恥ずかしくて死にそうなはずなのに、妙におれは冷静だった。
頭の一部がすっと冷えてクリアになっていくようなそんな変な感覚だった。
そうか、見られてしまったのか。
だったら。
(だったら仕方ないよな)
「ごめん――忘れるから、だからキミも」
気にしないでと目を伏せるのをおれは顎を掴んで上向かせた。
「進藤?」
怯えたような瞳に鎮まったはずの欲望が再び燃え上がった。
「見たんだったら話早いよな」
「―――え?」
言っておれは塔矢に口づけると、そのまま乱暴に押し出して部屋の床に倒した。
「あ――嫌――」
何をされるのかおぼろげに悟って、抵抗する塔矢を無理矢理押さえつけて何度も何度も
口づける。
「嫌でもなんでももう知らない」
ずっと我慢してきたのに、のこのこ来たおまえが悪いんだからと、おれは涙ぐむ塔矢を見
下ろすと、ゆっくりと浴衣をはだけて行った。
「嫌だ――進藤」
お願いだからと懇願するのを無視して足を開く。
「嫌っ、嫌――ああっ」
下着を引き下ろして、今まで見たくてたまらなかった場所を見る。外気に晒されて震える
その場所を指で辿るとひっと塔矢が泣き声を上げた。
「嫌、進藤――」
「嫌?なにが?」
すげえ欲しがってるみたいだけどと、言うと塔矢の顔がさっと赤く染まった。
「そんなことは――」
「まあ、おれはどっちでもいいんだけど」
モノを押しつけて一気に根元まで差込むと塔矢は身を逸らせて悲鳴を上げた。
「あっ、ああっ」
窄まりはキツかったけれど、中はとろける程に温かだった。
「……気持ちイイ」
「嫌―」
嫌だ、嫌だ、嫌だと、泣き叫ぶ声が鳥肌がたつほどに甘美だった。
きっと、こいつはおれのことを憎むだろうけど、今はそんなこともうどうでもいい。
どうでも良く―――なってしまった。
「進藤、どうしてこんな―」
「大丈夫……すぐに良くなるから」
甘く、想像よりもずっと甘く、柔らかく心地よい体。
ずっと抱きたくて抱きたくてたまらなかったその体に、何度も何度も突き立てると、痺れる程の
快感が起こった。
「進藤―進藤……やめて」
散々貪った後で、引き抜くと泣いているその顔にかけた。
「どうして―進藤」
白く汚れたその顔はぞっとする程綺麗だった。
「―おまえがエロいから」
おまえがあんまりエロいから悪いのだと言い訳のように呟きながら、おれはその夜欲望のまま、
泣きじゃくる塔矢を気を失うまで犯し続けたのだった。
※進藤ヒカルさん最低話。←おい。もちろんアキラもヒカルを好きだったわけで、気持ちを確認してからすれば
なんの問題もなかったのに欲望のまま突っ走ってしまったので後々かなり長いこと二人の間には誤解とわだ
かまりが残り、しばらく両思いになれません(当たり前)。という、これはそういう二人の話なんでした。
2006.3.24 しょうこ