戀唄
「何?」
俯いているのに気がついて尋ねると、塔矢は顔を上げずにつぶやいた。
「…擦れて痛い」
「え?」
聞き返すのに苛立ったように眉を顰め、それから溜息のように吐き出した。
「キミが強く擦るから…」
だから染みて痛いんだと言われてゆっくりと顔が赤く染まる。
「…ごめん、そんなに乱暴にした?」
「自覚が無いなら最低だな」
「や…だっていつも夢中で何か考えるとか」
そんな余裕全然無いからと言ったら、きゅっと口元が引き締まった。
「別にいい…自業自得でもあるんだから」
「何が?」
「聞き返すな」
欲望に流されて激しく動いたのはぼくもだから、だからこれは自業自得でもあるんだと言う言葉に
たまらなく罪悪感を覚えた。
「そんなん…別におまえは悪く無いだろ」
「…」
「おれが乱暴にし過ぎたんだろ。だから擦れて傷ついて」
その傷がおまえを苦しめてるんだなと言ったら、塔矢はやっと顔を上げた。
「…痛くていいんだ」
「なんで? そんなわけ無いだろう」
「キミを好きで居ることは痛いくらいで丁度いいんだ」
痛みも何も感じ無い、ただ幸せなだけのぬるい恋なんてぼくはキミとしたく無いからと言う横顔は
美しい。
「だったら…じゃあいつかおまえ、おれを刺してもいいよ」
「そうだね、そうさせてもらう」
もしいつかキミがぼくを裏切ることがあったらねと、艶やかに微笑んでキスをした。
ああ、こいつとの恋は命がけなんだなと絡められる舌にそう思い、けれどそれを嬉しく思う自分
の病に苦笑する。
一生にただ一度の恋は、痛く、激しく、切ない方がきっといい。
※いつも似たような話ですみません。でも好きなの(^^;ヒカルもそうだけれど、特に若先生は激しい人なので
生きるか死ぬかぐらいの恋でないと出来ないと思います。2012.1.3 しょうこ