何故か体の節々が痛くて、肘などを見ていたら目ざとく緒方さんに尋ねられた。

「どうした?」
「あ……いえ、ちょっと関節が痛むので」
「風邪か?」
「違うと思います。熱も無いし風邪の症状も出ていませんから」


真っ先に風邪を疑われたのは、今二人して居る研究会で咳をしている人が多かったからだろう。

「じゃあ昨日何か運動でもしたのか」
「昨日は手合いでしたし、これといって特別には」


ふうんと言って改めて緒方さんはぼくをじろじろと無遠慮に見つめた。

「なんですか」
「いや、おまえじゃなければ何か色っぽいことかと思う所だが」
「は?」
「痛む所は手や足の関節、それに腰だろう」
「はい」
「それとさっき歩き辛そうにしていたのは足の付け根や太股に筋肉痛があるからじゃないのか」
「はあ…まあそうですね」
「そういう痛み方をするのはな。大体ヤッた後だ」
「はあ?」


思わず変な声を出してしまい、同じ部屋にいる何人かの人に不思議そうに振り向かれてしまった。

「こんな所で何言ってるんですか。緒方さんじゃあるまいし、そんなわけないに決まっているでしょう」
「まあそうだな。女が出来たという噂も聞かんし、大体その痛み方だとおまえが下になってしまうしな」


一瞬ぽかんとして、次に意味が分かって赤面する。

「ろくなこと言いませんね。本当に」
「そうか? まず肘の関節。それは強い力で押さえつけられた時に抵抗しようとするとそうなる」
「………」
「手首が痛いのは、挿れられたまま相手の首っ玉にしがみついるとそうなるな」
「……」
「足の付け根が痛いのは抱え上げられて無理な姿勢を取らされた時にそうなるし、肩が痛むのは硬
い床に押しつけられた時にそうなることが多い」
「くだらない」
「そうそう、それから腰が痛むのは這い蹲った格好で――」
「もういいです。緒方さんの妄想にお付き合いする理由はありませんから」


そしてムッとした顔でその場を去ったら可笑しそうに笑われた。


(まったく、どうしてあの人はいつもああなんだろう)

ぼくをからかって、恥ずかしがったり狼狽える姿を見て楽しむという悪癖が兄弟子にはあるのだ。

結局そのまま避け通し、帰り道でも他の人と話しながら帰ったぼくは、帰宅して早々進藤から電話を
もらった。


『なあ、今日緒方せんせーとなんかあった?』
「…同じ研究会に参加しただけだけれど、何故?」
『んー、いや、なんでだかさっきメールが来てさ「ほどほどにしてやれ」って書いてあったんだけど』


これってどういうことだろうなと実に不思議そうに言ってくる。

『やっぱこれって夕べの――』
「おやすみ!」


まだ6時だったけれど、それ以上話したくなくて大声で言って電話を切った。

「…まったく」

(意識して進藤のしの字も言わなかったのに、嫌がらせのメールを進藤に送ってくるなんて)

これだから色事の百戦錬磨は油断ならないと、改めてそう思うのだ。



※骨も軋むような感じ。かなり激しくしたんじゃないかな。ということでその後遺症を緒方さんに看破されてむーっとしているアキラでした。
2013.4.6 しょうこ