大人の誕生日
「あっ…やっ」
もうイクという寸前、握り取ったそれを重ねた掌で止められて、アキラは切ない面を
進藤に向けた。
指の合間、ぬるりと流れ出てくるそれは放たれたくてたまらない高まりの証で、実際
もう苦しくて苦しくてたまらなかった。
「しんど…う」
座した形で抱き合って、身の内にあるヒカルのそれも固く熱く膨らみ、もう爆発寸前に
なっている。
どくん、どくんと脈打つのと同時にアキラの内部をこすり、甘い疼きを起こさせていた。
常ならばアキラが達した後に続けて達する、それを今日に限って何故かヒカルは寸
前で止めた。
焦らしているのかと睨みつけると、間近にある愛しい男の瞳は悪びれずに笑い返して
来た。
「苦しい?」
「苦し……に…決まってる……だろ…う」
同じくらいの高まりのはずなのにヒカルの方にはまだ余裕がある。それがアキラは悔
しかった。
「も…離して…」
イカせてと、あまりの苦しさに羞恥を押し殺してアキラが言うと、ヒカルはその染まった
目の下をぺろりと舐めて囁いた。
「じゃあ、おれのこと好きって言って」
「え?」
おれのことを好きと言ってよと、言ってアキラが強引に摺り上げようとした指をしっかり
と押さえ込んだ。
自然そこに力が加わり、指の下のそれはびくりと動いた。
どろっと先端から流れ出したそれは包み込むヒカルの指も汚し、根元へとゆっくり伝っ
て流れ落ちた。
もうイッたのと同じくらいの量は出ているのに違いない。
なのにちゃんとイカせてもらえない苦しさは尋常では無いはずで、アキラは泣き声に近
い声でうめいた。
「進藤…なん…で…」
「だっておまえ、言ってくんないじゃん」
好きとか愛してるとか、いつもおればっかり言ってんだもんとヒカルは言って今度はアキ
ラの耳朶を唇で挟んだ。
「そんな…の」
開けっぴろげなヒカルとは違い、アキラは自分の気持ちを口にするのは苦手だった。だか
ら実際はっきりと言葉に出して言ったことはほとんど無かったかもしれない。
「ねえ…おれのこと好き?」
言ってきりっと耳朶を噛む。
針で突いたような痛みはそのままアキラの体に響き、耐えているうねりを大きくさせた。
「いいじゃん。たまには言って」
おまえの口で、言葉で聞きたいのだとねだるような口調にアキラはヒカルを睨もうとして出
来なかった。
疼きの方が大きすぎる。
ここまで焦らされて体はもうほんの少し触られただけでも大きく肌を波打たせるほど敏感に
なっているのに肝心の場所への刺激が足りなくて到達することが出来ないのだ。
「ね」
耳朶を弄ぶのに飽いた舌が今度は首筋を舐め上げる。
まるで嬲られているようだとアキラは目の端に涙を滲ませながら思った。
「言って、塔矢。おれのこと好き?」
言葉と共にほんの僅か与えられる刺激にアキラは本当に泣いてしまった。
「あっ……」
もうダメだ。もう耐えられない。
もう今すぐにでも開放されなければ身のうちのうねりで発狂してしまう。
それなのにヒカルはそんなアキラにまだ聞いてくるのだった。
「ねえ、おれのこと好き?」
どろり、また先端から耐えられずに白いものが溢れだす。
「塔矢」
「好…き」
キミが好きだよとかすれた声で言うのに、ヒカルは満足そうな息を吐いた。
「おれもおまえのこと好き。愛してる」
おまえは? と続けて尋ねられて、既に半分朦朧としているアキラは深く考えずにほとん
ど反射的に言葉を返した。
「ぼくも…ぼくもキミを愛してる」
譫言のようなその言葉を聞いた瞬間にヒカルはぐいと腰を突き上げた。
ふいに与えられた強い刺激はあまりにも大きく、快感というよりは苦痛に近いものだっ
た。
「あっ……あっ」
悲鳴のような声の後アキラは大きく仰け反ると、それから今度はゴムを引くように屈み込
み、ようやく緩められたヒカルの指の中、何度も何度も放ったのだった。
「…がと」
声が出なくなるほど叫び続けたアキラは、そのままヒカルの肩にもたれるようにして一瞬、
気絶していたらしい。
囁かれる声に目を開くとヒカルの鼻先が愛しそうに自分の髪を分けている所だった。
「進…」
力が入らずに上げられなかった頭を犬のように鼻が探っていく。
「ありがとう。好きって言ってくれて」
「あれは―」
キミが無理に言わせたのだと怒鳴ろうとしてふとアキラの目線が下に落ちた。
まだ繋がった体と体の合間、重なって握られた手が見える。
どろりと指の隙間から放った液がこぼれるのを見た時、カッと先程まで体にあった熱が蘇る
ような気持ちがした。
「嘘じゃないだろ?」
愛しているって言った、あれは嘘じゃないだろと繰り返す言葉に逆らいたくて逆らえなか
った。
「うん――キミが好きだよ」
心からキミを愛しているよとアキラがつぶやいて頷くと、身の内のヒカル膨らんだような気が
した。
(まだ足りないのか)
呆れるような気持ちになって、でも愛しさの方が遙かに勝った。
「まったく…キミはもう」
体はもう素直にヒカルに反応し始めている。
自分も大概にケダモノだと思いながら、アキラはヒカルに応えるため、ゆっくりと伏せた面を
上げたのだった。
誕生日数年後。やっていることはほとんど変りませんが二人ともえっち度が上がっています。2005.1214 しょうこ