![]() |
||||
大学のサークルは、高校と比べ格別多い。 人数も多い所為だろうが、星の数ほどあると思えてしまう。 しかも、その種類も多種多様で、中にはいったい何のサークルかと、首を傾げたくなるものすらある。 二人の実力を知る剣道部からは再三誘いがあるが、学外の道場に籍を置いているから、と断り続けている。 学生と言う枠内での剣術を言うものに、興味がなくなってきているが故のことだが、あからさまにそう言う訳にもいかずに口を濁している二人だった。 大学に入ればサークルの一つぐらいには入っておくべきだとの総司の勧めで、そういうものかと納得しつつ、歳三はどれに入ろうかと悩んだ末に、総司と同じ演劇サークルに入ろうとしたが、総司にバイトの時と同様またもや止められた。 曰く、歳三を後輩としてだけ扱えないから、と。 つまり、歳三一人だけ特別扱いをしてしまいかねないから、と言われれば歳三も悪い気はしない。 その上総司が続けて言うには、歳三の容姿ならサークルに身を置いたら、裏方ではなく舞台に立たされる。それが嫌だ、人前に出したくない、歳三を独り占めしたいから、とまで言われたら尚の事。 最初反対されて剥れかけていた気も、ぱっと晴れようと言うものだ。 歳三が総司と同じサークルを選んだのは、たんに総司と少しでも一緒にいられるから、と言うだけの思いだったから、あっさりと歳三は諦めた。 諦めたが少しでも近くにいようと、隣に部室を置く放送研究会に入った。 総司と同じサークルに入っても、文系の歳三は裏方で脚本を書きたいなどと漠然と思っていたから、そう大差はないかと思ってのことでもある。 総司が所属する演劇サークルは結構な実力があるらしく、1回生の時から準主役を務める総司にもファンがいるらしい。 一度舞台を見る機会があってそれを見たが、素人の芝居と思えないほど迫力を歳三は感じたものだ。 そんな二人の関係だが、総司のサークルの人間にはあっさりとばれた。 何でと驚き、そこまであからさまだったかと己を振り返った歳三だったが、歳三ではなく総司の態度で分かったらしい。 愛想もあり、人当たりもよい総司だったが、その実は人を内に入れぬ性質だった。 その総司の歳三に対する態度は、恋人に対するものにしか見えないと言われた。 しかし、歳三の周りからはそんな声は挙がらないから、きっと総司の周りの人間はそういう空気に聡い者ばかりなのだと、歳三は思うことにしたのだった。 そうでなければ、やっていられない。 ただし、演劇に身を置く人間は大らかなのか、そういうのに慣れているのか、蔑視することなくあるがままに二人のことを受け入れてくれたのは有り難かった。 寛容になったとはいえ、まだまだ偏見の多い世界だからだ。 そんなこんなで、今日もそれぞれのサークル活動後に待ち合わせをする二人の姿があった。 |
||||
>>Menu >>小説 >>胡蝶之夢 >>Date |