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今日はバレンタイン当日と言う日。 ほんとは、もっと前に来たかったのだが、時間が取れずにこんな日になってしまった。 当日ならば少しはマシかとも思っていたが、どうやらその目論見は甘かったようだ。 デパートは何処もかしこも人で溢れ、その中でも特に人人人でごった返すチョコ売り場。 本命に義理に、自分用にと買い漁る女性たち。 この有様を見れば、百年の恋もたちまち冷めそうだ。 そんな熱気溢れる中、頭一つ高い分辺りを気楽に見回せるのがせめてもの特権で、総司は一人涼しい顔をしていた。 もっとも、今日と言う日に男なら近寄らぬであろう場所にいて、人目を引くことこの上ない。 その背の高さと、どちらかと言えば男っぽいと言うより可愛いと言われる今風の顔の造りで、なおさら衆目を集めてしまう。 ただし、本人はそんなことに慣れているのか、人目などに一切頓着はなかったが。 どこかに彼女でもいるのではと、彼氏にチョコを買いに来た女性たちが気になって見回してみるが、それらしい影は何処にもない。 それもその筈、総司は自分の恋人にあげるチョコを買いに来ていたのだから。 男がチョコをあげるのかと首を傾げられそうだが、総司の恋人である歳三は男だから問題はない、と総司は思っていた。 それどころか、るんるんっとすごく楽しげで、鼻歌すら歌いだしかねないような上機嫌さだ。 普段はつんと澄まし顔の歳三だが、こういう恋人同士が甘くなれるイベントに弱いのは、リサーチ済みだ。 初めてあげるのだからと、総司は幾つかピックアップしていた店を回って、女性たちに混じって入念にチェックしていた。 そんな総司が最終的に選んだのは、有名なパティシエが作ったと言うチョコレート。 可愛い花の形を象ったもので、ピンクや白のチョコも入った品物だ。 もちろん試食もしてみて、味は確認済み。 可愛らしい外見とは裏腹に、男が好みそうなビターな味で、甘いものがあんまり得意でない歳三も、きっと食べれるだろうと思ってそれを選んだ。 今日は歳三の都合が悪くて生憎と会えないのが残念だが、明日は昼から歳三が総司の部屋にやってきて、一日一緒にいられるのだ。 チョコを渡した時の歳三のリアクションを、想像するだけで楽しかった。 会った途端に渡してキスをすれば、歳三はどんな表情を見せてくれるのか。 一日遅れのバレンタインだけど、それも楽しみが長く続くと思えば、如何ということもない。 明日は、自分を追いかけて大学受験に頑張っている歳三にとって、久し振りの息抜きの日だった。 試験のことなど忘れさせて、二人っきりで甘く過ごしたい。 それこそ、歳三に贈るチョコに負けないぐらい。 そうして、1ヶ月先のホワイトデーには合格発表も済んでいるから、春から二人での同居生活を始める計画を練ろう。 その時に歳三からどんなお返しがあるか、わくわくと期待しながら。 |
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えっと、一部「えっ?」という表現がありますが、そういう設定で間違いじゃないです。 実を言うと、そういう設定でのパラレルを元々考えていたんです。 パラレルだし、ずっと妄想だけで書けずにいたんですが、この機会に思い切って書きました。 現代的な幕末にないイベントの時など、また書く機会があれば、パラレルに挑戦したいと思います。 |
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